この年初舞台を踏んだ89期生からは、花組トップ明日海りおと雪組トップ望海風斗を始めとして多彩な人材が生まれた。男役スターでは今も専科で活躍中で別箱や全国ツアーで主演実績のある凪七瑠海、一時その凪七と月組のW二番手格だったが後にちゃんと二番手となった美弥るりか、今も男役に拘りを見せる七海ひかる、壱城あすか、蓮城まこと、俳優井上芳雄の妹初輝よしや等。娘役では星組娘役トップの夢咲ねねの他、現在中島亜梨紗の名前でNHK大河ドラマ等で活躍する羽桜しずく、男役から転向した純矢ちとせ、沙月愛奈、白華れみ、愛花ちさき、大月さゆ等がいた。

 

 1~2月雪組「春麗の淡き光に/Joyfull!!」は、朝海ひかると舞風りらの新トップコンビの大劇場披露公演。植田紳爾大先生の新作という事だったが、実際は1973年(S48年)花組甲にしき主演の「新・花かげろう」のリメイクだったらしい。2~3月宙組「傭兵ピエール/満点星大夜總会」に、4~5月月組「花の宝塚風土記/シニョール・ドンファン」。5~6月花組「野風の笛/レヴュー誕生」では専科から轟悠が主演し、春野寿美礼が準主役のような形になった。これ以降暫くの間新トップの二作目か三作目に轟が専科から主演することが恒例化したが、特にトップ生徒のファンの間ではあまり評判はよろしくないようだった。「レビュー」のフィナーレでは先ず轟が初めてのエトワールで登場し、最後に春野が出てきたところで轟が再登場して大羽根を背負った二人が舞台センターに並ぶという形になった。野次馬根性の手前としては、中々豪華な景色がそれなりに楽しいものだった。尚、轟は公演中に劇団理事に就任した。また前公演の「エリザベート」で相手役だった大鳥れいが退団したため、この公演からふずき美世が新しい相手役として春野とコンビを組むこととなった。

 

 7~8月星組「王家に捧ぐ歌」はオペラ「アイーダ」原作で、新トップコンビとなった湖月わたる・檀れいの大劇場披露公演だった。前年に前トップ香寿たつきの退団発表を受けて次期星組トップが誰になるのかがえらい議論となったが、基本的には元々星組生だった湖月と彩輝直のどちらかだろうと言われていた。新専科行となった各組元2番手は、残念ながらワン切りとなってしまった2人を含めて、湖月以外は前年皆トップに昇格していた。一方でしかしながら当時某大御所演出家先生のお気に入りと言われた、彩輝が優勢との見方が大勢を占めていた。ところが蓋を開けて見たら新トップは湖月で、しかもやはり専科生だった檀れいとコンビを組むという。誰もが頭に浮かんだのは未だ記憶も生々しい匠ひびきと絵麻緒ゆうの事。湖月も同様に、しかも今度は檀も一緒に2人まとめてと思われたのも当然だったと思う。2人の処遇について何も明言されていなかったにも拘らず、当時早くも一部ではその次は彩輝か安蘭けいか、との議論も密かに始まっていたようにも聞いたし、“このコンビは長くは観られないので、ファンは心して観るように”と明言した某宝塚コラムもあった程だった。個人的には当時劇団四季でブロードウェイ・ミュージカル「アイーダ」も上演されたいた頃で、そんな使い捨てのようなコンビだったとしても、1本立ての随分な大作を持ってきたものだと言うのが正直な感想だった。

 

 8~9月雪組「Romance de Paris/レ・コラージュ」には専科から樹里咲穂が出演。10~11月宙組「白昼の稲妻/テンプテーション!」は、柴田侑宏がシェークスピアの「オセロ」をモチーフにした作品。この頃の宙組は和央ようかと花總まりのコンビが絶大な人気を集めており、周りが霞んでしまう様な雰囲気だった。この「白昼」新人公演では悠未ひろが前作「傭兵ピエール」に続いて連続で主演した。和央がトップに就任してから新人公演での主演は、久遠麻耶・月船さらら・椿火呂花・遼河はるひと毎回違っており、悠未が初めて連続主演となった。この後七帆ひかるも2作連続主演したが、その後は和涼華に早霧せいな。多くの生徒に広く機会をという事だったのかもしれないが、新公主演者からトップに至ったのが退団公演の早霧のみというのは、やはり何がどうした?と思いを止めることができなかった。

 

 11~12月月組「薔薇の封印」は紫吹淳の退団公演で、ヴァンパイアをテーマにしたオムニバス形式の作品。小池修一郎の「ポーの一族」に至るまでの中間点となった。この公演から次期トップ予定で彩輝直が組替えとなり、二番手として出演していた。

 

 バウホールでは1月から3月にかけてバウ・ワークショップとして、「おーい春風さん」「春ふたたび」「恋天狗」が各組の若手によって上演された。宙組は「春風」華宮あいり、「ふたたび」遼河はるひ主演。星組「天狗」涼紫央、「春風」柚希礼音主演。月組「ふたたび」月船さらら、「天狗」北翔海莉主演。雪組「ふたたび」壮一帆、「天狗」音月佳主演。花組「春風」愛音羽麗、「天狗」蘭寿とむ主演。以上当時の若手10人が主演し、半分の5人が後にトップになった。

 

 5月には日生劇場で星組「雨に唄えば」が安蘭けい主演で上演された。主役ドン安蘭に対して友人コズモにこの公演から宙組生となった大和悠河が特出となったが、コメディリリーフとなるべきキャラを普通の二枚目で演じてしまい残念だった。一方でヒロインキャシー陽月華に対する変な声のスター女優リナを、真飛聖が演じて印象を残した。

 

この年は雪組朝海・舞風と星組湖月・檀の新トップコンビが披露となった一方で月組紫吹が退団と、昨年に引き続き大きな構造変化が続いたとしとなった。

 この年の初舞台生88期生からも様々な人材が誕生した。出世街道をほぼ順調に進み宙組トップとなった朝夏まなと、対照的にほぼ成績最後尾から星組トップへ上り詰めた紅ゆずる、その他春風弥里、蓮水ゆうや、鳳翔大の宙組トリオ、麻尋しゅん、元月組組長光月るう、ダンサー月央和沙に扇めぐむ、退団後に奔放な言動でマスコミを一時僅かに騒がせた華央あみり(ACHO)等がいた。娘役では花組娘役トップの桜乃彩音、新公で主演経験がありながらも男役から転向した大湖せしる、花影アリス、華耀きらり、妃咲せあら、月組副組長だった夏月都、今もネットコラムで活躍する早花まこ等がいた。

 

 1~2月月組「ガイズ&ドールズ」は、改めて紫吹淳と映美くらら新トップコンビ大劇場披露公演となった。個人的には大地真央と黒木瞳の初演の印象が強かったし、特に初演で大人の色気を見せたネイサン役の剣幸に対して大和悠河は何だかベイビーギャングに見えてしまい、少々残念な印象となってしまった。この公演には当時珍しく新専科からの特出がなかったが、紫吹に次ぐ二番手グループとして、大空祐飛、霧矢大夢と大和の3人でシューマッハと呼ばれていたようだ。“くらら”繋がりではあったが映美については、むしろ黒木瞳に似た印象を感じた。

 

 2月東京日生劇場で専科・雪組・花組合同公演「風と共に去りぬ」で轟悠が専科から主演した。その他専科からアシュレー湖月わたるにメラニー檀れいが出演、前半雪組後半花組メンバーで上演され、スカーレットⅠは雪・朝海ひかると花・瀬奈じゅんとなった。

 

 2~3月花組「琥珀色の雨に濡れて/Cocktail」は新トップ匠ひびきの大劇場披露だった。1月にル・テアトル銀座劇場「カナリア」でトップ披露していたが、この劇場公演1作で退団となってしまった。ダンスが得意で安寿ミラ以来のダンサートップとして“ダンスの花組”復活を期待していたので、個人的には非常に残念な退団だった。一旦は相手役に大鳥れいで二番手以下に春野寿美礼・瀬奈じゅんの“オサ・アサ”コンビが続く体制となったが、大劇場公演後に匠が病気に倒れて東京公演前半を休演してしまい、春野が代役で主演することとなった。

 

 4~5月星組「プラハの春/LICKY STAR!」で改めての香寿たつきと渚りらの新トップコンビ大劇場披露となった。香寿は新人時代から派手さは余りないけれど実力はピカイチて、漸くたどり着いたトップの座だった。渚については研14でトップ娘役就任と異例な遅咲きではあったが、1992年雪組「この恋は雲の涯まで」新公と同年バウ公演「セ・ラムール」で香寿とコンビを組んだ経験もあって、非常に安定したコンビネーションを見せてくれた。そして二番手安蘭けいに三番手夢輝のあという体制になったが、この公演には専科から彩輝直が出演した。

 

 5~6月雪組「追憶のバルセロナ/ON THE 5th」は絵麻緒ゆうと紺野まひる新トップコンビの大劇場披露であり退団公演となった。専科から特出した成瀬こうきもこれを持って退団となり、二番手に成瀬の同期の朝海ひかる、三番手に貴城けいという体制だった。という事で、この年の前半4公演は全て専科からの新トップの大劇場披露であり、内2つはワン切りの兼退団公演ということになった。

 

 

 7~8月宙組「鳳凰伝/ザ・ショー・ストッパー」から漸く通常運転となった。「鳳凰」は「トゥーランドット」を原作としたものだった。8~9月月組「長い春の果てに/With a Song in my Heart-君が歌、わが心に深く-」と長いタイトルの二本立て。「長い春」は1996年公開のフランス映画「世界で一番好きな人」を舞台化したもの。「With a Song」は作曲家リチャード・ロジャース生誕100年記念の作品で岡田敬二作・演出。

 

 10~11月花組「エリザベート」は新トップ春野寿美礼の大劇場披露。正に歌が得意だった春野の為の作品となった。エリザベートに引き続きコンビを組んだ大鳥れい。専科から樹里咲穂がヨーゼフ皇帝役となり、二番手瀬奈じゅんはルキーニ役、三番手彩吹真央はルドルフ役に回った。11~12月星組「ガラスの風景/バビロン -浮遊する摩天楼-」は早くも大劇場二作目で香寿・渚の退団公演となり、夢輝も同時退団となった。専科からは初風緑が出演した。

 

 9月には第二回中国公演が星組香寿たつき主演により、上海・北京・広州で行われた。専科からは城火呂絵、初風緑、彩輝直、檀れいの4人が参加し、渚と檀のダブルヒロイン体制での上演となったが、実際には第1回公演で“楊貴妃の再来”と大人気だった檀がメインのようなものだったと聞いている。

 

 この年は漸く新専科騒動が落ち着いてきた一方で、その影響で前半月/紫吹・花/匠・星/香寿・雪組/絵麻緒の4組に加えて専科/轟も含めた連続トップ披露となったが、花と雪がワン切りとなったために花組は更に春野の新トップと続き、香寿は大劇場2作目(東京公演は3作品)で退団というなんとも落ち着かない1年となった。

 21世紀になって最初の初舞台生87期からは月組トップ龍真咲、雪組トップ早霧せいなが出たが、その他男役スターとして最後は専科生として男役女役自在にこなす役者となった沙央くらまや夢乃聖夏、月組副組長だった綾月せり、長く星組で活躍した鶴美舞夕、日向燦等がいた。後月組に麻月れんかという生徒がいたのだが、姓と名前両方とも在団中に逝去された方のものでどんな意図で付けた芸名なのか不思議に思っていた。娘役では長く星組の歌姫として活躍した音花ゆり、和音美桜、晴華みどり、咲花杏等がいた。

 

 1~2月星組「花の業平/夢は世界をか翔けめぐる」では新専科騒動の後薄くなった中堅クラス補強のために、雪組から安蘭けいが、宙組から夢輝のあが組替えしてきたものの、結局2番手以下の中堅処の役を香寿たつき、絵麻緒ゆう、初風緑の新専科生が演じることとなった。又1月にとうとう新東京宝塚劇場が開場し、月組で東京が初演となる「いますみれ花咲く/愛のソナタ」が杮落し公演となった。2~3月雪組「猛き黄金の国/パッサージュ」でも2・3番手のところに絵麻緒ゆうと湖月わたるが入った。「猛き」は本宮ひろ志作の青年漫画が原作で、2010年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」を先取りして主人公を岩崎弥太郎にしたようなお話。8月博多座公演「凱旋門」の後に成瀬こうきが専科へ組替えとなった。

 

 4~5月宙組「ベルサイユのばら2001<フェルゼンとアントワネット編>」が上演される一方で、同時期に星組東京公演はこれが初演となった「ベルサイユのばら2001<オスカルとアンドレ編>」という、春の東西「ベルばら」同時上演祭りが絶賛開催された。宙組ではオスカルとアンドレを専科生彩輝直と宙組生水夏希で交代するWキャストだったが、星組はアンドレに香寿たつき、湖月わたる、樹里咲穂の専科生Tキャストとなった。

 

 5~6月月組は真琴つばさの退団公演となって、東京で初演された「愛のソナタ」とショー「ESP‼」が上演された。この公演で紫吹淳が次期トップ予定で専科から組替えとなった一方で、檀れいはこの公演後に専科へ移動となったが、この組替えは新専科とは異なるものでこの後9~10月に芸術座に外部出演することとなった。7~8月花組「ミケランジェロ/VIVA!」は愛華みれの退団公演だったが、愛華は前作に続いて女性にあまり興味がない歴史上の有名人を演じることとなった。相手役の大鳥れいも流石に二作続けて“幻”となるわけにもいかず、今回は生身の人間を演じることとなった。この公演から匠ひびきが次期トップ予定で専科から花組へ復帰した。

 

 8~9月星組「ベルサイユのばら2001<オスカルとアンドレ編>」は4月に東京初演となったもので、稔幸と星奈優里の退団公演となった。「ベルばら」のオスカルとアンドレが中心のお話はそれまでも何度か上演されてきたが、サブタイトルは91年月組の「オスカル編」以外は「アンドレとオスカル」で、「オスカルとアンドレ」となったのはこの時が初めてだった。この公演では東京で専科から特出だった香寿たつきが、次期トップ予定で専科から星組へ組替えとなってそのまま出演した。8~9月月組東京公演「大海賊/ジャズマニア」は専科からの紫吹淳と映美くららの新トップコンビ披露公演となった。

 

 10~11月雪組「愛 燃える/Rose Garden」が轟悠の雪組トップとしての最後の作品となり、公演後に専科へ移動となった。又月影瞳はこの公演が退団公演となった。。この公演では次期トップ予定で、専科からは絵麻緒ゆうが組替えとなっていた。「Rose」はロマンチック・レビュー第14弾。この後轟が専科から各組公演に特出して主演し“トップスター”6人体制になったになった頃からか、宙組が誕生した頃からかははっきり覚えてないが、劇団が2000年前後から公式の場で“トップ”という言葉を使わなくなり、“主演男役”と表現するようになったと思う。最近は又“トップスター”と言うようになったけど、一時期は何か納まりの悪い感じがしていたものだった。11~12月宙組「カステル・ミラージュ/ダンシング・スピリット」に専科から湖月、伊織直加、成瀬が出演。11~12月星組東京公演「花の業平/サザンクロス・レビューⅡ」は、専科からのトップ就任となった香寿たつきと渚りらの新コンビ披露公演となった。

 

 この年は春に「ベルばら」東西同時上演で話題を取ったものの、その影響で公演形態がかなり変則的となった。月・真琴つばさ、花・愛華みれ、星・稔幸の3人が退団、雪・轟悠が専科へ移動と71期生の同期トップ4人全員が皆交代したが真琴と稔は大劇場公演で退団となった。結果として代わりに新専科組の紫吹淳と香寿たつきの72期生コンビが新トップ就任したが、両人とも東京で披露公演を実施することとなった。娘役も檀れいが専科行、月影瞳と星奈優里は退団、映美くららの新トップ娘役就任と、宙組以外の4組で大きな変化が起きた年だった。

 

  この年初舞台生86期からは宙組トップ凰稀かなめ宙組娘役トップ陽月華の他、男役では緒月遠麻、月組から専科へ移動し長く活躍した星条海斗、彩海早矢、和涼華、望月理世、紫峰七海がいた。娘役では月組組長から宝塚ホテルの支配人へ転身した憧花ゆりの、城咲あい、花野じゅりあ等がいた。

 

 年明け1~2月宙組「砂漠の黒薔薇/GLORIOUS!!」は姿月あさとの退団公演となった。98年宙組が誕生し初代トップとなってから僅か2年での退団はあまりにも早すぎる印象だったが、新たな組を立ち上げトップとしてまとめ上げるということが凄いプレッシャーとなって、それに疲弊してしまったのかなと想像していた。「GLORIOUS!!」は演出家藤井大介の大劇場デビュー作だった。2~3月月組「LUNA‐月の伝言‐/BLUE・MOON・BLUE」で「LUNA」は小池修一郎作品だったが、作品解説を見ると何やらSFチックでとっ散らかった様子。「B・M・B」は演出家齋藤吉正の大劇場デビュー作品だった。

 

 4~5月花組「源氏物語 あさきゆめみし/ザ・ビューティーズ!」も「あさき」は漫画版「源氏」を原作の草野旦が演出。公演ポスターでは二番手匠ひびきが金髪巻き毛の平安貴族に扮していて、かなりぶっ飛んでいた様子。ただ光源氏は愛華みれの持ち味であるノーブル感が上手くマッチしていた。5~6月星組「黄金のファラオ/美麗猫<ミラキャット>」で、97~99年にかけて新公に連続主演していた若手エースだった音羽椋が退団となり結構驚いた記憶がある。

 

 この公演中6月1日付けで各組2、3番手全員が専科へ移動するという驚愕の組替えが発表となり、ファンに阿鼻叫喚の大混乱を巻き起こした。所謂“新専科”騒動が勃発したのだった。花組から匠ひびきと伊織直加、月組から紫吹淳と初風緑、雪組から香寿たつきと汐風幸星組から絵麻緒ゆうと彩輝直、宙組から湖月わたると樹里咲穂の計10名が専科に組み換えとなり、更に後で雪組から成瀬こうきも専科入りし、各組公演の2・3番手役で随時出演することになった。この為その後数年は各組の独自カラーが薄れることになった様に思う。この仰天人事の仕掛人である植田紳爾大先生が後年に日経新聞に連載された「私の履歴書」で、当時の生徒に路線に乗って番手が付けば後は順番でトップになれるというような雰囲気が漂っており、そのような状況に気合を入れたかったという様なことを語っていたが、個人的には移動した生徒の次の世代である77期生の春野寿美礼や朝海ひかるを、早くトップに据えるための荒療治だったと思っている。

 

 又6月下旬から7月にかけて専科へ移動したばかりの紫吹淳主演でドイツ・ベルリン公演が実施された。この時の第二部のレビューの冒頭で、1975年ヨーロッパ公演「ビート・オン・タカラヅカ」の逆立ちヨガのシーンが再現された。

 

 7~8月雪組「デパートメント・ストア/凱旋門」では、専科移動の発表直後だったために大劇場では香寿と汐風幸は従来通りの位置づけで出演した。又ベルリン公演が重なったこともあり、「凱旋門」では新公ではなく役替わり公演が当時研10の朝海ひかるが主演して実施された。朝海は花組時代新公では専ら当時2番手だった愛華みれの役で出演しており、主役経験がなくトップになった唯一の生徒となったが、一応この役替わり公演主演で形を整えたということだろうか。又「デパートメント」は演出家正塚晴彦の初ショー作品だった。尚大劇場の後、香寿は東京公演には出演せず、安蘭けいは星組へ移動となった。

 

 8~9月宙組「望郷は海を越えて/ミレニアム・チャレンジャー」は、新トップ和央ようかの大劇場披露公演だったが、和央がトップになったと同時に専科行きとなった2・3番手の湖月と樹里は従来の位置付けでの出演となったが、6月のベルリン公演の後で水夏希が花組から組替えとなって来た。10~11月月組「ゼンダ城の虜/Jazz Mania」には新専科から香寿と初風が出演。11~12月花組「ルードヴィッヒⅡ世/Asian Sunrise」に新専科から匠と伊織が出演。「ルードヴィッヒ」は愛華みれ演じる主人公が女性を愛せないキャラなので、相手役の大鳥れいは“幻”として様々な形で登場するという極めて宝塚的な“ロマンティズム”を見せることとなった。「Asian」は岡田敬二ロマンチック・レビュー第13弾。

 

 この年は“新専科騒動”という大騒ぎに揺れた年となったがその後の状況を追ってみると、花組は匠はワン切りだったが花トップ、残った春野寿美礼、瀬奈じゅん、水夏希、蘭寿とむも各組でトップ就任となった。月組は紫吹が月トップ、残った大和悠河、大空祐飛、霧矢大夢もトップ就任。雪組は香寿が星トップで、残った安蘭けい、朝海ひかる、貴城けいがトップ就任と、この3組については当時の中堅路線スターの充実振りが目立った。一方で星組は絵麻緒と彩輝二人共雪トップと月トップとなったが、中堅以下では当時新公に主演していた真飛聖が花トップになったに留まり、宙組に至っては湖月が星トップになったものの、残留組からはトップが出ずと対照的な結果に終わった。

 

 この年の初舞台生85期生からも様々な生徒が活躍した。先ず星組トップとして長らく活躍した柚希礼音、月組娘役トップ映美くららを筆頭に、男役には現役生で雪組組長奏乃はると、花組から専科で長く活躍した華形ひかる、彩輝直の妹でAQUA5のメンバーだった彩那音、七帆ひかる、真野すがた、天霧真世、青樹泉、十輝いりす等も活躍した。神月茜は退団後にAKANE LIVとして舞台やシンフォニックメタルバンドLIV MOONのVoとして活動している。娘役には美羽あさひ、桜一花、高宮里菜、舞咲りん、山科愛、音乃いずみ、南海まり等が活躍した。

 

 年明け1~2月花組「夜明けの序曲」は新トップ愛華みれの大劇場披露で、1982年芸術祭大賞を受賞した松あきら退団公演の再演となった。相手役に大鳥れい、二番手匠ひびき、三番手伊織直加という体制でのスタートだった。初演時専科から出演した岸香織、松本悠里、城火呂絵が同じ役で再出演したが、長く歌劇誌に『聞いて頂戴こんな話』を連載して様々な生徒との交流を綴ってきた岸はこの公演をもって退団となった。退団後に出版した本でかの胴切事故の詳細を読んだ時は、非常な衝撃を受けた。あの事故に絡んで旧大劇場での怪談話もいくつかあったようだが、新劇場になってからはどうなのだろうか?そして2~3月星組「WEST SIDE STORY」が再演された。先の月組新人公演ではトニーとマリアがWキャストだったが、星組では朝澄けいと秋園美緒が通しで演じた。

 

 4~5月雪組「再会/ノバ・ボサ・ノバ」で、とうとう念願だった「ノバ」を生の舞台で鑑賞することができた。思えばその26年前に花組安奈淳主演の「ノバ」をTVで見て衝撃を受けて以来ずっと宝塚歌劇を気にし続けてきた理由は、いつか「ノバ」を実際の舞台を鑑賞できるかもしれないという期待があったからかもしれない。そんな思いを胸に劇場へと向かったのだった。ソール轟悠、エストレーラ月影瞳、オーロ香寿たつきに、マールを当時雪組ダンゴ三兄弟と呼ばれていた安蘭けい、朝海ひかる、成瀬こうきのトリプルキャスト、ブリーザを安蘭と朝海、メール夫人を朝海と成瀬がそれぞれWキャストということも話題となった。この時一緒に観劇した友人は音楽関連の仕事をしていたのだが、1000days劇場での公演が録音であったにもかかわらず生徒の歌い出しと音楽のタイミングが良く合っていたこと、特に香寿は完璧に合わせていたと感心していた。尚、この時併演された芝居「再会」は「ノバ」の添え物的な作品だったが、意外と好評でその後全国ツアーで二度ほど再演された。

 

 5~6月月組「螺旋のオルフェ/ノバ・ボサ・ノバ」で「ノバ」」が続演となり、ソール真琴つばさに対してエストレーラ檀れい、オーロ紫吹淳という布陣で上演された。当時トレンディドラマで話題となっていた浅野ゆう子と浅野温子の“W浅野”にあやかって、先の花組新トップ娘役大鳥れいと月組の新トップ娘役檀れいを合わせて“Wれい”と劇団ははしゃいでいたが、檀に対する大バッシングで劇団㏋が大騒ぎになったことは先に述べた通り。この時出世役といわれたドアボーイを演じたのが当時未だ研2だった北翔海莉だった。

 

 7~8月宙組「激情/ザ・レビュー’99」の「激情」は再び柴田侑宏脚本・謝珠栄演出コンビで「カルメン」を原作とした作品。その後全国ツアーで再演されている。「レビュー」は1977年上演「ザ・レビュー」の再演という事だったが、初演では3人の演出家により三部に分かれていたものを今回は岡田敬二が単独で演出し、前回の80人のラインダンスや「夢人」の再現を織り込みながら、オーソドックスなグランドレビューとなった。

 

 8~9月花組「タンゴ・アルゼンチーノ/ザ・レビュー’99」で「ザ・レビュー」が又しても続演となった。「タンゴ」は80~90年代にかけてブロードウェイで同名の「タンゴ・アルゼンチーノ」というショーがヒットし、来日公演もあって観に行ったのだが、以前「JFK」の時と同じく全く同じタイトルの公演に少々違和感を持った。

 

 10~11月星組「我が愛は山の彼方に/グレイト・センチュリー」の「我が愛」は、先に同年5月に開場した博多座で上演後に改めて大劇場で上演となった。11~12月雪組「バッカスと呼ばれた男/華麗なる千拍子’99」の「千拍子」は1960年初演で寿美花代がパイナップルの女王となって評判を呼んだ作品の再演。轟悠がパイナップルの女王に扮しておみ足を露出するかと戦々恐々としながら観に行ったがそれは無かった。ただ“幸せを売る人”の大パレードの再現はその迫力に圧倒された。

 

 バウホールではこの年バウ・シェイクスピアシリーズとして、年間を通じてシェイクスピア作品が連続上演された。春野寿美礼バウ初主演となった3月花組「冬物語」を皮切りに月組「から騒ぎ」、花組「ロミオとジュリエット’99」、月組「十二夜」、星組「夢・シェイクスピア」、宙組「TENPEST」、雪組「SAY IT AGAIN」、星組「エピファニー」と続いた。

 

 10~11月には中国北京・上海公演が月組主体で実施され、檀れいが“楊貴妃の再来”とその美貌で大評判を呼んだ。

 

 この年は退団者が続いた前年と反対に、花組愛華・大鳥コンビ誕生したことで月組真琴、雪組轟、星組稔と4組で71期生トップが並び立つこととなった。ただし真琴と新しくコンビを組んだ檀については国内では大バッシングを受ける一方で中国では大絶賛をうけるという、毀誉褒貶が激しい一年となっていた。作品としては「夜明けの序曲」「ノバ・ボサ・ノバ」「ザ・レビュー’99」「華麗なる千拍子’99」とショーを中心とした再演と続演が目立った。