…ということで、ナーンタリ から往路のバス代の

倍以上の運賃(といっても正規運賃と思われますが)を払って、
トゥルクに戻ってきました。たどり着いたのは、やはりマーケット広場であります。


ここからまずはトゥルク大聖堂を目指して歩き始めたのですけれど、

最初は単なる街中の印象。

こう言ってはなんですが、

ヨーロッパと思うとどうしても古い装飾的な街並みを想像してしまうものですから、
通りの両側にただのビルが続くようすはアメリカの都市のよう(失礼!)にも思えたり。


トゥルクを流れるアウラ川


ところが、アウラ川に架かる橋を越えると、中心部からちょっと抜け出すのか、
空の広がりが大きくなって目の前に大聖堂も見えるという雰囲気一変といったところ。


トゥルク大聖堂

さて、そのトゥルク大聖堂(Turun tuomiokirkko)ですけれど、
石造りの堅牢さとは別にちょっとおもちゃのようなかわいらしさが感じられます。


堂内はと言いますと、まずは大きくモダンな感じの絵画を背景に置いた

立派な祭壇が目を惹きます。


トゥルク大聖堂主祭壇


その一方で、反対側にあるこのパイプオルガン、

これが思い切り耳を惹く(?)のでありましたよ。


トゥルク大聖堂のパイプオルガン

何となれば、弾いている方の姿は見えねど、ちょうどランチタイムコンサートが行われており、
全身に振動が直に伝わってくるような低音ともども、

かのパイプオルガンが鳴り響いていたのですね。


折しもJ.S.バッハ の「パッサカリアとフーガ ハ短調BWV582」と思しき曲が流れていて、
ワイマールの宮廷オルガニストであった頃の作のようですが、
どうしてどうしてやはり教会という場所に何とも馴染む気がしたものでありますよ。


しばしじいっと耳を傾けておりましたが、およそ聴きいる人の姿もなく…。

もったいなくも贅沢な気分に浸っておりましたが、

曲がいささか現代風のものに変わったのを潮に大聖堂を後にして、
ほんの200mくらいの移動でしょうか、シベリウス博物館(Sibelius-Museo)に到着です。


フィンランドでというより北欧に枠を広げたとしても、

最も著名な作曲家は?ということになれば、
フィンランドのシベリウスかノルウェーのグリーグ かてなところでありましょう。


クラシック音楽をあまりお聴きにならない方はピンとこないかもですが、
映画「ダイ・ハード2」 にはシベリウスの作曲した交響詩「フィンランディア」が

たっぷり使われてましたので、「ああ、あれか」と思われるのではなかろうかと。


ただ、あれかと思われたのであれば、この曲の本来は1899年に作曲されて、
フィンランド人の愛国心を多いに鼓舞したものと言われているのですね。


当時のフィンランドはロシア帝国領の大公国(ロシア皇帝を大公としていただく)で、
自治の許容範囲はロシア皇帝のお人柄?でずいぶん変わったようですが、
1894年ロシア皇帝に即位したニコライ2世(あの大津事件 のニコライ皇太子のその後)は

領内に渦巻く革命の気運に圧政で対抗し、
フィンランドの自治も自ずと制限されていたことから、独立気運が沸々とという状態。


そうした時期に生み出されたシベリウスの

「フィンランディア」(フィンランドなるもの、みたいな意味でしょうか)は
多くの同胞を結び付ける機能を果たしたのでありましょう。


それだけに、シベリウス博物館のビデオ鑑賞コーナーで見た

シベリウスの葬儀の様子を伝えるニュース映像を見ても、
この作曲家に対するフィンランド国民の思いたるや

尋常ならざるものがあると見てとれたのですね。


ヘルシンキの大聖堂で営まれた葬儀に弔問に訪れた人たちは数知れず。
また葬儀後に終の住処となったアイノラ(ヘルシンキからバスで1時間くらいの場所)へと

棺が移送される際には、それこそ大聖堂からアイノラまでの沿道に

途絶えることのなり人の列ができたということをニュースは伝えていました。


「こんなにまで思われていた人だったのだね、シベリウスは」

と思いを新たにしたのでありましたよ。


と、こうしたビデオ鑑賞コーナーのあるシベリウス関連の展示は、

博物館の器のわりには実は少なめで、
実状から言えばむしろ楽器博物館といった方がいいかもという内容。


そのつもりでいけば面白い発見があったかもですが、

お目当てをシベリウスに置いているとちと肩透かしをくってしまうだろうなぁと。


シベリウス・コーナーの小さいシベリウス博物館

ところで、トゥルクという町は

スウェーデンからはオーボ(Åbo)と呼ばれていたと前に書きましたけれど、

この「å」という文字はスウェーデンに特有の文字ですね(ノルウェーも使ってるかも)。


ドイツ語の思わせる「ä」や「ö」という文字がスウェーデン語でも使われますが、

「a」の上に丸がついた文字というのは、とても特殊な気がしたものです。


が、帰ってきてから知ったところによれば、この文字は「a」の上に丸が付いているのでなくして、

「a」の上に「o(オー)」が乗っかっているのだそうな。


ですから、スウェーデンで書き取りをするときには、この丸は下から時計回りに書くとダメ出しされ、

上から反時計回りに書く(要するにアルファベットの「o」の書き方)が正解だといいます。


ということで「å」は、「a」と「o」の合わせ文字であって、

発音は本来は「a」と「o」の中間の(日本人にとっては)あいまいな音…かと思いきや

どうやら「おー」と言えばいいようです(かつては曖昧母音の一種だったかもですが)。