映画「炎の人」にゴッホ 役でカーク・ダグラスが出演したときに、
「気が狂って騒ぐような、そんな役をやるもんじゃぁない」てなことを言った御仁がいたのだとか。


「おれたちはタフガイなんだから」というわけで、そのイメージを崩しちゃいけん!ということらしい。

この御仁というのがジョン・ウェイン でありまして、
なるほど「強いアメリカ」を体現する看板役者の矜持でありましょうかね。


てなふうに考えると、

蒸気船による威嚇効果を利用して強く日本に開国を迫ったペリー の姿と重なる気もしないでもない。
ペリーご本人も大した威丈夫だったようですし。


そう言えば「黒船」なんつう映画もありましたねえ、確かにジョン・ウェインが出ていました。
もっとも、ペリーでなくって
タウンゼント・ハリス の役だったようですが。


とまあ、そういう思いつきでジョン・ウェインの映画でも久しぶりに見るかと思ったのですね。
どうせなら
和田誠 さんの「お楽しみはこれからだ」に紹介されている作品にしようということで、
取り出だしたるは、ジョン・ウェイン主演、ハワード・ホークス監督による映画「赤い河」でありました。


赤い河 オリジナル・バージョン [DVD]/ジョン・ウェイン,ウォルター・ブレナン


何でもユナイテッド・アーティスツと松竹の提携作品なんだそうで、
1948年(戦後たったの3年)の制作ということを考えると「へぇ~」と思うところではあります。


ところで、この「赤い河」ですけれど、ハワード・ホークス監督作品ということで
思い込みとしては派手なドンパチもある娯楽活劇かと思っていたところが、さにあらず。
西部開拓の一面を伝える物語と言ってもよいのかなと思うわけです。


時は1851年。開拓民を乗せた幌馬車隊が西へ西へと向かっているところから始まります。
ここでまたペリーを出すのはどうかと思いますが、

ペリーが日本にやってくるのが1853年で、その2年前のようす。
西部開拓の人たちがこうして移動していったのだなと思いを馳せたりするのですよ。


わずかな牛を連れたトーマス・ダンソン(ジョン・ウェイン)は

相棒であるグルート(ウォルター・ブレナン)と共に西へ向かう幌馬車隊の一行から離れ、

良い牧草地を探して南へと進路を取るのですね。


家をインディアン に襲われて一人荒野を彷徨っていた少年マシューを途中で仲間に加え、
三人してようやくにして良い水、良い牧草がある土地を見つけ、牧場を作ることにするという…。
(今ではインディアンという言葉のみならず、こうした描き方も一面的なのだなという理解はありますが)


ここで「え?」と思うのは、見つけたこの牧草地はすでにしてダンソンの所有だというあたり。
まあ、見渡す限りの平原で誰一人いないし、通るものとてあるかないか…てな場所ですから、

それでも良かったのですね、きっと。


そして、瞬く間に14年のときは過ぎ去りまして、

そこには今や一万頭にも及ぶ牛を抱える大牧場主となったダンソンと、
立派な青年に成長したマシュー(これを若きモンゴメリー・クリフトがやってます)、
そしてすっかり老人になってしまったグルートがおりました。


ところが、この14年の間には南北戦争をあって、

すっかり疲弊した南部では牛を取引が成り立たない。
このままでは牛を抱えて野垂れ死というところで、

ダンソンは鉄道が通うミズーリまで牛を連れていけば流通経路にのるに違いないと踏むのですね。

やはり鉄道は西部開拓の大きな助けになっていたようで。


しかし、一万頭の牛をミズーリまで1,000kmもの道のりを越えて連れて行くというのは

並大抵なことではない。その苦闘の旅が今、始まろうとしているのでありました…。


だいたい西部劇を見るにあたって、いつ頃の物語という時代背景的なことを考えてみることは
あまり無かったように思うわけですが、改めていささかの注意を払いつつ見てみれば、
それなりに気付くことはあるなぁと思ったりもするのでありました。