学生時代から8ミリ映画を撮っていた黒沢清。
ディレクターズ・カンパニーに参加し、『太陽を盗んだ男』や『セーラー服と機関銃』で助監督を務めた後にピンク映画で監督デビューを果たします。
これが1983年。
その後、1989年に伊丹十三製作のホラー映画『スウィート・ホーム』で監督を務めますが、伊丹十三が現場に再三口を出した為に大モメに揉め、映像の二次使用を巡って裁判沙汰にまで発展。
結局この作品のビデオは廃盤になったままです。
そんな黒沢清がついに独力で(と言っていい)世に放った傑作がコレ。
『CURE キュア』(1997年/大映)
監督・脚本:黒沢清
出演:役所広司、萩原聖人
これは我が国のサイコホラー史(そんなカテゴリーがあるのかどうかは??)屈指の傑作です。
首筋から胸元にかけて、鋭利な刃物でX字型に切りつけられる殺人事件が連続して起こります。
犯人は逮捕されるものの、普通の一般市民がいきなり殺人鬼に変貌したという印象で、事件との結びつきは希薄。動機も漠然としたまま....
役所広司演じる刑事は、途方に暮れつつこの連続殺人事件に共通するものは何を探ってゆきますが、捜査は行き詰まり。
やがて役所広司は、記憶障害を持つ青年・萩原聖人に辿り着きます....
※ネタバレは止めておきます。
1995年にオウム真理教の事件が起き、未成年による凶悪事件も勃発。日本人が古くから持っていた共同体意識は薄れ、世紀末が近づく。
人々が何やらよくわからない不安に駆り立てられていた時代にこの作品は公開されました。
"この世のものではない者" が出て来るホラーであれば、エンドマークが出た時には伏線は回収されていますが、『CURE キュア』では恐怖は消える事なくそのまま残されます。
本当に怖いものは何?
その答はここにあります。