タイムスリップものの映画
は数々あれど、
過去あるいは未来と現在との整合性みたいなものを考えているかどうかはひとつのポイントかなぁと。
とはいえ、本当の科学の領域でといった点まで考え合わせようとすると、
こうしたお話は作れなくなってしまいますから、
ある程度「これ、変でないかい?」と思わせないものがあるかどうかくらいのことですが。
逆に、そうしたことを全く考えないで
「これはファンタジーですから」「最初から何でもありと思ってますから」という姿勢であれば、
「そういうことなら、何でもありをまんま楽しませてもらっちゃおうかね」ともなりますかね。
で、たまたま映画「ある日どこかで」を見たときにどう考えたらいいかなと「うむむ」となった結果、
これは後者、つまりはファンタジー路線と考えねば、
あれこれ揚げ足取りをすることになってしまうなぁと思ったわけです。
はじまりは1972年。
主人公リチャード(クリストファー・リーブ)はいまだ大学生ながら
脚本家としての道を歩みだす芝居に成功を収め、皆から祝福されているところから始まります。
そこへ見知らぬ老嬢が現れ、リチャードに立派な造作の懐中時計を渡しながら
「帰ってきてね」と言葉を残して去っていくのですね。
そして、8年後。
すっかり一人立ちした脚本家になったリチャードですが、
原稿が進まぬ状況からふらりと旅に出ることに。
通りがかりのクラシックなホテルへの滞在を決めたところ、
たまたまホテルの資料室で見かけた女性の写真に興味を惹かれることになります。
いろいろと調べ回って、
この女性がどうやらその昔ホテル併設の劇場で行った芝居の主演女優エリーズであることが分かり、
しかも8年前に懐中時計を手渡した老嬢こそがその人であったと知るに及んで、
「ひと目でも会いたい」との思いが突き上げてくるわけです。
しかしながら、エリーズ(ジェーン・シーモア)が芝居に出演したのは1912年とあっては、叶うはずもなく…
ではありますが、これを可能にしてしまうわけですね、この映画では。
その後は、見事に時を超えたロマンスが展開していくのですけれど、
別れは唐突にやってくるという定石をきちんと押さえておりまして、
最後の最後には、あのオルフェウスとエウリディーチェの物語
のバリエーションのひとつを思わせる、
「これはハッピーエンドというべきなるや?」というハッピーエンドに収まるという。
とまあ、ここまで考えが至るとですね、
こう言ってしまっては何ですが、リチャードは死霊に取り憑かれて錯乱したとすると、
結局全部説明がついてしまうのかなと…。
ついついそんなことに思い至ってしまったわけではありますけれど、
この映画は本来そんなことは考えずに、
ひたすらロマンティックは方向性だけで鑑賞するべきものではありましょうね。
あれこれ言いましたけれど、決して腐すものではありません。
時折差し挟まれるユーモアもニヤッとさせるに十分なものですし、
あたかもセットのようなホテルや周囲の印象も映画が醸す雰囲気とうまくマッチしていて、実にいい感じ。
ミシガン湖とヒューロン湖を繋ぐ辺りにあるMackinac Islandにある、このグランド・ホテル
。
実在するので行ってみたいところではありますが、
ハイソな感じに馴染む人だけのものでありましょうかね…。
あ、これまたちなみに映画の中では、ラフマニノフ の「パガニーニ の主題による狂詩曲」の、
あの哀愁に満ちた旋律が何度も使われますけれど、
エリーズとボートに乗って浮かれるリチャードがこのメロディを口ずさむと、
誰の曲かとエリーズが問います。
「ラフマニノフ」と応えたリチャードにエリーズの曰く、
「彼の曲はよく聴くけれど、その曲は知らない」と。
そりゃそうですね、舞台設定は1912年、この曲の作曲は1934年ですから。
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