こんばんは、押田です。
2017年も9月の半ばを過ぎました。
僕が雑木の庭づくりを始めたのが、2013年3月。
一番最初に作った庭が、熊谷市のK宅。
9月15日の午前中、久しぶりにK宅の庭の様子を見に行きました。
今日は湿度も少なく、気持の良い快晴でした。
午前中の気温は30度近くあったようですが、庭に入ると空気がひんやりとして、とても涼しい空間でした。
作庭から4年半、木々はすっかり大きくなり、庭全体が木陰に包まれるようになりました。
しかしながら、雑木の庭づくりのデビューだったこともあり、現在の庭づくりとは使用する樹木は同じでも、庭の作り方はかなり変化というか、進化しました。
数年前から、庭に毛虫が発生するということを聞き、剪定をしながら対処してきましたが、なかなか効果がでませんでした。
この4年前と今の庭づくりで決定的に違うのは、「通気浸透水脈の整備」をしているということです。
今年の6月、お客様にも相談し、夏季剪定をしながら、敷地内の水脈整備をすることになりました。
敷地外周や植栽地周辺に溝を掘り、水脈を通していきます。
4年半経過した木々は大きく成長し、庭空間が狭く塞がっているところもあったため、
木々も数本掘り取って、風通しを良くしていきます。
水脈整備の良いところは、剪定した枝を使えるという事。
剪定作業をしながら、枝葉を水脈の中に組み込んでいきます。
庭の中で伸びた枝葉は大地の中に還り、今度は自らの木々の健康の手助けをします。
「ブランコをつけたい」というお客様の要望があり、最後にお子さんのブランコを設置、
庭の改修工事は終わりました。
ちなみに今から5年ほど前、こちらの庭の施工前の写真、2012年11月撮影。
そして施工後の2017年6月。
木漏れ日の差す、気持のいい空間になりました!
別の角度、デッキ方向から、施工前。(2012年11月撮影)
2013年3月、庭の完成当初。
そして、2017年9月15日現在の様子。
僕自身もこの庭を作って以来、今までたくさんの雑木の庭を作らせていただきました。
今年の暮れあたり再度風の剪定をして、伸びすぎる枝や大きさを調整し、
さらに心地よい空間にしていければと思います。
それでは、今回のブログは、2017年に施工した庭づくりの様子を2件紹介します。
住宅の密集する地域に建つ千葉県柏市T宅。
横幅は10mくらいありますが、奥行きは3mから5m、約40㎡ほどの小さな庭です。
着工は今年の正月明け、2017年最初の現場でした。
この現場では、狭い敷地内にどれだけ元気な木々を育てられるか、
色々とj実験的な施工を行いました。
デッキを長持ちさせるため、デッキの下に水脈を通しました。
こちらは、アプローチ園路。
砕石を敷き、固く転圧をするのが一般的な園路の下地の施工方法ですが、
園路の下のスペースを固く締めて、根の浸入を困難にしてしまうことは、
樹木にとっては負担のかかる事です。
炭を撒き、枝葉を入れ、コンクリートを打設する時に使う、ワイヤーメッシュを敷き、下地部分は完成。
園路部分と大地との間に適度な緩みのある隙間を設け、樹木の根の侵入を促します。
ワイヤーメッシュの上からハナマサ(固まる土)を打設、人が歩く強度とスペースを確保しながら、
樹木の根っこも園路の下に伸びることができるという、樹木と人が共存できる園路の施工です。
施工後。
限られた狭いスペースに庭をつくり木を植える場合、駐車場やデッキ、物置、人の動線など、スペースの取り合いになることがよくあります。
最終的に一番よく削られるのが植栽スペースであり、土の部分です。
それは我々が生活する街中でも同様であり、
土の部分が少なくなれば、樹木の根は行き場所を失い、
結果的に樹木は樹勢を落としたり、害虫の発生の原因ともなります。
そんな中、庭空間の園路の下に根が張り巡らせることができれば、それは樹木にとってもありがたいスペースとなります。
今年の1月から始めて、6月過ぎ、ようやくT宅の庭が完成しました。
こちらは施工前の様子。
「デッキをつくりたい、物置も欲しい、野菜もつくりたい・・・・」
お施主様の夢をどれだけ実現できるか?
3月頃、施工中の写真。
ウッドデッキに駐輪場付きの物置、菜園、そして植栽スペースと、
限られた空間の中で、様々な庭の要素が組み込まれました。
そして、完成。
限られた環境だからこそ、水脈の整備がとても重要な要素になると実感した現場でした。
最後にもう1件、こちらは軽井沢Y宅。
平屋建ての小さな別荘です。
前庭、建物の前に木を植えます。
軽井沢は僕の住む埼玉県北部より、夏の気温でいうと常に6度くらいは涼しいです。
コハウチワモミジやアズキナシ、アオダモ、カツラなどの繊細な雑木類を、埼玉で使用する際は、夏の猛暑に樹木が耐えきれない事がよくあります。
しかしながら、元々冷涼な気候の下で成育していたこれらの樹木たちは、軽井沢ではとても順応しやすい環境であるといえるでしょう。
埼玉では扱いにくい繊細な雑木類も、軽井沢では大胆に植えることができました。
この土地からは浅間山の溶岩石(ボク石)がたくさん出てきました。
植栽の土留めに使った石は全てこの土地から出た物です。
今年のGWから開始した工事も、8月下旬に完成しました。
昨年の秋ごろから打ち合わせを重ね、初めてこの現場を訪れたのが4月1日。
関東では桜も開花していたこの時期ですが、
軽井沢は季節外れに雪が降り、とても寒かったのを思い出します。
4月だというのに、薪ストーブが焚かれた部屋。
4月とは思えない、室内からの寒々とした眺め。
窓の向こうに見える大きなモミの木が印象的でしたが、
部屋の中から見る景色は、周囲のネットフェンスが見えるくらいでした。
それから約5か月。
春が来て、夏も終わりに近づく8月26日、施工後です。
右奥に見えたモミの木も遠景となり、清々しい木々の枝葉が目に優しく映ります。
また、嬉しいことに、庭の施工期間中に軽井沢Y様の第一子が誕生しました!
道路からの目隠しを兼ねた、薪棚とエントランス。
あと2か月もすれば、軽井沢は秋が終わり、長い冬が訪れます。
この薪棚を使う頃・・・
美しい紅葉や、冬枯れする木々の樹肌と青々としたモミノキを見ながら、
新しく増えた家族と共に、薪ストーブを囲む・・・。
そんな光景を想像すると、我々造園の仕事は、
人生の大切な節目に寄り添い、立ち会わせていただいてる仕事なのだと実感します。
今後も多くの方々に、どんな環境下の庭においても、木々を健康に育て、心地よい空間づくりができるよう、日々勉強しながら活動していきたいと思います。