「ひょくぅ 今日はどうするの?」
「今日の仕事は終わりだから帰るんだよ」
「まーふぃあ~ のくせにサラリーめーんっ!みたいだね。」
サラリーめーん?、、、
まま。ツッコんだら面倒だからスルーしよう。
つか今時のマフィアはそんなもんだろ?こんな小ちゃい組だと抗争なんてのにも縁がないし、オレたちは兄貴が経営する この会社 『ラッキー金融』の平和な社員みたいなもんだ。マフィアらしさなんて欠片もない。
「とにかく今日はもうオレらの仕事は終わったし、この後はオレ、予定があるから…」
「ねねね。オレおなかへったよう~ ごはん食べにいこ?」
オレの話 聞いてた?
「オレ予定あんだっての!だからお前は…」
「うんうん。オレとごはん食べて帰ろうね」
耳の穴かっぽじってオレの話を聞いてもらっていいすか?
「ドンヘさん!自分、今日予定があって無理っす!」
これじゃあ どっちが舎弟かわかんねえっつうの
「ごはんはムリ?なら お茶だけでもしてかえろ?」
お茶って…女子かっ!
「だから!飯もお茶もムリ!予定があるんだって!」
「だったら ウチまで送ってってよ!夜道の一人歩きは こわいのよ~」
だから 女子かっ!
とは言え、こいつを一人で外を歩かせるわけには行かないのも事実だった。
「あのさ?オレ予定があるからね?お前は今日は誰かとご飯食べて、家まで送ってもらいなさい」
「ひょく以外のひととー?やーだーー」
「ドンへ?ヒョクチェ予定あるんだってさ。
その声に振り向けば
「シウォナ」
「あなたは…どこのおじさん…?」
「、、、、おじさんではないよ。ドンへ、寧ろ君より年下なくらいだ。そして俺とヒョクチェは兄弟分で君とも毎日会ってるよね?シウォンおじちゃんだよぉ〜ん♪」
結局自分でおじさん言うとるやんけ!
兄弟分とは言ってもこいつとの関係は複雑で、シウォンはオレより二ヶ月ほど先に組に入ったから一応シウォンの方が先輩って事になる。
けど、年はオレの方が一つ上ってゆーややこしい間柄。
まあ、普通は組入り順だからシウォンが先輩にはなる。けど、真面目なシウォンはオレをちゃんと年上として接してくるから
最初の頃は二人とも敬語とタメ語を織り交ぜて会話してたけど、面倒になって 結局は同期って感じで落ち着いた。
「ヒョクチェはね?コレとデートらしいよ?」
小指を立てる
「小指?って?」
「オンナだよ」
「んぴゃっ!ひょくってばオオオーンナがいるの!?」
「知らなかった?て、コトだから ドンへ?お腹空いてるんなら俺と食事してかえろっか?」
シウォンがドンへの肩に手を回して抱き寄せ…
「あ痛だだだっ」
回した手を思いっきり抓られて悶絶するシウォン。
「ふぇぇ~ん…ヒドイよぉ〜 ひょくちぇっ!オレと結婚してくれるってやくそくしたのにっ!」
えぇぇ~っ!?そんな約束しました?
「そうなのかっ!?ヒョクチェ 貴様っ!可愛いドンへを弄んだのか⁉︎ 」
「おい!本気にすんなっての!弄んでねえしっ!んな約束もしてねえわ」
「もういいっ!しおなおじさんっ!ごはん食べてかえろっ!」
「よしっ!シウォンおじさんが何でも好きな物をご馳走してあげるよ?何が食べたい?因みにその後は俺がドンへを食べていいかい?」
「しおな!キモいぞ!」
「あ痛だだだっ」
んなコト言うから またドンへに今度は頬っぺたをぎゅうぎゅう抓られてるし…
「あははっ キモいかぁ~…こりゃあ一本取られたなぁ~」
「一本取ってやったぁ~ えへへっ」
えへへ あははっなどときゃっきゃしている アホふたり
「シウォナ、お前自分の舎弟がいるだろ?そいつらを飲みに連れてってやらなくていいのか?」
「俺の舎弟は他の奴らと飲みに行ったし、大体 誰の舎弟だとか関係ないだろ?お前が飯に連れて行けないってなら俺が飯奢ってやってもイイだろ?こんなにお腹を空かせた幼子を放って置けないしね」
んーーー…
シウォン以外に事務所には今日ドンへを託せる人間が残っていなかったから
「いや、もういいよ。ドンへ、オレが送ってってやるから」
結局ドンへを放っては置けないオレは
今日会う予定だった相手に電話をした。
「悪い ちょっと遅くなるわ」
ー はあ?遅くって何時よ?
「んー…夜中?」
ー 夜中?あんたバカなの?今日は私の誕生日なのよ?今夜の12時過ぎたら誕生日終わっちまうでしょーが⁉︎ ハゲっ!
「ハゲてねえしっ!」
ー じきにハゲるわっ!てか 反論そこ?
「でも 舎弟が腹減らしてるし、寂しがってっし」
ー 私だって寂しがってるわっ!てか舎弟と私とどっちが大事なのよっ!
「、、、、、、ムズい…」
ー 考えんの長いわっ!しかも考えた挙句ムズいって何んなの?もういいっ!
「ちょっ…」
ー うっさい!ボケッ!ハゲッ!カスッ!死ねっ!!二度と電話してくんなっ!
ツー、ツー、ツー。
おしまい。
「ねねね。ひょくちぇっ!あそこ行ったことある?」
飯を食って 送ってってやる
その帰り道ドンへが指差す
「ああ。ドンキードンキーって遊園地だっけ?昔行ったな、親父に連れ、、、」
あ、やべえっと思った時
「、、、」
ドンヘは俯いたまま歩みを止めた。
「っ…ドンへ? い、行きたいの?」
オレの言葉にドンヘが顔をあげ、焦点を失った目でオレを見る
ドンヘ、、、。
「、、、こ、今度 一緒に行こうか?」
「っ!ホント?つれてってくれるの?」
「、、、ああ」
「うわぁぁい!オレのことゆーえんちにつれてってくれるんだね⁉︎」
目をきらきら輝かせて オレの手を取ってぴょんぴょんとガキみたいに飛び跳ねる。
違うな
《ガキみたい》
じゃない
今のドンヘは、、、
「やくそくだよ?こんどのおやすみにゆーえんちっ つれてってね?!おとーさんっ」
父親の話をするとドンへは本当の子どもに戻ってしまう、、、。
それを知ったのは
一週間前のあの日だった。
恋人よりも舎弟が大事。
そう思うのは
こいつが抱えている
”何か”
のせいだ、、、。
つづく