これを待っていた。
肩で息をしながら少女は思った。
「Meteor tongue」の時は一つの舌を斬っている間に別の舌に串刺されることは分かっていた。
だが、あの蛇の性格を考えれば、いずれは舌一本で真っ向勝負に出るだろうと考えたのだ。
少女の体力と蛇の忍耐…一種の我慢対決だった。
そして、少女は賭けに勝った。
吐き出された舌めがけて、少女もまた全力で刀を振るう。
赤い血が彼女の顔に散った。
蛇が痛みに悶える中、少女は刀を顔の高さまであげる。
「凪げ、calm」
静寂の瞬間…ある青年は「無音の世界」と呼んでいた…の中、少女は風斬り音とともに刀を振るった。
一瞬の沈黙。そして…
「ぐわあああぁぁっっ!!」
無数の裂傷に包まれた蛇が悲鳴をあげた。
相手の躰が大きいほど、calmは強力になる。
苔色の躰が赤く染まりつつある。
一瞬、少女は勝ったと思い込んでしまった。
そのため、蛇の攻撃に反応出来なかった。
少女を空中に投げ飛ばしたのだ。
「…………!!」
受け身が取れず、きりもみ状態になりながら少女は蛇がこちらに顔を向け、大きく口を開けるのを確かに見た。
「Missaile tongue」
巨大な舌が少女に向けて射出された。
直撃すれば、命は無いだろう。
唐突に、少女は笑った。
さっきもそうだ、いや、さっきの比ではない量の風圧が少女の躰を襲っていく。
だが、少女は知っていた。
風は絶対に自分を傷つけたりしないということを。
風は気まぐれで、すぐどこかに飛んでいってしまうけど、同時に絶対に離れず、傍にいてくれる。
瞳には見えないが、彼女の大切な友達であることに変わりはない。
(お願い…力を貸して…)
心の中、必死に願った。
刀を下の蛇に向ける。
途端に強い風が吹いた。
少女の躰が持ち上がり、舌が脇腹を掠める。
といっても、肉をえぐりとられるような衝撃に襲われたが、なんとか命は保てそうだ。
少女は意識をゆっくり刀に集中させる。
銀色の刀の輝きが更に増した。
周りの風が全て刀に吸い込まれてるみたいだった。
切っ先をがら空きの蛇の腹に向ける。
「穿て、blast」