またまた会期終了間際の駆け込みシリーズの一環であります。
といっても、さすがに閉幕日ではありませんでしたが…。


出かけていったのは両国 の江戸東京博物館で開催中の

「世界遺産ヴェネツィア 魅惑の芸術-千年の都」展。
会場が江戸東京博物館ですから「絵画中心ではないでしょうに…」とは思ったものの、
フライヤーにあしらわれたカルパッチョを見て、釣られてしまったわけでして。


世界遺産ヴェネツィア展@江戸東京博物館


まあ、それでもヴェネツィア という海上都市の成り立ちから始まる

解説や関連する数々の展示は、それなりに興味深くもあるところでありますね。


これまで考えなかった方が「なんで?」と自問しそうですが、
「そもそも何故あのような海上都市を作ったのか」とは考えなかったなぁと。

元々は対岸のヴェネト地方の、ちゃあんと土台のしっかりした地べたに住んでいたわけですね、
ヴェネツィア人の先祖の皆さんも。


ところが6世紀に入って、北方からそしてアジアの遊牧民も含めて民族の大きな移動の波が押し寄せた。

この波に曝されることはヴェネト地方も例外ではなかったと。


で、押し出されてしまった側が「はて、どこへ?」と考えたときに「ラグーナへ」となったようで。

ラグーナ、つまりは干潟ですけれど、思いついたときは引き潮だったんですかね。
それにしても、すぐに満ちてきてしまうはずですが。


もっとも、今のヴェネツィア本島(というのかな)に最初から移住したのではないようですので、
緊急避難の場所からヴェネツィアのラグーナに大土木工事をしに出向いて完成させたのでありましょう。
それだけに海との関わりは、良い港を持ってるなんつう町(例えばジェノヴァとか)以上に
あらゆる点で深いものがあったと容易に想像がつくわけです。


そこら辺が実際に感じられるのは、ヴェネツィア共和国を束ねる総督(ドージェ)が行った

「海との結婚」という行事だったりするのかもですね。
これは今でも「Festa della Sensa」というお祭として残っているようです。


ヴィットーレ・カルパッチョ「サン・マルコのライオン」


また、ヴェネツィアと言えば聖マルコですけれど、

それを聖書を持つ有翼の獅子の姿として描き出しますが、そのライオンというのが

前脚は陸地に後脚を海の上に置いて、陸海両者の上に立脚している図像になっているという。
そこまでは、これまた気がつかないでいましたけれど。


ところで、展示の中には総督が被る帽子(のようなもの)がありました。
ヴェネツィア総督が描かれる時には必ず目にする、後の方がもこっと盛り上がったあれですね。
ロンドン・ナショナルギャラリー の図録(日本語版のだけですかね)の表紙にある

ベッリーニ 描くところの「レオナルド・ロレダンの肖像」を思い浮かべていただければと思うところです。


傍から見てる分には、あんまり恰好のいいものではないし、
総督の権威とか名誉とかの象徴にも見えない気がするのですけれど、
絵の中で見るのみならず、実物を目の当たりにすると「本当に被ってたんだぁね」と思ったり。


もっとも江戸期の日本に来航した欧米人には、
ちょんまげ というヘアスタイルはさぞ奇妙な習俗に見えたことでしょうから、
余所様のことをあれこれ言えた義理でもありませんが…。


展示の中には「ヴェネツィアと言えば!」というように有名なガラスの工芸作品もありましたですね。
でもって、ガラス工芸と言えばムラーノ島となりますけれど、
これは独自の技術の流出を防ぐために一箇所に集めたのだそうで、
確かな技術を持っているがゆえに優遇されてるのか、抑圧されているのか。
多分に後者のように思われますが、この手の話はよくありますねえ。


と、あれこれの展示の最後に絵画をまとめてあるコーナーがありました。

題して「美の殿堂」とは大きく出てますね。


ここではやはりヴィットーレ・カルパッチョに注目でしょうか。

フライヤーにもあり日本初公開とうたわれた「二人の貴婦人」ですが、

これは本来縦長の扉絵が真ん中で分割されてしまい、

上部の方はゲッティ・センター にあるとかいうエピソードもそれはそれで面白いものです。


されど、やっぱりカルパッチョのカルパッチョらしい赤を見るということで

「聖母子と洗礼者聖ヨハネ」に目をとめておくとしましょう。


ヴィットーレ・カルパッチョ「聖母子と洗礼者聖ヨハネ」


祈りのマリア、いいですね。そして赤、深みがありますね。

それにしても、いくらカルパッチョが赤の使い方が独特だとしても、

牛の生肉料理をその赤に見立てて、料理の名前を「カルパッチョ」としなくても…とは思いますが。

(あ、そうだ!上のライオンの絵もカルパッチョでした)


ということで、風光明媚な土地柄ですのでどこへ行こうかと目移りしがちのヴェネツィアですが、

やっぱり一度は美術館巡りに特化して訪れなくてはいけんなぁと、思ってしまいましたよ。

リド島で海水浴してる場合じゃありませんでしたね(笑)。