このところあれこれの企画展やら特別展やらの類に
会期終了間際での駆け込みばかりになってしまっておりますけれど、
またしても!という具合。
まあ、それだけ興味の対象が幅広いといいますか、その分だけ浅いとは言えるものの、
あっちこっちへ忙しいわけでして(先月頭の風邪で2週間潰れたのが尾を引いているともいえますが)、
こたびは文京ふるさと歴史館というところで昨日まで開催されていた特別展、
「坂道ぶんきょう」展というものでありました。
言われてみれば「なるほどぉ!」なんですが、今の東京都文京区というところには坂が多い。
有名どころでは、JR中央線の御茶ノ水駅の東側、神田川の対岸を秋葉原方向から登ってくる昌平坂、
あそこはぎりぎり文京区だったのですねえ。
今の湯島聖堂、江戸の昔は昌平坂学問所でして、その南側なわけですが、
ちなみに湯島聖堂は孔子を祀っておりまして、
何でも孔子様の生誕地、中国の昌平郷にちなんだ命名であるとか。
それから、春先に漱石ゆかりの地
をめぐっておりますときに登った団子坂。
元々菊人形で有名な場所で見物客目当ての団子屋が多かったところから、この名前だそうでありますよ。
まあ、それも江戸の名残でしょうけれど、明治以降はむしろ文学作品に登場することで有名でしょうか。
漱石
の「三四郎」や鴎外
の「青年」、二葉亭四迷の「浮雲」にも登場しているそうな。
そしてやっぱり鴎外の「雁」でヒロインのお玉が住んでた、というより住まわされていたのが無縁坂。
そうでなくても、いささか意味深なネーミングですし、ある世代にはグレープの歌でお馴染みなのかも。
♪しのぶしのばず、無縁坂 って、あれですね。
上野の不忍池
方向に下っていくことと「忍ぶ人生」を掛けたわけですが…と、こりゃ蛇足でした。
てなぐあいに、本展の展示にあたって数え上げられた区内の坂道の数が110。
展示を見ながらお連れさんに「全部廻って撮った写真がある」てなことを語っておられる好事家もおりましたよ。
なんでも文京区というところから西方から広がる武蔵野台地の東端に位置するのだそうで、
基本的に盛り上がった土地(最高で海抜30メートルくらいとか)を、
いくつかの谷が刻んでおり、台地と谷、低地をつなぐ坂道が多いのだとか。
道理でしばらく前に弥生美術館
から東大研究博物館小石川分館
を経由して護国寺まで
あれこれ見て廻りながら散歩をしたおりに、アップダウンがあったわけです。
最初は本郷台地に登って下り、その後小石川台地、小日向台地
とアップダウンを繰り返したのですから。
ちなみに高台となれば、当然眺めが良いことになりまして、
取り分け今のように高いビルがない江戸の世では東に江戸湾、西に富士を望む景勝地とばかり、
広重
はじめ多くの絵師が区内各所を江戸の名所絵図に残しているそうでありますよ。
これは広重が描いた湯島天神からの眺め。見えているのは海でなくて、不忍池でしょうけど。
また、永井荷風
は「日和下駄」の中の第十に「坂」という一編を書いていて、
散歩するにも平坦な場所では興趣が無いとして、坂道歩きの楽しさを書いているんですが、
パリ
ならモンマルトルの丘がいいてなことと同じように語っているのですね。
本郷がモンマルトルかあ…昔の興趣や今いずこてなふうにも思いますが、
帰りにちょこっと周辺を歩いてそのあとに
(そばを通ることしばしながら一度も寄ったことのなかった)湯島聖堂を目指してみました。
と、この話はこの次にということで…。

