友人に誘われてミュージカルを観に行くことになった。友人とは年が親以上に離れているけれど、古くからの友人で、いつも私のことを気に掛けてくれる有り難い存在だ。


その友人から誘われる際に「サイちゃんが会ったことがない私のお友達(Aさん)も一緒だけどいい?」と聞かれたのだが、ミュージカルを観るのが目的だから「全然構いませんよー」と答えていた。


待ち合わせ場所には早く到着したので、私は近くのベンチに腰掛けて本を読みながら待つことにした。ところが夢中になりすぎて、友人からの着信に気付かず、早く来たはずなのに友人らを待たせる形になってしまった…。


そろそろ来るかな?

携帯を見ると不在着信の表示。

慌てて折り返しの電話をすると、近くまで私の友人とAさんが来ていた。私をだいぶ探し回ったのだろう。


「ゴメンなさい、電話に気付かなくて…」

と私は謝ったが、私が療養中と知っている友人はともかくも、Aさんの方は、ちょっと不機嫌そうだ。


初対面なのに歩き回らせてしまって申し訳なかったな…そう思いつつも一緒に会場へ。ミュージカルの開演までの待ち時間、友人とAさんは、しばらく振りの再会だったようで互いに近況報告をしている。


「…あれから大変だったのよー」

Aさんは最愛の旦那さんを亡くしたという。

「血液のガンで…もう15年くらい前のことでしょう?ネットで調べてもよく分からなくって、セカンドオピニオンもしたんだけど、当時は骨髄移植以外に治療法もない、原因も分からないって…。でも白血球の型の合う兄弟もいなくて。年齢的になこともあって治療を断念したの…」


あれ…?もしかして私も同じ病気だった…かな?

私と友人は顔を見合わせた。

「もしかして…ご主人の病気って、MDSだったんですか…?」


(つづく)