ゲテモノと言ってしまいますと語弊がありますけれど、
普段あまり耳する機会の無い曲が演奏される!となると、ついつい食指が動いたりするものでして。
ということで、新日本フィルの演奏会に出かけてきたのですね。
プログラムのコンセプト(この場合、そうまで言っていいのか…)は「ふたりのフランツ」。
フランツ・シューベルトの交響曲第3番とフランツ・シュミットの交響曲第2番の2本立てでありました。
シューベルトの3番シンフォニーは、しばらく前のシューベルト探究
の時以来、
先日の日フィル演奏会 でも聴きましたし、差し当たりのお気に入りになっているものの、
ここでの注目はとにもかくにもフランツ・シュミットでありましょう。
なかなか聴けませんよ、これは。
ちなみにシュミットというドイツ人の名前は英語のスミスと同様(同義?)によくある名前ながら、
およそ作曲家では聞かない。
にもかかわらず、たいていはフランツ・シュミット、フランツ・シュミットとフル・ネームで呼ばれるのは、
ほぼ同世代のフロラン・シュミットというフランスの作曲家(といってもやはり名前的にドイツ系でしょう)との
混同を避けるためなのですね。
ところで、そのフランツ・シュミットの交響曲第2番ですけれど、
1913年にできたことからすれば、やはり「20世紀音楽 」ということになりますけれど、
まずもってさほどに耳に障る(?)ような点は無かったなとは思うところです。
それでも、演奏会で配布されたプログラム・ノートに曰く
「音数が多く、編成も大きく、曲は長く、多彩な内容が凝縮され、演奏は難しい」とあっては
晦渋さを予想するところで、確かに一度聴いてだけで全体像を把握しきれるものではないなと。
でもですね、茫洋とした出だしの先に現れるのは「朝」のイメージと行ったらいいでしょうか。
ちょうど「マイ・フェア・レディ」の頃のコヴェント・ガーデンで
夜明けの光が多くなるにつれて市場が目覚め、だんだんと人が出て、荷車が行き交い、
喧騒が増していく…といった雰囲気が何度か繰り返し出てくるのですよ。
第2楽章のコラールと変奏では、やはり「朝」の雰囲気ながら今度は「野の風景」と申しましょうか。
もちろんプログラム・ミュージックではありませんから、作曲者自身が意図していたは思いませんけれど。
確かに音は多く、ぶ厚さがいささか聴き手を圧倒するようなところもありますけれど、
このようなイメージ喚起につながるある種の聴き易さも併せ持ってるところが、
フランツ・シュミットらしいところのようでもあります。
ところで、同じく演奏会のプログラム・ノートにこんな一節がありました。
・・・シューベルトの交響曲は、生前公式な初演にめぐり合えなかった。ブルックナーの交響曲も、なかなかウィーンでは演奏されなかった。その弟子シュミットはといえば、4つの交響曲は完成から年月を置かず、すべてウィーンで初演されている。最晩年のオラトリオ「七つの封印を有する書」は、ウィーン楽友協会の125周年の栄えあるモニュメントであった。
シューベルトの曲はそもそも仲間うちでの演奏を考慮されたところがありますから、
同じ土俵にはしにくいものの、ともあれフランツ・シュミットがウィーン 「では」人気作曲家であったことが
偲ばれます。でも、ウィーン以外ではさっぱりだったような…。
思うにですね、ウィーンの聴衆が実に保守的であったのではと考えるのですね。
例えばですけれど、ポーランド を発ったショパン はウィーンに立ち寄りはしたものの、
「俗な音楽ばかりで!」と逃げ出すようにパリに向かってしまうわけです。
ショパンがウィーンにやって来たのは1830年。
ナポレオン戦後の処理に当たったウィーン会議(1814~15年)の十数年後ですけれど、
「会議は踊る」と揶揄されるウィーンは相も変わらぬ享楽的なところでもあったのでしょうか。
ショパンの考える「俗な音楽」にはヨハン・シュトラウスあたりのダンス・ミュージック(!)も
当然入りましょうけれど、そのヨハン・シュトラウスが奇しくも「ウィーン気質 」で描きだしたような風情が
ウィーンでもあったのでしょうね。
そんなウィーンの聴衆も世紀末を経て、いささか耳も新しい音楽の傾向には馴染みつつあった…
としても、ロマン派の伝統に踏みとどまったフランツ・シュミットは彼らのとって何とか許容範囲に入る
新しい音楽だったのかもしれないなぁと思ったわけです。
他の諸都市での音楽受容はどんどん先へといいますか、より広がりあるものとなっていたかもしれない。
でも、ウィーンでは…と考えると、フランツ・シュミットがウィーンでのみ称揚されたのも
何だか分からないでもない。
それにしても現代の演奏会プログラムも、もそっと多様化してもいいような。
でないと聴く方は保守的になってしまうかも。
もっとも保守的なプログラムでないと、すでにチケットが売れないのかもですが…。
