この年初舞台を踏んだ89期生からは、花組トップ明日海りおと雪組トップ望海風斗を始めとして多彩な人材が生まれた。男役スターでは今も専科で活躍中で別箱や全国ツアーで主演実績のある凪七瑠海、一時その凪七と月組のW二番手格だったが後にちゃんと二番手となった美弥るりか、今も男役に拘りを見せる七海ひかる、壱城あすか、蓮城まこと、俳優井上芳雄の妹初輝よしや等。娘役では星組娘役トップの夢咲ねねの他、現在中島亜梨紗の名前でNHK大河ドラマ等で活躍する羽桜しずく、男役から転向した純矢ちとせ、沙月愛奈、白華れみ、愛花ちさき、大月さゆ等がいた。
1~2月雪組「春麗の淡き光に/Joyfull!!」は、朝海ひかると舞風りらの新トップコンビの大劇場披露公演。植田紳爾大先生の新作という事だったが、実際は1973年(S48年)花組甲にしき主演の「新・花かげろう」のリメイクだったらしい。2~3月宙組「傭兵ピエール/満点星大夜總会」に、4~5月月組「花の宝塚風土記/シニョール・ドンファン」。5~6月花組「野風の笛/レヴュー誕生」では専科から轟悠が主演し、春野寿美礼が準主役のような形になった。これ以降暫くの間新トップの二作目か三作目に轟が専科から主演することが恒例化したが、特にトップ生徒のファンの間ではあまり評判はよろしくないようだった。「レビュー」のフィナーレでは先ず轟が初めてのエトワールで登場し、最後に春野が出てきたところで轟が再登場して大羽根を背負った二人が舞台センターに並ぶという形になった。野次馬根性の手前としては、中々豪華な景色がそれなりに楽しいものだった。尚、轟は公演中に劇団理事に就任した。また前公演の「エリザベート」で相手役だった大鳥れいが退団したため、この公演からふずき美世が新しい相手役として春野とコンビを組むこととなった。
7~8月星組「王家に捧ぐ歌」はオペラ「アイーダ」原作で、新トップコンビとなった湖月わたる・檀れいの大劇場披露公演だった。前年に前トップ香寿たつきの退団発表を受けて次期星組トップが誰になるのかがえらい議論となったが、基本的には元々星組生だった湖月と彩輝直のどちらかだろうと言われていた。新専科行となった各組元2番手は、残念ながらワン切りとなってしまった2人を含めて、湖月以外は前年皆トップに昇格していた。一方でしかしながら当時某大御所演出家先生のお気に入りと言われた、彩輝が優勢との見方が大勢を占めていた。ところが蓋を開けて見たら新トップは湖月で、しかもやはり専科生だった檀れいとコンビを組むという。誰もが頭に浮かんだのは未だ記憶も生々しい匠ひびきと絵麻緒ゆうの事。湖月も同様に、しかも今度は檀も一緒に2人まとめてと思われたのも当然だったと思う。2人の処遇について何も明言されていなかったにも拘らず、当時早くも一部ではその次は彩輝か安蘭けいか、との議論も密かに始まっていたようにも聞いたし、“このコンビは長くは観られないので、ファンは心して観るように”と明言した某宝塚コラムもあった程だった。個人的には当時劇団四季でブロードウェイ・ミュージカル「アイーダ」も上演されたいた頃で、そんな使い捨てのようなコンビだったとしても、1本立ての随分な大作を持ってきたものだと言うのが正直な感想だった。
8~9月雪組「Romance de Paris/レ・コラージュ」には専科から樹里咲穂が出演。10~11月宙組「白昼の稲妻/テンプテーション!」は、柴田侑宏がシェークスピアの「オセロ」をモチーフにした作品。この頃の宙組は和央ようかと花總まりのコンビが絶大な人気を集めており、周りが霞んでしまう様な雰囲気だった。この「白昼」新人公演では悠未ひろが前作「傭兵ピエール」に続いて連続で主演した。和央がトップに就任してから新人公演での主演は、久遠麻耶・月船さらら・椿火呂花・遼河はるひと毎回違っており、悠未が初めて連続主演となった。この後七帆ひかるも2作連続主演したが、その後は和涼華に早霧せいな。多くの生徒に広く機会をという事だったのかもしれないが、新公主演者からトップに至ったのが退団公演の早霧のみというのは、やはり何がどうした?と思いを止めることができなかった。
11~12月月組「薔薇の封印」は紫吹淳の退団公演で、ヴァンパイアをテーマにしたオムニバス形式の作品。小池修一郎の「ポーの一族」に至るまでの中間点となった。この公演から次期トップ予定で彩輝直が組替えとなり、二番手として出演していた。
バウホールでは1月から3月にかけてバウ・ワークショップとして、「おーい春風さん」「春ふたたび」「恋天狗」が各組の若手によって上演された。宙組は「春風」華宮あいり、「ふたたび」遼河はるひ主演。星組「天狗」涼紫央、「春風」柚希礼音主演。月組「ふたたび」月船さらら、「天狗」北翔海莉主演。雪組「ふたたび」壮一帆、「天狗」音月佳主演。花組「春風」愛音羽麗、「天狗」蘭寿とむ主演。以上当時の若手10人が主演し、半分の5人が後にトップになった。
5月には日生劇場で星組「雨に唄えば」が安蘭けい主演で上演された。主役ドン安蘭に対して友人コズモにこの公演から宙組生となった大和悠河が特出となったが、コメディリリーフとなるべきキャラを普通の二枚目で演じてしまい残念だった。一方でヒロインキャシー陽月華に対する変な声のスター女優リナを、真飛聖が演じて印象を残した。
この年は雪組朝海・舞風と星組湖月・檀の新トップコンビが披露となった一方で月組紫吹が退団と、昨年に引き続き大きな構造変化が続いたとしとなった。