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2001年の新大久保転落事故をモチーフにした、「あなたを忘れない」。

2001年1月26日午後7時15分JR山手線新大久保駅。誤ってホームから転落した見知らぬ乗客を助けようとして、韓国からの留学生イ・スヒョン(李秀賢)さんと日本人カメラマン関根史郎さんが、亡くなりました。この映画は、イ・スヒョンさんにスポットを当てていて、フィクションを織りまぜた作りになっているそうです。

主人公イ・スヒョンに、「親知らず」でキム・ジョンウンの年下の恋人としてデビューしたイ・テソン、日本人の恋人に、沖縄インディーズ出身ヘヴィメタ・バンド”HIGH and MIGHTY COLOR”ボーカルのマーキー、その父親に、癖のある演技を演らせたら天下一品竹中直人、母親に、原日出子、母親の友人に、久しぶりの大谷直子、 美人の友人に、浜口順子、イ・スヒョンの父親に、『冬ソナ』でお馴染みジョン・ドンファン、母親に、「青春漫画」イ・ギョンジン、おっちょこちょいの友人に、「春夏秋冬そして春」「トンマッコルへようこそ」と全然印象の違うソ・ジェギョン、妹役に、キュートなイ・ソルア。

微妙な映画です。まず全体に漂う、土曜ワイド劇場風観光地巡り、みたいな雰囲気ですが、釜山の「農者天下之大本」の幟が練り歩くチャガルチ市場、ソンジョン(松亭)海水浴場の望楼から見る初日の出、あたりは好印象ですが、日本での、名古屋のパチンコ、日本最大級のコリアンタウンである生野コリアタウン御幸通り、とか在日コリアンゆかりの地を織りまぜる描き方には、かなり違和感があったりしますし、さらには、力道山や張本、妹役の日韓ワールドカップ共催への不安の発言や交通事故、韓国の家族愛に日本人家族もようやく目覚めさせて貰った、みたいな描き方も、かなり引っかかります。勿論、イ・スヒョンさんを絶対善として描き、その人となりを後世に残すという思いに何の異論もありませんが、その思いと、もっと韓国のことを理解しなさい、みたいな説教臭ただよう立ち位置とは、おのずと別物であるべきと感じます。実績のあるイ・テソンは安心して見ていられる上、多分演技は素人のマーキーも不思議な存在感があって、あの芸達者竹中直人との絡みも意外にも良い味を出してたりするので、もっと好きな映画になった筈と思われ、正直、残念です。

そもそも映画の目的が違うので云っても全然意味がありませんが、映画にすると云う意味では、亡くなられた関根さんや線路に落ちた乗客の方、あるいは、「京義線」でも描かれた心ならずも事故にあったJR運転士の方もいらっしゃるわけで、そういう目線を持ってこの出来事を描くことも出来たのでは、との思いがよぎったりします。観光地はともかく、兵役やチェサ(祭祀)やスピッツ「チェリー」に代表される日本音楽文化とかとか日韓がさらに理解を深めるために必要なキーワードは色々列挙されていて、個人的には、巧く料理できた、という感じは持てないながら、その意味で、もっと広く見られてもいいのでは、という感じはします。

イ・スヒョンさん、関根史郎さん、線路に落ちた乗客の方のご冥福をお祈りします。