いちばん映画好きだったと自称できるのは中学生の頃かもしれないなぁと思うのですけれど、
当時はレンタルもなく、そうは映画館に行っていられるほど潤沢な小遣いもありませんから、
TVの洋画劇場をもっぱら見ていたように思うのですね。
そうなると、図書館に出向いては映画関連本のコーナーをあれこれ眺めるわけですが、
なにしろ中学生では映画芸術論みたいな本は実に敷居が高く、
どうしたもんだろうと思っているときに出会ったのが和田誠さんの「お楽しみはこれからだ」のシリーズ。
この本を読んでからは、それこそ古い映画も見逃してはならじ!との思いが強まり、
だんだんと名画座にも足を運ぶようになっていったという。
手元にあったのは、近頃その使命を終えたと言われる「ぴあ」でなくして「シティロード」でありましたが。
そんな映画好きをヒートアップさせるのにひと役買った和田誠さんでありますけれど、
その頃ずいぶんと読んだ遠藤周作
のエッセイやら星新一
のショート・ショートの、
カバーには和田誠さんのイラストで飾られていたなと思い出したりするのですね。
そんなふうにして昔々の思い出が続々湧き起こるところですが、
世田谷文学館で開催中の和田誠展「書物と映画」をようやっと見てくることができました。
展示では、まず和田さんが装丁に携わった書物(と原画少々)がずらり。
中でも関わりが深いという丸谷才一さん、井上ひさし
さん、村上春樹
さん、谷川俊太郎さんとの仕事が
中心になっていましたけれど、村上さんとはお互いのジャズ好きが絡んで
仕事自体がコラボレーションになってたのですね。
ジャズと聞いて、いかにもありがちな紫煙とバーボンという夜のイメージとは別に、
和田さんが描くジャズ・プレーヤーたちは明るくユーモラスで、
ジャズ・ビギナーにもずいぶん敷居が低く門戸は開かれていると感じさせるようです。
きっとこのことは映画でも全く同じだったのでしょうね。
硬そうな映画、重そうな映画、少々趣味とは違うかなという映画、どんな映画も
和田さんのほんわか風味のイラスト付きで紹介されると「見てみようかな」という気がしたものです。
会場には「お楽しみはこれからだ」の本が置いてありましたので、
何十年かぶりに手にとって頁を繰ってみましたが、
紹介されたタイトルをメモに書きとめて次々見ていくつもりが、
どうやら未だに見ていないオールドマスターが多々あることに気がつきました。
ここでそのタイトルを挙げていったら「映画好きが聞いて呆れる」となるのは必至ですので自重しますが、
それならそれで、これから改めて「お楽しみはこれからだ」と言えるなぁと。
何とはなしに映画館に足が向いていない今日この頃ですけれど、
和田さんご推奨を見ていく楽しみがあるのですよね。

