新宿で少々時間がありましたので、

損保ジャパン東郷青児美術館を覗きに行ってみました。


普段はもっぱら企画展の会場と化している同館ではありますけれど、
今はちょうど所蔵作品展をやっているところですので、
いつもはお蔵入りしている作品が見られるのだろうというわけです。


所蔵作品展@損保ジャパン東郷青児美術館


美術館の名前が示すように東郷青児 作品を多数所蔵しているのですよね、本来。
さりながら、日常的な展示はほんの数点でありながら、

余所の会場で東郷青児展 をやるとばんばん貸し出して(?)

「お、実はこんなにあるじゃん」と思うのですけれど、今回ばかりは20数点を出していました。


もっとも個人的に東郷作品は、「らしさ」を確立した女性像よりも前のものに惹かれるのでして、
1922年制作の「巴里の女」や「スペインの女優」に見る、

ローランサン に翳りをたっぷり加えたようなものや、
シュルレアリスムの息が掛かったと思しき1920年代末から30年代前半の作品は

忘れてならじと思うのですね。


も一つ、この美術館ならではというものに、グランマ・モーゼス の作品がありますね。
こちらもいつもは数点程度ですが、今回は11点ありました。


同じ農村風景ではあるものの、例えばワイエス のような厳しさではなくして、
ほんわり暖かな気分のみを描出しているわけですけれど、
老境に至って筆を取り、楽しかったことだけを思い出してキャンバスに焼き付けていく作業だったのかも。
だからこそ、さらに長生きする秘訣にもなったのかもしれませんね。


このお二人以外はジョルジュ・ルオー の「悪の華」による連作版画を除いて、
単品料理でありましたが、和洋取り混ぜたバラエティーに富んだもの。

中でも、本展フライヤー(上の画像)に大きくあしらわれた山口華楊の「幻化」(1979年)は
絵に内包された物語が語りかけてくるような印象がありました。


ちなみにタイトルの「幻化」は「げんけ」と読む仏語とのこと。
意味するところは「すべての事物には実体のないことのたとえ」であると聞けば、
日本画らしい茫漠とした輪郭で表された狐の絵であることからも、
やっぱり物語が湧き出てくるかのようではありませんか。


もう一枚だけ洋画で挙げるとすれば、荻須高徳でありましょうか。
制作年不詳の「サンカッシアーノ風景」は、おそらくはヴェネツィアだろうと思いますけれど、
ともすると
佐伯祐三 ユトリロ と並べるとちょっとどれが誰の作と思ってしまう荻須作品にあって、
「これが荻須!」ということなのかもしれませんね。


とまあ、必ずしも大きな目玉作品もない分、

空いた館内でゆるりと眺めることのできる展覧会でありました。

なりモノ入りの企画展ばかりでなくて、それぞれの美術館がじっくりしっかり集めた

個性的なコレクションを所蔵作品展 で楽しむというのも、乙な味わいですよね。