「誕生日 おめでと…」



ソッポ向いて、ブレゼントを渡してくるきゅひょな。


「ありがとう」



笑顔で受け取った。



14年前のあの日から、ずっと心を閉ざしていたオレに、始めて出来た心を許せる友だち、きゅひょな。



なんとか高校を卒業したものの、定職には就かず、色んなアルバイトを転々としていた時に見つけたのが、今の仕事だった。

このお店はゲイバーで(女の格好をされられるから オカマバーとも言うのかな?)最入ったばかりの頃は姐さん達(ホントは兄さん達だけど)にメイクをしてもらっていたんだけど
1ヶ月経つ頃には自分で出来るようになった。

この店できゅひょなに出会った。
きゅひょなはオレの二つ年下だったんだけど、この店ではきゅひょなのほうがオレより3ヶ月くらい先輩で、オレに色々と教えてくれる係だったんだ。


『ったく、めんどくせえ』

って枕詞があってから教えてくれるってゆー 
優しい…ヤツ。


こういうお店って、ホンモノのゲイと、お金の為にこのバイトをしているって人がいる。
きゅひょなはお金の為って方だった。



「ドンへはゲイなの?」



このお店で働くようになってすぐに、きゅひょなに聞かれた。



「女の子より男の方が好きならゲイなの?」



って質問に質問で返すオレに、きゅひょな 笑って



「たぶんね。」



とか言う



「だったら…ゲイなんじゃないかな?」


「男が好きなの?」.



確認されて、違うと思った。
男が好きなわけじゃない。
男なら誰でもいいわけじゃない。


でも…



「抱かれる方が好きなんだと思う」



人を信じることが出来くなっていたオレは、誰かに心を許すことを恐れていて、友達も欲しいとも思っていなかった。



けど…

ただ時々、一人でいる事が寂しくなって、一人で泣いていた。

ある日、街で 男に声をかけられて、ついて行ったら ホテルで…

まあ いいやって思った。

その人は優しくて、あったかかったから、いっ時だけでも寂しさを忘れられたし…。

以来、寂しくなると街に出た。




「ここの仕事はオレには天職かも…」 


「…  …  …  」



きゅひょなに返事を貰えないから オレは一人で話つづける



「街に出て男を漁らなくても、お店に来る優しい人たちにオレのコイビトになってもらえばいいんだからさ」


「優しい?」


「優しいじゃん」


「バカじゃね?あんなのはチヤホヤってゆーんだ。誰も本気で付き合うつもりなんて無いんだよ。恋人でもない、だからみんな一晩限りだろ?」



知ってるよ。

でも…
 


「そんな事ないよ、、、。一晩限りじゃない人もいる。会いたいって言えば会ってくれる。だから コイビトだよ」



反論してみる



「既婚者が恋人?」


 
そう来たか



「普通に女と結婚してる男が恋人?」


「もう いいよ。そんな話」


「お前が始めたんだろ?」


「ふふっ…そうだった」


「笑ってんじゃないよ。泣きたいクセに」



きゅひょなはスゴイな
なんでもお見通しだもん。



「なあ?ドンヘ、お前はおれにとって本当に大切な友だちなんだよ。もっと自分を大切にしてよ。辛い時はおれを頼ってよ。ひとりで泣いたりしないで、、、」


「うん、、、」


「お前が寂しいなら…抱きしめて一緒に眠るくらいはしてやるよ」



上からだなあ~

なんて思いながら オレは涙が止まらなくなった。





「会いに行けば?忘れられないならさ…」



会ったよ。


違うな…
会ったんじゃなくて、見かけただけだ。

高校を卒業してすぐに、ひょくちぇに会いたくてオレは、小さい頃に過ごしたひょくちぇの住むあの街に行ってみた。


オレとひょくちぇんチがある近くまで行った時、足が震えて、それ以上は進めなくなった。


吐き気と目眩。


あの日の光景がフラッシュバックする 。
救急車のサイレンの音が耳の奥で聞こえて… 

その場に蹲った。


タスケテ…タスケテ…タスケテ…タスケテ…タスケテ…タスケテ…タスケテ…

オトーサン 
オカーサン


「ひょくちぇ…」




グラグラする頭を抱えて じっとしてた
イヤな汗が背中を伝う



やっと立ち上がって、フラフラと駅に戻っていた時


ひょくちぇを見かけたんだ。



ずっと会いたかった ひょくちぇ 
気が狂いそうなほど焦がれていた ひょくちぇ。

ひょくちぇは…
女の子と楽しそうに歩いてた。

声をかける事なんて出来なかった。

そっか、って思った。
ひょくちぇはオレのことなんかとっくに忘れて…可愛い女の子とつき合って、楽しく暮らしてるんだ。

 
オレの事なんて記憶の片隅にも残って無いんだって思い知らされた。

満月の夜の約束も…

オレも忘れなきゃいけないんだよね、、、。























つづく