初舞台生の94期生からは天海祐希に次ぐ9年目でのトップ就任が話題になった珠城りょう。現役では花組羽立光来、舞月なぎさ、雪組の久城あすが活躍中。その他元プロ野球監督・広岡達郎の孫の麻央侑希、星組のダンサーだった漣レイラ、花組のシンガー和海しょう等がいた。娘役では明日海りおの3代目相手役、新公ヒロインの経験がなく9年目でのトップ娘役就任が話題となった仙名彩世に、現役では雪組に杏野このみがいる。その他早乙女わかば、華雅りりか等がいた。

 

 1~2月雪組「君を愛してる/ミロワール」の後、2~3月宙組「黎明の風/Passion 愛の旅」は専科から轟悠が主演となって白洲次郎を演じ、大和悠河がダグラス・マッカーサー!当初ポスターを見る限りかなり無理があるように見えたが、幕が上がってみると舞台上の立ち姿はそれなりに嵌っていたとか。この公演では陽月華が休演となり、代役で和音美桜がヒロインとなる白洲の妻正子を演じた。吉田茂を汝鳥伶が演じて、これは予想通りのはまり役だったとか。3~4月月組「ME AND MY GIRL」はサリー彩乃かなみの退団公演となった。ビル瀬奈じゅん、ジョン卿霧矢大夢、ジェラルド遼河はるひに対してマリア公爵夫人に出雲綾、ジャッキーに明日海りおと城咲あいのWキャストとなり、パーチェスター未沙のえるは1987年初演以来の復帰となった。新人公演では明日海が初主演を飾った。

 

 5~6月花組「愛と死のアラビア/Red Hot Sea」は新トップ真飛聖の大劇場披露公演となり、相手役に引き続き桜乃彩音、二番手大空祐飛、三番手壮一帆という体制となった。大空は真飛よりも3期上で、「過去に上級生の二番手がトップになったこともあり、今後は未だ判らない」という様な発言が劇団側からあったと記憶している。しかしながら久世星佳については天海祐希が余りにも早くトップとなり、予想外に早く退団したため止むを得ずという事情があった。一方で大空については月組で2期下の霧矢に抜かれて花組へ移動となり、二番手とは言え3期下のトップの下に付くとなるとその次があるとも当時は思えなかった。大空はかつての麻実れいに似た雰囲気も感じさせるクールビューティで、個人的には贔屓な生徒だったので、そう考えざるを得ないことは非常に残念だった。

 

 7~8月星組「THE SCARLET PIMPERNEL」はブロードウェイミュージカルの宝塚版だが、新公で紅ゆずるが研7のラストチャンスで主役を射止めその後トップまで上り詰めたのは承知の通り。1979年花組で同じ原作を舞台化した「紅はこべ」が上演されており、この時はパーシー松あきら、マルグリッド北原千琴、ショーブランみさとけいという配役だった。また、これが初めてのフランク・ワイルドホーン音楽の作品となった。8~9月雪組「ソロモンの指輪/マリポーサの花」の「ソロモン」をもって演出家荻田浩一が退団となった。また「マリポーサ」新公では、後に娘役に転向する大湖せしるが主演した。

 

 10~11月宙組「Paradise Prince/ダンシング・フォー・ユー」では「Paradise」の劇中で使うキャラクターを公募するなど、大プッシュでトップに押し上げた大和を盛り立てようと試みている様子が見て取れたが、和央の退団以降貴城のワン切り退団もあったせいなのか、当時の宙組は何となく勢いに欠ける感じがしていた。11~12月月組「夢の浮橋/Apasionado!!」の「浮橋」は源氏物語の“宇治十帖”の舞台化で、演出家大野拓史の大劇場デビュー作。かつて1973年に星組で同じく“宇治十帖”に基づく「浮舟と薫の君」が薫/安奈淳主演で上演されたが、今作では匂宮/瀬奈が主人公となり薫/霧矢に対して、ヒロイン浮舟に星組から組替えとなっていた羽桜しずくが抜擢された。しかし瀬奈と羽桜がコンビとなるのかと思ったらそうではなかったようで、瀬奈はこの後相手役不在のままで行くことになった。また瀬奈の下の新公でずっと二・三番手の役を演じてきたのが光月るうで、最後の新公となった本公演では薫(霧矢)を演じ、その10年後に副組長、組長に就任することとなる。

 

 バウホールでは再びバウ・ワークショップとして、各組2人づつの主演とそれぞれのバージョンでの上演が試みられた。1月月組「ホフマン物語」を明日海りおと青樹泉、2~3月花組「蒼いくちづけ」を真野すがたと朝夏まなとで上演。4月星組「ANNA KARENINA」は夢乃聖夏と麻尋しゅんでの上演となったが、夢乃バージョンで紅ゆずるがカレーニンを演じ、これが切っ掛けとなってその後の活躍に至ることとなった。5~6月雪組「凍てついた明日」では主演の凰稀かなめに対して、愛原実花と大月さゆの2人のヒロインバージョンでの上演。6~7月宙組「殉情」は早霧せいなと蓮水ゆうやでの上演となった。

 

 全国ツアーでは「外伝ベルサイユのばら」シリーズが、5~6月雪組「ジョローデル編」、9~10月花組「アラン編」、11~12月星組「ベルナール編」として上演された。

 

ここ数年来続いて来たトップの交代劇が漸く落ち着きついてきたが、バウ公演や全国ツアーで多彩な試みが目立った1年となった。

  この年の93期生で未だ現役なのは雪組トップの彩風咲奈と、8年間二番手を務めた後漸くトップにたどり着いた芹香斗亜の2名。芹香の母親は65期の白川亜樹で、初めてOGの娘がトップになった。男役には宙組から専科・星組と渡り歩き最後は二番手での退団となった愛月ひかる、3回新人公演に主演した蒼羽りく、花組副組長だった航琉ひびき、大河凛、十碧れいや、星吹彩翔等がいた。娘役には雪組トップだった舞羽美海がおり、桜咲彩花、花陽みら、夢妃杏瑠、瀬音リサ、TVのカラオケ番組で活躍した七瀬りりこの他に、退団後大人向けビデオに出演して話題となった水瀬千秋もいた。

 

 1~2月月組「パリの空よりも高く/ファンシー・ダンス」では龍真咲が新公で初主演を飾った。「ファンシー」の作・演出は三木章雄だが、この人のデビュー作「ファンシー・ゲーム」は当初タイトルを“ファンシー・ダンス”にしようとしたが、先に同名の舞台か映画があり当時過去に同名のタイトルがある場合は避けるように、という方針があったために「ゲーム」になったという話を読んだか聞いた記憶あるのだが、その後はあまり気にしていないようだ。

 

 2~3月花組「明智小五郎の事件簿‐黒蜥蜴/TUXEDO JUZZ」では春野寿美礼の明智小五郎に対して、桜乃彩音が緑川夫人こと怪盗黒蜥蜴に扮した。江戸川乱歩の原作から時代設定等が大きく改変されて、黒蜥蜴も“夫人”なのに処女というよく判らないキャラになっていた。極めて個人的な見解になるが、桜乃自身も“娘役”というよりは“女役”と言いたい雰囲気の、今までのトップ娘役とは随分異なる印象を感じていた。年初に彩吹真央が雪組へ組み替えになっていたので、この公演から真飛聖が二番手に昇格し花組から戻った壮一帆と愛音羽麗が続く体制となった。

 

 この年は、ここから新トップの披露が3公演続くこととなった。4~5月「さくら‐妖しいまでに美しいおまえ/シークレット・ハンター‐この世で、俺に盗めぬものはない」で、16年目と当時の最長記録を作ってトップに就任した安蘭けいの大劇場披露公演は、タイトルだけ見ると内容が想像できる様なできない様な良く判らない公演だった。安蘭は遠野あすかとコンビを組み、二番手には前トップ湖月わたるの下、退団公演以外の5公演の新公に主演した9年目の柚希礼音となり、三番手格で立樹遥と涼紫央が並ぶかたちとなった。

 

 5~6月雪組「エリザベート」が水夏希の大劇場披露となって、相手役に星組から組替えとなった白羽ゆりとコンビを組んだ。二番手には彩吹真央、三番手に音月桂という体制となった。しかし水はどちらかと言えば前トップの朝海ひかるに続いてダンスの人で、個人的には「エリザ」はむしろ歌が上手かった安蘭で星組の方が相応しかったのではないかと思っていた。7~8月宙組「バレンシアの熱い花/宙 FANTASISTA!」は大和悠河の大劇場披露となって、相手役には「雨に唄えば」で共演した陽月華が星組から来てコンビとなり、二番手に蘭寿とむ、三番手に北翔海莉という体制になった。「バレンシア」は初演の榛名由梨・瀬戸内美八・順みつきという大劇場主演経験のある3人に対して、小松美保・舞小雪とやはり主演経験のある2人と当時伸び盛の北原千琴という、超強力なキャストのイメージが強烈すぎて、大和・蘭寿・北翔に陽月・美羽あさひ・和音美桜ではスケールが違いすぎると当時は勝手に思っていた。後に蘭寿と北翔もトップになったし、美羽・和音も後に良い娘役になったので失礼申し上げてしまったが、当時は勝手にそんな風に思ってしまったのでした。

 

 8~9月月組「MAHOROBA -遥か彼方YAMATO/マジシャンの憂鬱」の「MAHOROBA」では、OGで初めて謝珠栄が作・演出・振付全てを一人で担当した。「マジシャン」では新公で龍・明日海コンビが再び活躍した。10~11月花組「アデュー・マルセイユ/ラブ・シンフォニー」は春野寿美礼の退団公演となった。11~12月星組「エルアルコン‐鷹/レビュー・オルキス」の「エルアルコン」は漫画原作のピカレスク・ロマン。

 

 バウホールではバウ・ワークショップとして、1月星組、2月雪組、3月宙組、5月月組、6月花組で「ハロー!ダンシング!」が上演されたが、各組とも特に主演者を定めずに若手ダンサーに機会を与える舞台となった。また併せて上演された1月星組「Hallelujah GO!GO!」で柚希礼音が、2月雪組「ノン ノン シュガー‼」で音月桂が、6月花組「舞姫」で愛音羽麗がそれぞれバウ初主演を果たした。年末12月から翌2008年1月にかけて月組「HOLLYWOOD LOVER」で主演した大空祐飛は、花組に組替えとなった。

 

 

 この年は星組・安蘭けい、雪組・水夏希、宙組・大和悠河と3人の新トップが誕生し、花組トップの春野寿美礼が退団と前年からの構造変化が続いた年となった。

 この年の92期生くらいから、未だ現役で頑張っている生徒が増えてくるが、男役トップで先頃退団した宙組トップの真風涼帆がいた。現役生では月組二番手の鳳月杏、宙組組長松風輝、専科の凛城きら、雪組の真那春人、星組の輝咲玲央がいる。その他にも彩凪翔、煌月爽矢、宝塚の佐藤二朗と異名をとったほどおじさん芸を極めた一方でタンバリン芸人とも呼ばれた天真みちるもいた。娘役では花組トップだった蘭乃はなと双子の妹すみれの麗、渋く脇を固めた鞠花ゆめ、ダンサー透水さらさ、元関脇逆鉾の娘天咲千華、現在藤岡沙也香の名で女優の月野姫花、ハウステンボス歌劇団の創立メンバーとなった愛那結梨等がいた。この年主席だったのが百千糸(ももち いと)という名の生徒だったのだが、古臭いのか、突飛なのか、変わっているのか、とにかく不思議な芸名だったので妙に印象に残っている。

 

 1~2月星組「ベルサイユのばら~フェルゼンとマリー・アントワネット編」は、湖月わたるフェルゼンに対して白羽ゆりのアントワネットで新トップコンビの披露となった。オスカルに月組から大空祐飛と霧矢大夢、雪組から朝海ひかる、貴城けい、水夏希の5名が特出し安蘭けいのアンドレでの上演となったが、東京公演ではオスカル安蘭にアンドレ立樹遥と柚希礼音となった。2~3月雪組「ベルサイユのばら~オスカル編」ではオスカル朝海ひかるにアンドレ貴城けいと水夏希に加えて湖月わたる、春野寿美礼、瀬奈じゅんが特出となった。東京では貴城・水に安蘭けいの特出となった。その他ジョローデルが貴城と壮一帆、アランが水と音月桂のWキャストとなった。水は貴城の1期下で、宙組から雪組へ組替えとなった当初は貴城に次ぐ三番手の位置づけだったが、気づけばこの頃貴城とほぼ同格扱いとなっており、この公演後に貴城は宙組へ組替えとなって水が二番手の座を取って代わったようなことになっていた。

 

 前年にとうとう退団を発表した和央ようかが、2005~06年にかけて予定していたドラマシティ公演「W‐wing」上演中に、和央のフライング装置がはずれて転落した負傷事故によって1月中と東京公演が中止となった。退団公演となった4~5月宙組「NEVER SAY GOODBYE」も一時は上演が危ぶまれる場面もあったようだが、ダンス場面をほとんど削ってなんとか上演に漕ぎつけることができた。この作品が出会いとなって音楽担当の作曲家フランク・ワイルドホーンと和央が後に結婚まで至った事は今更言うまでもない。

 

 5~6月月組「暁のローマ/レ・ビジュー・ブリアン」には轟悠が専科から特出で主演。新人公演には星条海斗が主演したが、二番手役に龍真咲、三番手役に明日海りおが上って来た。7~8月花組「ファントム」とこの年ここまでの5公演中4公演が1本立てという状況に、ショーが見たいという声が上がっていたことをと記憶している。又この公演後2007年初頭に、二番手だった彩吹真央が雪組へ組替えとなった。

 

 この年後半は、一転して退団公演が3本連続することとなった。先ず8~9月星組「愛するには短すぎる/ネオ・ダンディズム!」は湖月わたるの退団公演。「愛する」は小林公平元理事長が原案で、主題歌の作詞も担当した。「ネオ」は岡田敬二作ロマンチック・レビューシリーズ第18弾で1995年花組真矢みき主演「ダンディズム!」の続編。10~11月雪組「堕天使の涙/タランテラ!」は朝海ひかる・舞風りらの退団公演。朝海は「堕天使」では堕天使ルシファー、「タランテラ」では毒蜘蛛といずれも人間でない役でのサヨナラとなった。この公演後に花組から組替えとなった彩吹と入れ替わりに、壮一帆が再び花組に復帰することとなった。

 

 11~12月宙組「維新回転・龍馬伝!/ザ・クラシック」は貴城けいと紫城の退団公演となったが、それに先立つ8月宙組博多座公演は新トップコンビ貴城と紫城の披露公演で、紫城は鮎ゆうき以来12年振り男役から転向してのトップ娘役だった。二番手大和悠河に三番手蘭寿とむという体制になったはずだったが、次の大劇場公演をもってトップコンビ同時退団となることが発表された。2002年の匠ひびきと絵麻緒ゆう以来のワン切退団であり、貴城の退団記者会見での不穏な発言もあってファンの間では一時騒然とした雰囲気になっていた。「龍馬伝」は1989年と96年に真矢みき主演「硬派・坂本龍馬」の大劇場公演バージョン。

 

 バウホールでは若手育成のために、2003年以来のバウ・ワークショップとして当時の若手演出家藤井大介と齋藤吉正が担当するショー「Young Bloods!」が各組で企画され、2月月組藤井作・演出、龍真咲主演、3月花組齋藤作・演出、桐生園加主演、5月星組藤井作・演出、柚希礼音主演、7月雪組齋藤作・演出、凰稀かなめ主演、9月宙組藤井作・演出、十輝いりす主演で上演された。また、東京特別公演として「THE LAST PARTY」が2月宙組大和悠河主演で、3月月組大空祐飛主演で上演された。日生劇場では10月月組「オクラホマ!」が専科から轟悠が特出主演、ヒロイン城咲あい、二番手霧矢大夢での上演となった。

 

 12月ドラマシティ公演は、星組の新トップコンビ安蘭けいと遠野あすかの披露公演「ヘイズコード」となった。遠野は宙組配属後に花組へ組替えとなったが、2006年に専科へ移動し6月星組と8月宙組の「コパカバーナ」に同じくコンチータ役で出演、安蘭と大和とそれぞれ相手役を演じた後に星組に組替えとなって、改めて安蘭とコンビを組むことになった。遠野の専科行は檀の時とは異なり、安蘭と大和それぞれとの相性を見るためのものだったと思う。

 

 この年は「ベルばら」から始まった前半の1本立て連続から移転し、後半は湖月・朝海・貴城の連続の退団公演。しかも貴城のワン切退団に安蘭のトップ就任と話題に富んだ1年となった。

 

 この年の91期生からも前年に続き男役のトップは誕生しなかったが、専科の紫門ゆりや、星組の大輝真琴、雪組副組長透真かずきの3名が今も活躍中。その他星組で長く活躍した天寿光希、宙組の澄輝さやと、花組の鳳真由等がいた。娘役は夢咲ねねと姉妹同時トップを達成した愛加あゆ、宙組で“リアル北島マヤ”を異名を取った野乃すみ花の二人がトップとなった。現在月組副組長を務める白雪さち花の他に、藤咲えり、稀鳥まりや、音波みのり等がいた。

 

 1~2月宙組「ホテル ステラマリス/レビュー伝説」の「レビュー」は“モンパリ誕生77周年”記念作品で、「モンパリ」が宝塚からパリへ旅するという設定に対して、パリから宝塚へ戻るという設定の作品だった。2~3月月組「エリザベート」は彩輝直の退団公演となった。彩輝トートに対してエリザベート役は、当時花組二番手だった瀬奈じゅんが特出し、専科の初風緑がヨーゼフ、霧矢大夢ルキーニに大空祐飛ルドルフという配役となった。当時公演ポスターの瀬奈に対して“妖しい美しさ”という声が上がる一方で、“なんだかニューハーフみたいな…」という囁きも一部から漏れてきた。改めてポスターを見てみたのだが、瀬奈だけでなく彩輝も結構な様子で、彩輝トートが後ろから瀬奈シシィを抱く構図はいろいろな意味で”妖しい“雰囲気に溢れたものだった。個人的にはエリザベートという役は、「ベルばら」のアントワネットのように、あくまで娘役の牙城としておいて欲しかった。版権等によるタイミングもあると思うが、演じるに相応しい娘役が存在する状況での上演が望ましいと思っているのだがどうだろう。

 

 4~5月花組「マラケシュ・紅の墓標/エンター・ザ・レヴュー」では、二番手瀬奈が抜けた後を専科から樹里咲穂が埋めて、その後に彩吹真央と蘭寿とむが続く体制となっていた。5~6月星組「長崎しぐれ坂/ソウル・オブ・シバ‼」では轟悠が専科から主演したが、檀れいはこれで退団となった。檀は退団後に映画「武士の一分」で主演木村拓哉の妻役で出演し注目を集めたが、個人的には「しぐれ坂」の芸者役の好演が出演の切っ掛けになったのではないかと思っている。スタート当初は泡沫のように言われた湖月わたるとのコンビだったが、トップコンビとして十分な成果を上げての卒業だったと思う。以前も記したが彼女のその後の芸能界での活躍をみても、ただの美人さんではなく根性の座った気力のある“女優”なのだと思う。

 

 7~8月雪組「霧のミラノ/ワンダーランド」で宙組から水夏希が組替えとなって、当初は貴城けいに続く三番手となった。8~9月宙組「炎にくちづけを/ネオ・ヴォヤージュ」和央ようか・花總まりがコンビ絶好調だったが、個人的にはなんとなく二人が、周囲を置いてけぼりにしつつあるような感じがしてきていた。10~11月月組「JAZZYな妖精たち/REVUE OF DOREAMS」は前作で花組から特出した後、そのまま組替えとなって新トップに就任した瀬奈じゅんの大劇場披露公演。霧矢が大空を抜いて二番手となり、瀬奈と同期の大空が三番手となった。。相手役には宙組で娘役の二番手だった彩乃かなみが組替えとなってコンビを組んだが、ダンスの瀬奈と歌の彩乃というコンビが個人的には意外な感じがしたのを覚えている。この頃よりもう少し後のことだったと思うが、TVで瀬奈に密着した番組が放送されたところ、随分と素っ気ない印象だったのに驚いた記憶がある。11~12月花組「落陽のパレルモ/ASIAN WINDS!」でふづき美世が退団となり、またこの公演から真飛聖が星組から組替となって二番手彩吹に続く三番手となり、蘭寿がそれに続く体制となった。尚、「ASIAN」はロマンチック・レビュー第16弾。

 

 バウホールではこの年開場当初の理念に立ち戻って、若手育成の観点から中堅中心の公演を若手が引き継いで続演するという形式での公演が行われた。1~2月花組「くらわんか」は蘭寿とむと愛音羽麗。この中堅組で華形ひかるが演じた貧乏神が、後年2018年星組「ANOTHER WORLD」に再登場したのは有名な話。2~3月星組「それでも船は行く」涼紫央と柚希礼音、4~5月雪組「さすらいの果てに」壮一帆と音月桂、5~6月宙組「Le Petit Jardin」遼河はるひと悠未ひろ、7~8月月組「BourbonStreet Blues」月船さららと北翔海莉という組み合わせで上演された。この年最後のバウ公演となった11月雪組「DAYTIME HUSTLER~愛を売る男~」は、貴城けいの単独主演公演となった。しかしながら教師からハスラー(エスコートサービスのホスト)に転身した男が殺人事件に巻き込まれる、という粗筋を見ただけでは“宝塚歌劇”としてはかなり攻めた内容。いくら小池修一郎作といえどもと思ったけれど、特に問題にもならずに上演されたようなので、それなりの内容だったのだろう。

 

 ということで、この年は檀れいも退団に、瀬奈じゅん・彩乃かなみコンビ誕生があったけれど、比較的平穏な1年だった。

 創立90周年となったこの年、初舞台生も90期生となった。男役でトップは誕生しなかったが、瀬戸かずやが花組二番手まで上り詰めた。その他男役ではダンサーとして活躍した宇月颯、雪組の脇を渋く固めた香綾しずる、星組で紅5のメンバーだった如月蓮、花組副組長を務めたダンサー冴月瑠那、Youtuberで活躍する彩羽真矢等がいた。娘役では月組トップ蒼乃夕妃、雪組トップの愛原実花を始めとして、今も星組副組長で活躍している白妙なつ、花組副組長だった芽吹幸奈、雪組副組長だった千風カレンと副組長を計4名輩出した。後先頃退団した花音舞、男役から転向した彩星りおん等がいた。

 

 この年は90周年を記念して、各組二番手の生徒が他組の公演に特出する企画“男役二番手特別出演プロジェクト(二番手シャッフル)”が行われた。対象となったのは花組・瀬奈じゅん、月組・霧矢大夢、雪組・貴城けい、星組・安蘭けい、宙組・水夏希と大和悠河。宙組だけ2人となったが、当時いかに劇団が大和を推していたかが推察される。又、一本立てを除いてレビュー・ショーのタイトルは全て、“宝塚/タカラヅカ/TAKARAZUKA”がついたものとなった。

 

 その90周年の冒頭を飾ったのが、1~2月花組「飛翔無限/天使の季節/アプローズ・タカラヅカ‐ゴールデン90‐」。「飛翔」は専科の春日野八千代、松本悠里、轟悠の生徒3理事が主演した祝舞で、また「アプローズ」には他の4組のトップコンビが特出した。2~3月星組「1914/愛/タカラヅカ絢爛」には、貴城と大和が特出となった。4~5月雪組「スサノオ/タカラヅカ・グローリー」には水と専科から初風緑が特出した。5~6月宙組「ファントム」には安蘭と専科から樹里咲穂が特出。この演目の上演が発表された当時、和央ようかはトップ就任から5年目、花總まりも11年目を迎えており、そろそろ同時退団か少なくとも花總はと思ったのだが、その後何の発表もないまま幕が上がることとなり、中々の根性を持ったコンビだなと感心したものだった。

 

 7~8月月組「飛鳥夕映え/タカラヅカ絢爛Ⅱ」は新専科から最後のトップとなった彩輝直の大劇場披露であり、映美くららの退団公演となった。また特出の貴城と瀬奈に大空祐飛の78期生トリオの役替わりも話題となった。大空は当初2期下の霧矢とほぼ同格扱いだったが、シャッフル企画のメンバーに入れない等若干霧矢が優勢な雰囲気だった。しかし当時どちらかと言えば霧矢よりも大空を贔屓していた手前としては、この役替わりはちょっと楽しいキャスティングだった。但し公演については、柴田侑宏先生の「あかねさす紫の花」「あしびきの山の雫に」に続く飛鳥時代物というので期待して行ったのだが、新トップ披露公演に娘役トップ退団と同期トリオの役替わりとトピックスが多すぎたのか、柴田先生得意の当て書きが空回りして物語の焦点が定まらなかった印象だった。

 

 8~9月花組「La Esperanza-いつか叶う-/TAKARAZUKA舞夢」には霧矢と水が特出。10~11月星組「花舞う長安-玄宗と楊貴妃-/ロマンチカ宝塚’04」から安蘭けいが復帰して通常運転になった。「長安」では2度の中国公演で“楊貴妃の再来”と、大評判を呼んだ檀れいがそのまま楊貴妃に扮した。11~12月雪組「青い鳥を探して/タカラヅカ・ドリーム・キングダム」には専科から轟悠が特出し「青い鳥」に主演した。「ドリーム」は夢をテーマに、三木章雄、藤井大介、齋藤吉正の演出家3人が共作した。

 

 バウホールでは2月雪組「送れなかった手紙」で壮一帆、6月花組「NAKED CITY」で彩吹真央、7月星組「花のいそぎ」で真飛聖、11月月組「THE LAST PARTY」で大空祐飛がいずれも初の単独初主演を果たした。また9月には日生劇場で専科・雪組による特別公演「花供養」が、轟悠主演で再演された。

 

 この年は月組で新トップ彩輝の就任があったものの、とりあえずは前年から一転してトップ人事が漸く落ち着いた。作品面では90周年記念として目立つものは見当たらなかったが、一方で“二番手シャッフル”企画と新専科生が入り混じって、キャスティング面では混乱を極めた1年となった。バウではこの後の宝塚の中心となる生徒の初主演が続いた。