"イヤミス(読後にイヤ〜な気分になるミステリ小説)の女王" と呼ばれる作家、湊かなえ氏。
この人、普通のオバチャンなのになんでこんなに黒い話が書けるのやら?(笑)
これは介護をテーマにしたミステリです。
『C線上のアリア』
高齢化社会ですね... なんて他人事のように言ってられないぐらい、「介護」というものが急速に身近に迫って来ています。
友人と会うと親の介護の話になるのは珍しくありません。
.....ちゅうか、その話に終始してしまう(笑)
この小説の主人公・美佐は50代。
中学生の時に交通事故で両親を亡くし、叔母の家に引き取られました。
成人してからは仕事が忙しく、叔母とは長らく会う機会もなかったのですが、認知症の疑いがあると市から連絡を受け、高校時代を過ごした叔母の家を訪れます。
しかし、かつて整然としていた家は、新聞がバリケードのように積み上げられ、ゴミ屋敷と化していました。
美佐は叔母を養護施設に入所させ、ゴミの山を分別し、不用品を捨て、途切れる事なく届けられていた定期購入品を1件ずつ解約。
すると、ゴミの山の中から頑丈な「開かずの金庫」が見つかります。
何が入っているのか.....?
施設の叔母に金庫の話をすると、叔母の表情が険しくなり、過呼吸に。
美佐はそんなに大事なものが入っているなら、中身を他の安全な場所に移そうとプロの解錠業者を呼び、金庫をあけてもらうのですが、中に入っていたのは延長コード1本だけ。
???
さらに整理を進めていると、段ボール箱の中からかつて読んでいた村上春樹の『ノルウェイの森』下巻が見つかりました。
上下巻あったはずなのに?
その本には、美佐の昔の恋人が書いたメッセージが。
懐かしさのあまり、美佐が元恋人宅を訪ねると、介護に疲れたその家の嫁と義母が口論中で、嫁が危うく義母を手にかけようとしているところ......
ここまで読むだけで、「どうなるの?」と引き込まれます。
物語のピークはまだまだここから。
介護を巡る痛ましい事件は、現実にも起きています。
現代では行政サービスや施設があってプロの介護職がいますが、それでも「家族の絆」なるプレッシャーも同じく存在し、家庭という密室では何が起きているのか、他人にはわかりません。
それぞれの嫁姑問題、それぞれの介護問題。
この本、幸いにしてこれまでの "イヤミス" とは違って、ほんの少し希望が見えるほろ苦い結末になっています。
