続・いい動きが身につくと追風参考記録にびっくりします | 中讃ミドルクラブログ

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陸上は楽しくありたい!が原則で,それでも本気で世界一のアスリート育成を目指す,うどん県骨付鶏市を拠点に活動中!陸上クラブの日常を書き綴ります。

さて,前号で「脚の引き出し速度=出せる最高速度」と書きましたが,大切なことはいかに速く脚を前に運ぶかということです。
これができないと転倒してしまいます。
そして,そのために必要なのが「脚を後ろに残さない」つまり「地面をけらない」ことなのです。
勘違いしないでほしいのは,これは「最高速度に達した後は」という条件付きだということです。
言葉は難しいもので誤解されると一人歩きをしてしまいます。
「先生が『地面をけるな』と言ったから,私はそれを守って一切けっていません。」などと言ってスタート直後から全然けらずにふわふわ走れば,遅くなるのは当然です。
加速の段階では,まだトップスピードには達していませんから,脚が引き出せないということはありません。
スピードが上がるに従ってける方向が徐々に後ろから下になっていき,最高速度に達したら,けらずに遅れないように前に素早く引き戻すだけになるわけです。
なめらかに変えていくこと(強くける→少しける→けらない)が大切なのです。
そして,その感覚は自分の体でつかむしかありません。
ちなみに私は,現役の頃,どの位けったら,脚が前に引き戻せなくなるか,試してみたことがありますが,それを言葉で伝えることはできません。
自分でつかんで下さい。
ただ,私たちはそれを外部から見てスムーズに見えれば「その調子だ」とアドバイスできるのです。

しかし,フォームだけでもいけません。
いくら「こうすれば速く走れる」ということがわかっていても,普段全然運動していない人が速く走ることは無理です。
昔速くて少々脚に自信のあるお父さんやお母さん達が頼まれて地域の運動会にリレー選手として参加するときによく起きることですが,脚が前に引き戻せずに転倒します。 
これは,まさに頭では昔の速かったイメージ通りに走っているのに,体がそれを実行できないことから起きる失敗です。
この原因は「腸腰筋や腹直筋等腰回りの筋肉の弱体化」です。
自分で思っている以上に,これらの筋肉が弱っているために,思うように脚が引き戻せないのです。
筋力というのは一度つけても,常に刺激を与え続けないと(トレーニングをし続けないと)萎縮して弱くなってしまうのです。
普段デスクワークしかしていない大人の筋肉が鍛えられているはずがありませんね。
また,ジムに行ってウエイトトレーニングをしているという人でも,なかなか腸腰筋を鍛えている人はいません。
同様に毎日ジョギングをしている人でも,それはジョグ程度のスピードで引き戻せる筋力しかありませんから,全速走でも引き戻せるだけの強い腸腰筋はないのです。
とすれば,やはり普段からこれらの筋肉を鍛えておくしかありません。
だから腹筋の鍛錬が必要なのです。

さあ,これでフォームと筋力の両方がうまくかみ合ったときにのみ,速く走れるようになることがわかったでしょう。
しかし,「言うは易く行うは難し」で,いいフォームを身につけるのは難しいものです。
しかし,一端身についたときには自分でも嘘のように速く走れます。
それは引き戻す脚の速度に余裕があるからです。
そして,その効果は追い風に助けられたときに大きく出ます。
風がなかったり,向かい風が吹いているときは,そんなにスピードが出ませんから,筋力に頼った走りをする人でも,何とかごまかせます。
ですから,いい動きの人がそうした力任せの人に勝つ場合でも,ゴール間際に逆転するというレースが多いのです。
ところが追い風が強く吹いているときには,力任せの人が早々に引き戻し速度の限界に達してしまうのに対し,いい動きの人は,まだまだ余裕で引き戻せますから,どんどんトップスピードが上がっていくのです。

その一例が,香川県の昔の名スプリンター平賀圭太選手です。
彼はインターハイ200m2位の選手ですが,高校時代の100mのベストは10"57です。
しかし県選手権で優勝したときは,追い風参考(4m位だったと思います)ではありましたが,10秒2というものすごい記録でした。
私はその場面を見ていましたが,70m以降は他の選手が止まっているかのように見えるほど,彼のスプリントだけが冴えていました。
次回は,そうした動きができている人を紹介しましょう。
今回はこの辺で。

では,また!!