ドンへに会いたかった。



親父に聞いても埒があかなくて 
転校する前の小学校の同級生に電話をかけまくった。


何人かの家に電話をして、やっと捕まった一人、 当時かなり仲の良かったウンソクってヤツだった。

ドンへを憶えているかと聞くと


ー 憶えてる、、、けど…



口が重い。
何なんだ?



「あいつ 急に転校しただろ?」


ー 転校?


「えっ?」


ー あっ…いや…うん。そうだな…急だったかもな


「なんだよ?」


ー 、、、お前、大丈夫なのか?


「何が?」


ー いや…


「何なんだよ?」


ー やっぱ アレってホントだったんだ…


「は?」


ー お前も、、、


「ん?」


ー いや…。なあ? お前、何も憶えないの?


「何も?…てかさ?何か変なんだよ。オレ…あの頃の記憶が曖昧なんだよ」


ー  、、、、


「おいっ!」



ー 俺に聞くより、隣の家の事なんだから、親に聞けよ


「親が…口割んねえんだよ!何があったんだ?今、家だろ?ちょっと出てきてよ。駅前のカフェにいるから」



電話じゃ埒が明かないと思って 呼び出す事にした。



ー オレだって…なんも…


「いいから 来いっ」



強くいって電話を切った。



来ないかもしれないなって思ったけど
あの頃、ドンヘの次に仲が良かったのがあいつだったから、頼みはあいつだけだ。




「お前は憶えてんだろ?なあ?何があったんだ?」



結局来てくれた元同級生、ウンソクに改めて聞いてみた。



「だから…俺も…」



これだけ言葉を濁すって事は、余程のことがあったんだって推測は出来た。



「分かった。質問を変えるわ。ドンへの家が引っ越す直前くらいにオレ、学校で大怪我した?」


「え?いや…っ …あ~ うん。そうだったかも…」



やっぱり怪我は嘘だった。
オレが大怪我したんなら、こいつが憶えいないハズがない。



「オレ、入院してたんだよ?2週間も。そんなヒドいケガだったんだ?」


「… じゃない?俺は…その場にいなかったから…」


「じゃあ誰がいた?誰といて怪我なんかした?ドンへ?」 


「いや…」 


「あの頃って、お前かドンへとしか遊んで無かったんだぞ?それ以外のヤツと遊んでてそんな怪我なんかしたら憶えてるハズだよ。なあ?本当の事言ってくれよ。オレは学校で怪我なんかしてないんだろ?」


「あの頃… お前、ドンへとマジで仲良かったもんな… 」



そうだよ。ドンへが大好きだった。 ドンへと結婚したいって本気で思えるくらいに 



「何で急にそんな事?」


「ドンへの夢を見たんだ。 ガキの頃にあいつとずっと一緒いようって約束した時の…夢」


「ずっと一緒…か。 なあ?アレからドンへには会ってないのか?」


「会ってないよ。何処に越したのかもわかんないし…親に聞いても分かんねえって…」


「そう…だよな…会いたいよな。あんなに仲がよかったんだもんな、、、。 あのさ、図書館にいってみようぜ」


「は?何で図書館?」


「いいから、立てよ 」




ウンソクは ”何か” を知ってるんだ。そして その ”何か” は 図書館にあるって事だろう。

そう思って 促されるまま 図書館に行った。 



「14年前の新聞…見て」


「14年前の新聞?」






PCを開いて検索する。










ドンへ…ドンへ…ドンヘ…ドンヘ…

叫び出しそうになった。



何で…?何で… 
オレは 忘れてたんだろう…

こんなに酷い現実を…。



14年前の12月26日のあの夜の酷い光景。




血の海の中で横たわる叔母さん



脇腹から血を流して泣きながら痛みに
のたうつ小さなドンへ。



その場に包丁を持って呆然と立ち尽くしている叔父さん





血の匂い。


母さんの悲鳴。



直後、叔父さんは自分の首に包丁を当てて…






眩暈がする。

息が出来ない…苦しい。

ドンヘ… 








「ヒョクチェっ!」



ウンソクがオレの方に駆けて来るのが見えた…。

















つづく