致し方なしながらも先の震災後はたくさんの展覧会が中止になって
「誠にがっかり」の企画が多々ありました。
音楽でも多くの来日公演が取り止めとなりましたけれど、個人的に残念なところといえば、
先月の読響でマーラーの5番を振るはずだったズデニェック・マーツァルが来られず代役が立ったり、
さらにそれよりもヘレヴェッヘのバッハが聴けなくなったあたりでありましょうか。
他にも、チケットは入手してなかったものの行こうかなと思ってたのなら、
セルゲイ・ナカリャコフとかまあいろいろ加わりますけれど。
そんな折だけに、いつキャンセルの報が入るのかとびくびくもので待ち構え、
結局聴くことができたのが「タリス・スコラーズ」でありました。
古ぅい音楽に詳しいとか、合唱に取り分け興味があるとかいうことではないのですが、
何とはなし「タリス・スコラーズは聴いておかねば!」みたいな気がしたものですから。
たぶん「感動の予感」みたいなものを感じたのかなと。
ところで「スペインの音楽」と題されたプログラムはセバスティアン・デ・ビバンコの2曲の前後を
トマス・ルイス・デ・ビクトリアの作品で挟んだもので、メインはビクトリアの「レクイエム」でありました。
なんでもビクトリアは今年没後400年(生没年は1548-1611)だそうで、
古楽の世界では今年ビクトリアの演奏会が山ほどありそうです。
ただ、その生きた時代がスペイン・ハプスブルク朝の全盛期、
フェリペ2世、フェリペ3世の時代となると、音楽を背景で考えてしまうところも出てきますね。
1517年のルターに始まる宗教改革に立ち向かう形になったローマ・カトリックとしては、
熱烈な擁護者でもあったスペイン王室とタッグを組みながら、
ビクトリアのような優れた宗教音楽を作れる者をローマに貸し出し?していた…
わけではないかもですが、ビクトリアはもっぱらローマで活躍したそうな。
素晴らしい音楽でもって、カトリック信仰に留まらせようとしたのか、籠絡しようとしたのか、
宗教がらみでかなり血生臭いことも行われたスペインではありますけれど、
こたびの演奏会では音楽だけに没入させてもらおうかと。
タリス・スコラーズは歌手10人に指揮者というこぶりな編成で「え?そうなの?」と。
CDであれこれ聴いたときには、大合唱とは思ってませんがそれでも10人とは思ってなかったもので。
しかしながら、この10人が歌い出すと声の広がりは大変なものがありますね。
最初の歌い出しを聴いただけで「あ、教会で聴きたいな」と思ってしまったのでして、
もちろん曲が宗教曲だというのはあるにせよ、はっきり言ってラテン語の歌詞がそのまま分かるでなし、
そうした面でというよりはやはり歌唱の力で出てくる教会との親和力とでもいいましょうか、
そんなものがやおらビビッと来たわけです。
声質としても均一性を磨いているのでしょうね、
その響きは「オルガンのよう」などとありきたりの表現が浮かぶところですが、
演奏が進んでいくにつれ「あれ?おや?」と思いましたのは、響き全体がオルガンに聴こえるというよりも、
声の響きの中からあるはずのないオルガン伴奏が聴こえてくる気がするのですよ。
それが、時にはオルガンのようであり、時には金管楽器、
高いほうなら柔らかなコルネット、低い方ならトロンボーン、テューバのようでもあるという。
あるところではハーモニーを支えてくれてたかと思えば、
あるところではオブリガードとして聴こえてくるように思えるのですが、
伴奏は一切ないはずなので、これは全て人の声のなせる技とは凄い人たちだなと思ったわけです。
やっぱり、どこかしらの礼拝堂のようなところで一度は聴いてみたいものでありますよ。
ちなみに、ホールにNHKのカメラが入ってました。
8月にBSで放送するんだそうです。
個人的にはBSが見られない環境ですが、ご覧になる方がおられたとして、
同じような印象をもたらることがありましょうかね…。
