ちょおっと気になっていたニューオータニ美術館の「北斎とリヴィエール」展を覗いてみたのですね。

この美術館はいつもガラガラですのに、今まで訪ねたうちではいちばんの入りの良さ、

やっぱり葛飾北斎の人気ゆえなのでありましょうかね。


「北斎とリヴィエール」展@ニューオータニ美術館


副題に「三十六景の競演」とあるように、

葛飾北斎の手になる「冨嶽三十六景」の全46点(追加10点を含む)と

これに触発されてアンリ・リヴィエールが制作した「エッフェル塔三十六景」全点を一挙公開という、

小粒ながらもぴりりとした企画なのですね。


ロートレック と同年(1864年)生まれのアンリ・リヴィエールもまた当時の画家たち同様に

19世紀末のジャポニスムの影響を受けたわけですけれど、

それにしても「エッフェル塔三十六景」とは?!興味津々ではありませんか。

面白いことを考える人もいるものだなと。


アンリ・リヴィエール「エッフェル塔三十六景」扉絵(本展フライヤーより)



最初は浮世絵 よろしく木版で制作を始めたらしいところが、

やはりずいぶんと手間がかかると考えたのか、ほどなくしてリトグラフに切り替えたのだとか。


で、全体を展観して思うところは、「エッフェル塔三十六景」がどうのというよりも

「浮世絵ってのはすごいねえ!」ということの方なのでありました。

これは浮世絵が手間のかかる木版でできてるということにとどまらず、です。


ジャポニスムの影響としては、

日本風の小道具や衣装を配して描かれる作品というのがまま見られる一方で、

あたかも写真のような切り口を見せる構図なんかも挙げられますね。


リヴィエールの描き出したエッフェル塔を垣間見る風景の数々には

ものの見事に北斎や広重 の作品から構図を持ってきたものが多々あるという。

そばに置かれた参考画像の北斎や広重を見て「なるほどねえ」と思うとともに

改めて見れば見るほど「大胆だぁねえ、この構図」と思ったりするわけです。


こうした思いをもって、リヴィエール作品から北斎の「冨嶽三十六景」に目を移しますと、

今さらながらの驚きに包まれることしばし。


葛飾北斎「冨嶽三十六景」より「常州牛堀」


例えば、これは「常州牛堀」という一枚。

ぱっと見、「何がどうなっちゃってんの?」とも思うところですけれど、

常州ということでおそらくは霞ヶ浦の広い湖面越しの富士ということながら、

右手前の岩陰からぬうっと舟が出てきた一瞬なわけですよ、これは。


舟の後ろがまだ現れていないだけにとても動的な印象を与えますし、

そうした動的な場面の一瞬を切り取る写真っぽさが感じられるのではないかと。

突飛な喩えかもですが、「スターウォーズ 」の冒頭部を思い出してしまいました。


それこそこうしたびっくりが北斎(そして広重の参考図像)からはたくさん伝わってくる。

かといって本展は決して

「東かた、エッフェル塔三十六枚目 アンリ・リヴィエール、フランス出身、リトグラフ部屋。

 西のかた、冨嶽三十六枚目 葛飾北斎、東京都出身 浮世絵部屋。 待ったなし!!」

みたいな勝負事ではないのですけれど、どうしても軍配は西方に挙げてしまうのですよね。


…ということで、いつになくニューオータニ美術館が混んでいるのも頷ける展覧会でありました。