現代のゾンビ映画の原点とされるジョージ・A・ロメロの作品。
『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』(1968年)
原題そのまんま、Night of the Living Dead
撮影もロメロ自身が行ったそうですが、クレジットされていません。
まだ「ゾンビ」という言葉はなく、困った配給会社の宣伝部が直訳カタカナでそのまま「リビング・デッド(生きている死者)」にしちゃったんでしょう。
※英国ハマープロ製作の『吸血ゾンビ』というタイトルの映画がありまして、こちらの原題は The Plague of the Zombie
「ゾンビ」という言葉が使われています。
死体が甦るのは同じですがブードゥー教の呪術によるもので、我々のイメージするゾンビとは少々違います。
話は単純。
よくわからない理由で死者たちが甦り、生きている人間を襲う.... それだけ。
1968年なのにモノクロ映像で、セリフも極端に少なく淡々と進みます。
郊外の一軒家に立て籠った子供を含む7人の男女が、夥しい数のゾンビと戦う展開ですが、甦った死者はフラフラとゆっくり動く、人間に噛みついて肉を食らう、というゾンビ映画の "ルール" はこの作品で確立されました。
立て籠った7人は、白人・黒人、男女。
黒人がリーダーシップを執るところは後年のダリア・アルジェント版『ゾンビ』に似ています。
しかし、彼らの立てた対ゾンビ作戦はことごとく失敗し、閉鎖空間の中でリーダー争いの仲間割れも起こる....
そして、救いようのない結末。
巨大ショッピングセンターを舞台にしたアルジェントの『ゾンビ』はアクションシーンもそこそこあって、笑えるシーンすらあるエンタメ性の高さだったのに対し、このロメロ版はとにかく静か。
モノクロ画面が不気味さを際立たせています。
あんなゆっくりしか動けないゾンビなら走って逃げればいいのに、なぜ怖いのかというと、奴らは「死者」だからです。
この世の者ではないから。