往年の大指揮者が君臨した時代には、
事務局がかような発言をするなど考えられることすら無かったのではなかろうか…。
と、そんなふうに思われるタイトルの本を手にとってみたのですね。
題して「マエストロ、それはムリですよ…」。
先日の「商店街おこし
」ならぬ「オーケストラおこし」を取材した本でして、
指揮者・飯森範親さんと山形交響楽団が取り組んだ悪戦苦闘(というと大袈裟ですが)の物語であります。
山形出身の音楽家が郷里の人たちのためにとオーケストラを組織したのが、
山形交響楽団=山響の始まりだそうですけれど、なんでも日本一小さなプロ・オケなんだとか。
何しろ県庁所在地とはいえ山形市の人口は25万人ほどとと東京の目黒区くらいであって、
それが顧客規模ということになると、楽団経営の観点からは大層厳しいそうな。
東京なんぞにいますと、かつての駅前大学ではありませんけれど、
県庁所在地クラスの都市であればどこにもプロのオーケストラのひとつくらいはあるのかな
と思ってしまうところですが、実際にはそうでもないのですよね。
ちなみに日本オーケストラ連盟の正会員団体を見ると、東京、大阪以外では
札幌、仙台、高崎、横浜、名古屋、金沢、京都、神戸、広島、福岡、そして山形だけで、
準会員でも(正会員の都市とのダブりを除くと)静岡や千葉ということに。
ということを改めて知った上ですと、
いわゆる二管編成のコンパクトなオケであっても維持するには大変なのだろうと思ったりするわけです。
それが故でありましょうか、楽団経営的には基本的に縮小均衡にならざるをえず、
結果、冒険できず、お客を呼べず、苦しくなって冒険できず、お客を呼べず…
の悪循環になってしまうのは想像できるところでもありましょう。
ただ、それでも「音がきれい」という優れた資質を持つオケであっただけに、
当時若手で勢いがあってという飯森さんに常任指揮者就任を打診に出かけた事務局の方が
おっかなびっくり、断られてもだめで元々と考えていた申し出を、
飯森さんが受けることにつながる大きなアドバンテージだったようですね。
過去に客演して山響の音を知っていた飯森さんは常任就任を受諾するのですが、
「いろいろ注文をつけさせてもらいます、それで良ければ」の条件付き。
その後、事務局としては「マエストロ、それはムリですよ…」と思う注文を幾多もこなしていくのですが、
その中身はここでは触れずにおきましょう。
ただ、飯森さんが出すあれこれの注文というのも、
全てはオケを盛り上げのはもとより、それを通じて顧客に喜んでもらおうという思いからのようで、
なにしろ「音楽家はサービス業」というのが飯森さんのポリシーだというのですから。
そうまで言うなら当然やもですが、
出した注文の達成に関してはオケ任せ、事務局任せにすることなく、
率先してアイディアも出し、観光含めたPRの行動もしという姿が次から次へと紹介されますけれど、
ま、これは(失礼ながら)飯森・山響よいしょ!感が濃厚な分、いささか割り引いて見ることも必要かなと。
ではありますが、あれこれの苦難を乗り越えて存続するだけに留まらず、
歯車が好転し出すと勢いもまたつくようでして、
東京でのコンサートやらモーツァルトの交響曲全曲(!)演奏ツィクルスやら
なかなかに意欲的な企画に取り組んでいるのも事実となれば、
やっぱり聴いてみたくなりますよね、山響。
来月には東京公演「さくらんぼコンサート2011」もありますけれど、
本書の中で触れられた「うまい食べ物、いい温泉」と山形そのもののPRも考え合わせれば、
山形へ乗り込んで行って聴くべし!でありましょうかね。
と思うこと自体、すっかり乗せられる!というわけでして、
なにごとも端から無理といっては始まらないのでしょうなあ。
