ラズモフスキー伯
の依頼によってベートーヴェン
が作曲した弦楽四重奏曲には
ロシア民謡の旋律が使われていることでしたけれど、民謡というのは実に豊かな世界でありますね。
ずいぶん前にも「なぜか懐かしいイギリス民謡
」てなことを書いたりしましたけれど、
ロシア民謡もまたどうして、どうして。
しばらく前のことですが、例によってFM放送
を聴くともなしに聴き始めたところ、
「お、これはストラヴィンスキー
の『火の鳥』であるな!」というメロディーに出くわしたのですね。
ところが、「火の鳥」だと思って聴いていると、どうも様子が違う。
ということは、「火の鳥」の旋律を使った変奏とかそういう類いだろうか…
と思っているうちに曲が終わり、改めて紹介された曲名はというと、
リムスキー=コルサコフ 作曲の「ロシアの民謡によるシンフォニエッタ」だったという。
つうことはですよ、ストラヴィンスキーが「火の鳥」の中でロシア民謡の旋律を使っていた。
それと同じ民謡のメロディーでもって、リムスキー=コルサコフが別の曲を書いていたということかと。
もっとも作曲年代的にはリムスキー=コルサコフが先でしょうから、もしかしたら民謡そのものより
この曲からストラヴィンスキーは「お、いいメロディーめっけ!」となったのかもですが。
ちなみに「火の鳥」のどこいらがロシア民謡なのかと言いますと
「王女たちのロンド」でありますよ。
ということでですね、唐突ながら
近所の図書館にあった「ロシア民謡集」といったCDを借りてみたというわけなのですね。
てっきり赤軍合唱団とか、そういういささか武張った感のある名前を持った団体による
合唱の形なのかと思ってましたら、これがバスのソロ。
シャリアピンではありませんけれど、これもロシアっぽいかなと思うと同時に
メロディー・ラインがよりくっきり分かるから、これでもいいかなと思ったわけです。
ただ、バスの低音は結構ピシっとくるとしても、女声だとしっくりこないのかもとは思いましたですね。
例えば「ヴォルガの舟歌」の「♪えいこーらー、えいこーらー」とか
「♪あいだだあいだ、あいだだあいだ」とかフレーズはあんまり女声で聴くイメージが湧きません。
もっともコントラルトで迫真の歌唱なんてのもあるのかもですが。
さて、このバス独唱によるロシア民謡集ですけれど、「そういえば、これもあれも」という具合に
予想以上に結構知っていたのだなぁと。収録曲から知っていたのをちと羅列してみるとしましょう。
- カチューシャ
- ヴォルガの舟歌
- ステンカ・ラージン
- 黒い瞳
- モスクワ郊外の夕べ
- トロイカ
- カリンカ
- バイカル湖のほとり
思い出してみればですが、個人的には歌声喫茶世代でもないのに知っているというのは
こうしたロシア民謡もほかの国の民謡同様に小学校の音楽教科書や歌集に載ってた
のかもしれんですねえ。
たぶん今の小学生が使う音楽の教科書など見ても
知らない曲ばかりになってるのではと想像しますけれど、
いくら古びたとしても、たまに思い出して聴いてみると
「こりゃあ、やっぱりエバーグリーンだな」と思わずにはいられない。
…てなふうに感慨にふけりつつ、何度もこのCDを聴いていたんですが、
そのうちに「ううぬ、ちと待てよ」と思い始めたのですね。
どうも日本人たる聴き手に余りにも、というよりあざといくらいに響くのですよ、伴奏が。
だもんで、ライナーノートをよく見てみると、レコーディングの場所がToshiba Studio No.1とある。
これって、日本なんでないの?
さらには、伴奏のアンサンブル・バルカンという安直なネーミングの団体がまた怪しい。
これは推測でしかありませんけれど、たぶん日本のスタジオ・ミュージシャンが集まって
とりあえず「アンサンブル・バルカン」ってことでいきましょーよ!と言うノリなのではないかと。
となれば、当然のように誰かは知らねど、日本人のアレンジャーが伴奏を作ったのでしょう。
聴けば聴くほどにムード歌謡の雰囲気に似たものを感じてきたわけです。
録音されたのが、1969年の10~11月。
それこそ歌声喫茶はピークを過ぎていたにしても、その余韻はあったのでしょう。
そうした時期ならでは企画された一枚だったのかもしれませんですね。
メロディー的には十二分にエバーグリーンと思われるロシア民謡の数々。
もそっとロシア色をたっぷりとと思えば、やっぱり何とか合唱団か何かで聴くべきなのかもです。
そうそうCDを聴いてて思い出しましたが、
「バイカル湖のほとり」も断片的にストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ
」に使われてましたですねえ。
