東京と神奈川では、私立中学の入試は、2月1日が解禁日となる。12月や1月に入試をすることはできない。
今回は、中学入試の解禁日の話。
【1】現在の解禁日
現在の首都圏では、中学入試が開始となる「解禁日」が決まっている。
東京・神奈川・・・2月1日
千葉・・・1月20日
埼玉・・・1月10日
都県によって異なるのが現状だ。
【2】解禁日が決まった訳
東京の私立中学入試の解禁日が、2月1日に決められている。私が中学入試の受験生を始めて送り出した1987年には、すでに決まっていたから、30年以上前からの秩序ということになる。
では、なぜ解禁日が決まったのだろうか。理由はいくつかあるが、その中の大きなものに「小学校側の要請」がある。
それぞれの私立中が12月1月2月とバラバラの日程で私立中入試を実施しては、小学校生活が落ち着かない状況が続く。小学校側から見れば、最後の方で3~4日で一気に終わらせてほしいという要望があるわけだ。
【3】千葉の解禁は1月20日
東京が2月1日解禁なのに対し、昔から千葉では一足早く1月20日から入試をしていた。。
35年前は、千葉県内で本格的に中学入試をしていたのは、市川学園、東邦大東邦、和洋国府台、国府台女子学院の4校と言ってよかった。
渋谷幕張、昭和秀英は開校していなかったし、専修大松戸、芝浦柏、麗澤は、高校だけだった。
都内の中学からすれば、千葉の市川学園と東邦大東邦は、一足早く入試をして、多くの受験生を集めていて「うらやましい」「不公平だ」という気持ちはあったと思う。しかし校数が少なく、影響も限定的だったと感じる。
↑写真は渋谷幕張入試(2016年2月2日)
【4】埼玉は?
埼玉は、現在1月10日に入試が始まる。
ところが、昔の埼玉は、私立中そのものがほとんど無かった。埼玉は、東京のベッドタウンとして人口が増え、高校が不足していた。受け入れる高校が足りないのだから、私立中を作る教室や先生に余裕があるなら、高校の受け入れ人数増やしてよ、という状態だった。私立中の新設は無理で、私立中は(記憶によると)4校だけの時代が続いていた。
やがて高校生の数が減少し、私学側の要望もあって、私立中の増設が続いた。私立中入試の解禁日を決める際には、より優秀な生徒を確保するために、千葉よりさらに早い1月10日となった。
【5】茨城は?
茨城県にも私立中はあるが、明確な解禁日は決まっていない。
埼玉よりも一足早い1月8日あたりから入試が始まる。
他校よりも早く入試をして、生徒をたくさん確保したいという事情から、どんどん早くなり、ついには1月6日に入試をした私立中があった。ところが、塾では冬期講習の授業を組んでいる時期で、授業を優先してお試しで受けに行く受験生は減ってしまった。早ければよいというものではないわけだ。
【6】東京で2月1日を見直す動き?
御三家クラスは別として、東京の私立中にとっては、都内の受験生が1月に、埼玉&千葉に受験生が流れてしまう。同じ日程なら他県に流出しないと思われる都内の受験生が、逃げていくわけだから、頭が痛いだろう。
もし、千葉・埼玉・東京・神奈川が、同じ日程で入試をしたら、都内から埼玉&千葉に流出しなくなるため、都内の私立中が偏差値アップ、埼玉は偏差値ダウンになるだろう。
だから、都内の私立中学の中には、1月入試をしたいと望んでいる学校もある。
実際に、都内でも例外的に認められている帰国子女入試を、「柔軟」に活用してヒンシュクを浴びた女子中もあった。中1の秋くらいのレベルの易しい英語も出題し、出願資格なしの帰国子女入試を行った。外国に行ったことが全くなくても、帰国子女入試に出願できるわけだ。
なお、千葉では中学入試に「第一志望入試」、合格したら必ず入学する自己推薦入試があるが、東京では一切認められていない。
【7】簡単でない解禁日移動
ただ、実際に東京の私立中入試の解禁日が、2月1日を動かすのは、簡単ではない。
受験生を送り出す小学校側(都内の小学校長会かな?)など、関係する相手に理解を得るのは簡単ではない。
とりわけ、中高一貫都立との関係は難しい。都立一貫校の最初、白鷗中の入試日を、東京都教育委員会側は、当初は1月中を予定していた。しかし、東京都の私立中側(東京私立中学高等学校協会)は、こういう主張をした。
「我々は、埼玉・千葉の1月校に受験生を奪われても、前倒しをせずに2月1日を維持してきた。都立一貫校が1月に入試をするのには強く反対する」と、私立中入試2月1日解禁の再考もあるとして抵抗した。その結果、都立中高一貫校は、国立中と同じ2月3日となった。
30年前と比べて、埼玉&千葉のライバル私立中が増え、2月1日入試を維持するのが大変になった面はある。ただ、小学校側、都立一貫校などとの兼ね合いがあるから、少なくともあと3年は入試日程が大きく動くことは考えにくい。