自立する電波塔としては世界で最も高い634mを誇る東京スカイツリーが間も無く開業とあって、
便乗商品、便乗企画が目白押しの状況でありますけれど、江戸東京博物館で開催中の
「ザ・タワー~都市と塔のものがたり~」というのもまさにその一つでありましょうね。


「ザ・タワー~都市と塔のものがたり~」@江戸東京博物館


内容的にスカイツリーべったりだったとしたら「うむむ…」ということになりますが、
副題に「都市と塔のものがたり」とあるように工夫された展示内容があり、
それなりに楽しむことができたなと思うのでありました。


まずは塔の起源として、バベルの塔と仏塔の紹介がされます。
これは東西対比、キリスト教と仏教とを象徴的に取り上げたということでしょうか。


もっとも「バベルの塔 」は旧約聖書で語られる話であるにしても、
展示解説にもあったとおり、紀元前3000年から紀元前1000年くらいのメソポタミアで建設された
ジッグラトをモデルとしているのですから、オリエントのものであってそもそも東西対比とは言いがたいですが。

一方、仏塔の方はサンスクリット語のストゥーパとして仏舎利の器として始まったものが

巨大化していったわけですね。


ストゥーパの語は日本で「卒塔婆」として生きていますけれど、「塔」という言葉そのものも
ストゥーパから来てると言われれば「なるほど」と思うところです。


言うまでもなく仏教はインドから中国経由で日本に入ってきますけれど、
ストゥーパも中国を経由する段階で楼閣建築による多層塔になって日本に入ったわけで、
日本のお寺さんに五重塔とか三重塔とかが作られることになっていくという。


ただ思い返してみると、歴史の中で都であった都市、代表的には奈良や京都ですが、
立派なお寺さんがたくさんあり、そのお寺さんには(全部ではないにせよ)ストゥーパ由来の塔が多々見られますね。


ところが、歴史上長らく日本の首都であった江戸にはさほどにょきにょきとは塔があったようには思われない。

もちろんあったものも度重なる大火や地震 で焼失・倒壊したりしたこともあったのでしょうけれど、
ひとつの理由としては、江戸の町の発祥は軍事政権の都であって、いわば「武都」であったというのですね。


つまり、軍事的要請からおいそれと町の全貌を見渡せるようなものを作ってはならん!

ということだったのだとか。


ですから、展示されていた江戸の町の俯瞰図(もちろん想像で描いているのでしょうけれど)を見ると、
そこここに建つ火の見櫓が妙に高層建築物然と描きこまれていたりして、むしろ笑いを誘うと言いましょうか。


これが明治になると一挙に方針転換されるわけでして、
民家はともかくとして多くの建物が西洋化した多層の建築物になって行く。
高層住宅なんかは当然ありませんから、こうした西洋風建築物の上に登ればこれが、

なんとまあ見晴らしのいいこと。


これに気付いてしまうと、江戸の町ではご法度とも思われた眺望の良さをあちこちで競い出すわけですね。

有名なところでは浅草十二階と言われた凌雲閣でしょうか。
さらに面白いのは、富士山縦覧場なるもの。


かつて江戸の町をはじめ関東地域には富士塚 が作られていましたけれど、

そこから実際に富士山が見えるようにといった展望台的な意味合いは無かったものと思われます。


これに対して「富士山縦覧場」はさも富士塚のように富士山を模して作りながらも、
そもそも富士山を遠望できることをお目当てに作られてますから、何と高さが32メートルもあったとか。
そして驚くべきはこの建物、木造でまわりをしっくいで固めたというハリボテ富士山だったのだとそうで。


一時は大変人気を呼んだものの、

悲しいかな2年ももたずに暴風雨で倒壊してしまったそうでありますよ。


とまあ、江戸から東京になった町では

高いもの好き、見晴らし大好きが高じて(そればかりではないでしょうけど)、
やがては当時世界一の東京タワー、そして今回の東京スカイツリー建設へと繋がっていったのではないかと。


されど、いかに江戸東京博物館とはいえ、展示は江戸と東京の話ばかりではないのでして、
大阪の通天閣の初代(現在は二代目なのかな)は

凱旋門の上にエッフェル塔 を乗っけたような外観だったというびっくりものでしたし、

本家エッフェル塔にしてもパリ万博 終了後の「撤去か、保存か、改装か」の議論の中では
さまざまに奇想天外な改装案が出されのがたいそう興味深いものでありました。
これに関しては、また折りを見て探究してみたいなとも思いますですよ。


特集展示「太陽の塔 黄金の顔」@江戸東京博物館


お、そうそう常設展会場の一角に大阪万博のシンボル「太陽の塔」の顔だけが横倒しで展示されてました。
子供の頃に大阪はとてもとても遠く行けませんでしたので、

「これだったのかぁ」という感慨をもって見てきました。


目のライト点灯中の黄金の顔@江戸東京博物館