多摩センターに出向いたときに
多摩美術大学の美術館
を覗いたということはこれまでにも何度かあったのですけれど、
距離的にはもそっと近い武蔵野美術大学の美術館には行ったことがなかったのですね。
都心の大学ならばいざしらず、
多摩地域の大学ともなると駅から歩いていけるというところはそうそうないのでして、
つうことはちと町に出たついでにというよりはわざわざその大学に出向かないといけない。
多摩美のようにキャンパスとは別のところに美術館をもっているのは別ですが。
ということで、こたびは意を決して?出かけてみたわけです。
といってもゆうに自転車圏内ですので、むしろ遅きに失したというべきやもしれませぬが。
お目当ての展示が美術館とそして図書館の館内展示にあったのですけれど、
いざ出かけてみますと、美術館内では3展同時開催の全部と図書館展示を見たものですから、
4つの展示をひと巡りというわけです。
しかも全部無料!ムサビの太っ腹を讃えましょう!
最初に覗いた展示は「災厄防除-まもる姿・ふせぐ形-」というものでして、
魔除けの藁人形から虫除けの蚊取り線香や蚊帳、火除け関連で江戸火消しの装束や道具類、
盗人除けの鍵の類いに雨除け・雪除けの蓑笠や蓑合羽、そしていろんな災難除けの護符などが
ところ狭しと展示されていたのですね。
こうした歴史的な風俗・習俗を伝えるようなものも美大の展覧会になるのかぁ…と思いつつも、
何もファインアートばかりが美大の領域でなくって、いろいろなデザインは全て研究対象でも
あるのでしょうね。実際、美術館の中の一角には「椅子のギャラリー」なんてのもありましたし。
この展示は予め見ようと思っていたものではなかったのですけれど、予想外に面白かったですねえ。
だいた藁人形というと「呪いの…」という枕詞をつけてしまいそうになりますが、
実は古来からの魔除けが本来の姿であったてなことは、この歳になるまで知りませんでした。
ちなみに屋外では超巨大な藁人形が展示されてました。
秋田県湯沢市に伝わる「鹿島様」というものらしいです。
美術館内もう一つの展示は「滝沢具幸 地の譜」と題したムサビの教授だった方の退任記念展。
失礼ながらあらかじめ存じ上げない作家ではありましたけれど、
日本画の技法では抽象にも近い風景画・人物画で色合いが比較的落ち着いている分、
不協和音が走ることなく見ることができたのでありました。
さて、これから予定していた見ものとなりますが、美術館内のさらにもうひとつ。
「中村とうようコレクション展 楽器とレコードを中心に」というもの。
ポピュラー・ミュージックの研究家でもある中村とうようさんの音楽関連コレクションは
膨大なものでありましょうけれど、それがすべてムサビに寄贈されたというのですね。
ここでもまた「音楽関連コレクションが美大に?!」と思うわけですが、
全てはデザインに関わるところでありますし、大きな文化との関わりの中で美術的な側面というものを
捉えるといった考え方もあるのでしょうね、きっと。
「楽器とレコードを中心に」とありますように、楽器は主に中東・アフリカの民族楽器が展示され、
その素朴な形には思わず触って音を出してみたくなってしまうという(やりませんけどね)。
そして、レコードの方は昔々のレコード・ジャケット(ボブ・ディランが妙に若者だったり…)や
レコード盤自体に絵や写真がプリントされているレア盤の展示が。
ジャケット展示では自分の持っているフォーク・クルセダーズのライブ盤が飾られていて、
「もしかして、レアものだったのかな…」と思ったりした一方で、
勝新太郎の若かりし頃がレコード盤にプリントされているものには、本当にぶっ飛んでしまいました。
「こ、これ?勝新?!」と。(北川景子に似ている…という声が聞こえてきたりしましたが、ま、鼻なら…)
さて、最後になりますが所を図書館(新築のピッカピカ)に移して、
館内展示でみる「海のグレート・ジャーニー」という写真展を見てきました。
インドネシアから沖縄の石垣島まで古代の人たちが手作りの船で航海(漂流?)したであろう足跡を
辿ってみる旅の記録なんですが、そもそもムサビで文化人類学を教えている関野吉晴さんの
プロジェクトだというのですね。関野さんは一橋大に探検部を作った方だそうです。
旅そのものの様子を伝える写真も見ものではありましょうけれど、
その航海をするにあたって船を作ることから始めたわけでして、船作りの道具などの展示もありました。
なんでも美大生に語りかけられたというのが「ものづくりを学ぶ学生なら、一から船を作ろう」ということ。
その「一から」というのが九十九里の海岸に出かけての砂鉄探しだったというのが凄いことではないかと。
砂鉄を集めて、たたら製鉄(「もののけ姫」に出てきますなぁ)するという。
出来た鉄で船を加工していく道具を作るのだと。そんなところから始めるとは!
話を端折ってしまえば「海のグレート・ジャーニー」は成功したということなんでしょうけれど、
とまれ、スタート地点の置き方が凄いですよね。
屋外展示でその船が置かれていましたけれど、やる気になれば何でも作れちゃうんですなぁ。
そして、ちょっと前にジェームズ・クック
の乗ったエンデヴァー号が小さいと感じたのですが、
そこに置かれたカヌーのような物体で航海したというのですから、
人間のチャレンジ精神というのは大変なものだなぁと思ったのでありました。





