俺はノックをしようとして踏みとどまる。
ノックしても拒絶されるだけだから。
この際、礼儀やマナーといった言葉は頭から消しておこう。
俺はドアのノブを掴むと、何も言わずに開けた。
そこはとても簡素な部屋だった。
まさしく貧相を絵に書いたような、そんなイメージ。
「……工藤くん」
薄暗い中から声がする。
目を凝らすと、隅の椅子に江岸が座っているのがやっと見えた。
「どうして…どうやって…?」
「色々聞きたいことがあってな」
部屋に入ると、手でまさぐって明かりを点ける。
カーテンが閉めてあるため、さほど変わらなかったが。
江岸は沈んだ表情だ。
まるで余命1週間を宣告されたようだった。
「…ごめんね、あまり片付いてなくて…」
「いゃ、気にしないで」
少なくとも、江岸は急な来客を嫌がって無いみたいだ。
椅子から降りて、わざわざ俺と同じく床に腰かける。
「市長のこと聞きに来たの?」
俺が頷くと、江岸は俯いた。
「江岸は…市長をどう思ってるの?」
「悪魔よ」
強い声で江岸が言い放つ。
「あたしはあいつのせいで、全てを失ったの」
『またあたしから何かを奪いに来たの?』
浅里丘での会話が蘇る。
「どういうこと?」
江岸は俯きながら語ってくれた。
「あたしの父は市会議員だったの。根っからの岸ノ巻市民で、次の市長を期待されていたんだ。
でも、その時現れたのが岸本だった」
江岸が憎々しげに目を細める。
「他市民の出馬は暗黙のタブーとされていたんだけど、岸本はそれを真っ向から破壊して少しずつ市民の人気を掴んできた。岸本はあたしの中学の頃の家庭教師で、両親からの信頼もあった。父ですら『岸本くんにならいいかな』って言ってた。
だけど、投票する5日前、それが起こった…」
江岸が顔をあげる。
その目に移っていたのは…
「……それ?」
それは…
「強盗殺人」
恐怖だった。
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だんだん濃くなってきました

結末どうしよう(;´д`)