どんへは目を閉じ
《お母っちゃー?どんへ おウチにかえってきたよー!お城にだーれもいなくて
さみしーじょー おへんじしてちょーっ》
王妃に届くよう頭の中で 懸命に呼びかけるのでした。
それでも王妃からのお返事はありません。
《お母っちゃー?どこぉ〜?お母っちゃまぁ〜?お母っちゃまー?どこぉ〜?》
王妃から返事がないことに不安になった
どんへは ついつい子供の頃の呼び方で母親を呼び
《ふぇっ…》
本気で悲しくなり ちょっぴり泣きそうになった時
《どんへ?》
王妃の声がどんへの頭の中に届きました。
「お母っちゃ?」
たま〜に 賢い王子はみんなにジェジュン王妃とコンタクトが取れた事が分かるように声に出してお返事をしました。
《魔法界に帰ってきたのか?》
「うん!」
《一人で?…お父…婿殿とキュヒョナは?》
「ひょくもきゅひょなも ごようがあるってーから人間界においてきたー!ほいでオレひとりで お城にもとったら だーれもいないの」
「王妃様と連絡取れたのみたいだな」
「そうみたいですね」
たまに鈍いヒョクチェとキュヒョンは やっとどんへの意図がわかったようです。
「普通に喋っても大丈夫だよ。ジェジュンにはどんへの気だけしか伝わってないから」
《ほんとにい~?この祖父さんテキトーすぎてイマイチ信用ができないんだよな~》
と、ヒョクチェは疑っていますが
大王様の魔法の力だけは信用して大丈夫だと思いますよ?
テキトーな人格と魔法の腕は比例しないんですから
《誰もいない?城にだれもいないの?じいじやばあばも?》
「うん!お父っちゃもじぃじもばぁばもシモベたちもいないの みんなどこにいっちゃったのかなあ?」
どんへはそう言いながら 大王様をチラとみました。
「ふむ」
大王様は頷き 正面に手をかざし
「ピロピロヒャラリーンッ スクリーン出てこいやっ」
呪文を唱えると
目の前にスクリーンが現れました。
そのスクリーンにカフェらしき場所で見知らぬ 嵩張る衣装の男性と向かい合う王妃の姿が映し出されたのです
「ジェジュン…」
「あの嵩張る衣装のオッサン誰?」
「いや…知らないオッサンです。ん?でもこのコスチュームの色って…大王様?グリーンと白の界色って 確か…魔界の界色ですよね?」
「ああ、こいつは魔界の王 チョルウォンだよ」
《魔界の王様って…あの えっと~ 大王様が酔っ払った勢いで王妃の許嫁にするっていって やっぱしないってなって そんでも王妃が好きって言って暫く王妃に言い寄って付きまとってたってゆー…長いっ!つか ややこしいっ》
「なあ?魔界の王様って事は魔王って事だよな?」
「ええ そうなりますね」
「ふぅ~ん…この人が魔王なんだ?魔王のイメージって ちょい悪系中年って感じだったけど この人はなんつうか…爽やかなクールミント系中年て感じ」
「界色がグリーンと白だからじゃないですかね でもよく見てくださいよ 顔はエロそうですよ?」
「まあ、エロそうではあるけども」
「お母っちゃ!どこいるのー?」
《ごめんね?どんへ、お母っちゃすぐ戻るからね。一人で寂しいだろうけど、もう少しだけいい子で待ってて 》
「うん!さみしーけど お母っちゃが
帰ってくるまでまってるーーっ
でも、はやくかえってきーてーねー?」
《あいよっ》
お返事が男前な王妃様。
どんへが全員の所在をかくし 王妃に呼びかけていたのは 王妃の張っていたバリアー的なモノを消すためだったのだと(大王様以外の)3人は気づきました。
「どうだい、俺の孫は普段はふにゃーっとしてて この世のものとは思えないくらい可愛らしいけども イザとなりゃあ こんな賢い子いんだぞ?!えっへんっ」
《すげえ孫自慢っすね。。。
けど その通りだ。本当にどんへはこの世のものとは思えないくらい可愛くて そんでもって またーに賢くて…演技が上手い!オレの自慢の嫁さんだよ》
どんへ王子の演技力には語り部も驚いております。
この寂しそうな顔と声色、本当に一人で寂しいようぅ〜って感じがしますもん。
「大王様。王妃がいるこの場所ってあそこですよね?魔界と魔法界の界境にある。えっと~…あ、『Peace&Love』っていうカフェじゃないですか?あのケーキの美味しい…」
「あ~っ そうそう この内装はあの店だな。ここのケーキ美味いよなー(≧▽≦)
あの店主はすげえガサツなくせに作るケーキは繊細な味なんだよな~」
へえ~…魔界と魔法界の界境にもカフェとかあるんですね。
ん?待てよ?
カフェPeace&Love?
ガサツな店主?
ケーキが美味い?
うーん…。
なーんか どっかで聞いたことがあるような、ないような…。
「大王様!?申し訳ありませんが 少し黙ってて頂けますか?僕はジェジュンがなぜ魔王に会っているのか知りたいんですよ!!」
「おっ!?う、うん」
ユノ王の剣幕に黙る大王様
全員でスクリーンを見つめました。
「あの時 私と結婚していれば 君も幸せになれたと思うけどね」
魔界の王チョルウォンがジェジュンの手をそっと撫でくりまわします。
なんか…とてもキモいです。
「人間なんかと結婚して 幸せになれるわけないだろ?」
「急になんだよ?てか気安く触んなよ」
撫でくりまわすチョルウォンの手をウザそうに払いのけるジェジュン王妃
あ、やぱキモかったんですね。
「は?幸せになれないってなに?あんたね?なーに勝手に決めつけてんだよ?」
「だって そうだろ?特に君の旦那さん…フニャだっけ?」
「ユノ!!」
「ああ、そうそう ユノ…ふにゃふにゃーっとしてて 王様としての貫禄もなけりゃ 威厳も無いじゃないか。」
「だから何だっつうの?あのさ?おれはね?ユノみたいに優しくて男らしくて家族思いの男を他に知らないよ。おれはユノに出会えて本当に幸せだったって思う。
ユノに恋してユノと結婚出来たことが今でも夢みたいだって思う。
おれみたいな 我儘で生意気なオトコをユノは嫁にしてくれて…そして この世のものとは思えないくらい可愛い息子が産まれた。ユノに感謝しても し足りないくらいだ」
「お母っちゃ…(;ω;)」
「ジェジュン…・°・。゚(T^T)゚。・°・」
「王様としての威厳や貫禄とか そんなんおれにはどうだっていい。おれはユノがユノだから愛してるし ユノがおれを愛してくれている それだけでいいんだよ。幸せかどうかなんてのは 他人が決めることじゃない おれが決めることだ。おれはユノが側に居てくれるだけで それだけで幸せなんだよ」
「っ…ジェジュン 貫禄も威厳もないヤツに魔法界の王が務まるわけがないだろう?」
「しつけえな!務まってるつーの!ウチのお父っちゃだって威厳なんかまるでないよ?それでも今じゃ大王様だつってんだから」
ジェジュン王妃も父親の事は『お父っちゃ』って呼ぶんすね。
「え?俺も威厳ないの?しかもまるで無い言われたし」
悲しそうにつぶやく大王様
「どんへ!お母っちゃを迎えにいくぞ!」
「きゅうだなっ」
「だって…ジェジュンがあんな事を言ってくれたんだよ?俺っ今すぐジェジュンを抱きしめてやりたいっ」
「( ̄- ̄;…あ、そうなんだ?うん、じゃあ 行こうかね」
親子が出かけようとした時ジェジュンが話しだしました。
「魔法界は…代々の王様は威厳も貫禄もないってのが普通なんだよ。それでも代々の王様は民に愛されてるんだ。てか、魔法界の事はあんたに関係ないでしょっての」
「私はジェジュンに本当の幸せを教えて上げたいんだよ」
「は?だから~っ おれの幸せはユノといることなんだって言ってんのに解らない奴だね」
「人間なんかに魔法人の身体が満足できるはずないんだから」
「、、、あ、そっち?下ネタかよ!?
あのさ?申し訳ないけど おれは毎晩大満足させてもらってますよ」
「人間で満足など出来るはずがないんだよ。魔法界の王族は魔界の王族との情交でのみ快感を覚える事が出来るんだよ」
魔王の言葉にビックリしたのはヒョクチェでした。
「マジ?どんへも?人間のオレじゃあ キモチーくないってこと?」
このオッサン…あ、失礼。
今 魔王の言った事は魔界と魔法界に昔から言い伝えられていることではありました。
けれど その言い伝えはマユツバものだと語り部は思います。
何故かというと誰も試した事がないからです。
魔界人の王族の結婚相手は基本的に魔界人でありましたし
魔法人の王族の結婚相手は人間界の者と決まっていたからです。
一般の魔法人は魔法人同士で婚姻しますし
魔界も同じですので。
「嘘くせえ」
「嘘かどうか試してみたら分かるよ」
「試す?あんたと?ジョーダンだろ?」
「本気だ。帰さないよ?ジェジュン」
「何それ?キモッ…」
立ち上がろうとするジェジュン王妃の腰に手を回し抱き寄せると魔王は羽扇を一振りしました。
その途端 二人の姿は消えてしまったのでした。
「ぎゃーっ!俺のジェジュンがぁ~っ!」
王様の悲痛な叫び
つづく