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88年ソウルで金、92年バルセロナで金、96年アトランタで銀、00年シドニーでメダルを逃した、韓国女子ハンドボール・チームの04年アテネ大会への挑戦を描く、韓国映画に珍しい集団スポーツ感動作、「私たちの生涯最高の瞬間」。

92年・96年五輪で活躍した実力NO.1ママ選手が所属する大手建設会社のハンドボール部が解散になり、夫の借金に追われるママ選手はスーパーの売り子になる。一方、五輪代表に選ばれたキーパーを始めとした選抜選手がテルン選手村に集まってくるが、五輪監督のなり手がないため、広島の実業団で監督兼選手として活躍するママ選手の同期を監督代行として呼び戻し、五輪に向けての練習が始まる。しかし、若手中心のチームにまとまりがないため、監督代行は、五輪経験者のママ選手や、これまで五輪選考に落ち続けたパーマ頭などベテランをチームに招き入れるが、逆に、ベテランと若手との間に亀裂が生まれる結果になる。そんな時、本監督として、監督代行と因縁のある男性監督が迎えられることに…

夫の借金に苦しむ子連れママ選手に、チョン・ドヨンと並んで韓国映画界を代表する名女優ムン・ソリ、離婚したやはり子連れ監督代行に、大ファンのキム・ジョンウン、パーマ頭のソルロンタン屋おかみさんに、TV・映画界ベテランのキム・ジヨン、ちょっと軽薄なキーパーに、『パリの恋人』ではキム・ジョンウンと共演した個性派チョ・ウンジ、スポーツ科学かぶれの新監督に、今や超売れっ子オム・テウン、生意気な若手に、映画「黄真伊」でメヒャン(梅香)を演じたミンジ、特別出演では、借金から逃げ回るママ選手の夫に、パク・ウォンサン、パーマ頭の夫に、笑えるソン・ジル、キーパーの見合い相手には、何とハ・ジョンウ。

ボクシングのキム・ドゥック、プロレスの力道山、空手の大山倍達、野球のカム・サヨンなどスポーツ選手個人にスポットを当てた映画はあるものの、こういうチーム・スポーツを扱う映画は、韓国映画にはかなり珍しい感じがしますが、素晴らしい出来ばえに仕上がっています。経済危機、メダル無しに終わったシドニー大会…など重苦しいハンドボール界を題材に、ベテランのアジュマ選手が再びメダルを目指すという設定が素晴らしい上、何よりも、ちょっとアジュマと呼ぶには申し訳ない、ムン・ソリ、キム・ジョンウン、キム・ジヨン、チョ・ウンジの四人が見事な演技を見せてくれます。硬軟自在の演技に加え、ハンドボール・シーンも全て体当たりでこなすという、その根性には、いつもながら頭が下がる思いですが、特に、どんな役にあたってもカメレオンのようにその役に溶け込むムン・ソリと、逆に、どんな役にあたっても自分のキャラに役を引き込んでしまうキム・ジョンウンの二人の演技対決は、ベラボーに魅力的だと云えるでしょう。

勿論、スポーツ・ドラマにありがちな、かなりデフォルメされた非現実的なエピソードも少なくはないものの、韓国では誰でも知っていると云うことを前提に作られているので敢えて【ネタバレ】しますが、銀に終わった大会を、すなわちクライマックスは負け試合になると云うシチュエーションを最大限に活かした、脚本と演技は実に見事だと云えるでしょう。韓国では珍しい、スポーツ映画の傑作だと思います。

最後に、敢えて不満を云うと、ほんの1カットだけですが、試合の中で、韓国に不利な「誤審」を表現しているところがあります。その後、アナウンサーに「誤審も試合の内」とか云わせる位なら、最初から描かなかった方が良かったでしょう。気持ちは分からなくもないですが、国外の観客から見ると、映画の価値に水をさす結果になっています。