かつて勤めた旅行会社を辞し、転職活動をしておりましたときに

とある企業の面接でこんなことを言われたことがあります。

あなたは頭のいい方なのでしょう。受け応えはきちんとして筋が通っている。
志望動機もなるほどと思わないではない。だが、何かが違う…。

結局採用はされなかったのですけれど、

相手としてはなかなか「鋭いな」と思ったものなのですね。
要するに、滲み出さんばかりの熱意といったものなのかもしれませんね、

相手に足りないと思われたのは。
こう思い至ったときに、内心「その通りです」と思ったものですから。


ただ、熱意のようなものはともすると好き嫌いの範疇に入ってくるものでして、
「この会社が好きか?」「ここで作る製品が好きか?」と言われたとすれば、
そこの社員であれば(入社前であればなおのこと)「YES」と答える以外に選択肢はありませんよね。


でもって、この好き嫌いと言う感情は時に論理を超えますから、
冷静な判断が必要なときには必ずしもいいことばかりとは思えないわけです。

ですから、例えば心の底から「この会社が好きだ」と言える人がいい社員であり、
いい仕事ができるかというと、そうではないんではないかと。


こんなことを思い出させたのが、

映画「サンキュー・スモーキング」でタバコ業界のスポークスマンを演じる
ニック・ネイラー(アーロン・エッカート)なのでありました。


サンキュー・スモーキング (特別編) [DVD]/アーロン・エッカート,マリア・ベロ,キャメロン・ブライト


喫煙の害が大きく取り上げられて、パッケージにも「健康によくない」ことがうたわれるご時勢にあって、
タバコ業界の代弁者たる仕事は、嫌われ者の立場以外の何者でもないわけですが、
ニックはたいそうなやりがいを感じて働いているわけです。


ここで先に言っておくべきかと思うのは、個人的には喫煙者であるものの喫煙を是としたり、
擁護するつもりで書いているわけではないのですけれど、お読みの方がどう思われるかは別ですね…。


ところで、そのニックですが、さる映画評ではこんなふうに書かれていました。

ニックは決して悪人ではない。ただ素晴らしく頭が良く、良心がかけらもないだけなのだ。

そうなんでしょうかね?
たしかに頭がいいのは間違いない。
タバコの害を振りかざしてニックと議論をすれば、たちどころに論破されてしまいますけれど、
「良心がかけらもない」からやってることなんでしょうか。


思うに、ニックにとってはたまたま手にした仕事が

「タバコ業界のスポークスマン」だっただけであって、
何の仕事でも同様にかなりこなせた人だったんではないかと。


ニックにとって禁煙陣営と議論することはタバコ業界の擁護というよりは、ディベートであって、

それに自分の能力をかけて勝ちに行っているということなのでは。


もちろん、タバコ業界に関わっている人を指して

全般に「良心のかけらもない」と考えている場合は別でしょうけれど。


ではちなみに「どんな職業でもあなたはやりますか?」と個人的に聞かれたなら、
「自分で買いたくないものを作ったり売ったりする仕事にはつきたくありません」
と答えるとは思いますが…。


それでも、やむなく付いた仕事ではあっても、それに妙味を見出したとすれば、
自分の仕事に磨きを掛けたくなってしまうのではないかとは思うわけです。


とまあ、何やらまとまりのつかぬことを書いてきてしまいましたが、
要は「その仕事についている以上、その会社、その製品が好きなのであろう、きっと好きに違いない」
という想像が当たり前のようにしてあるということはどうなんだろうということなんですね。

それが「いいこと」であるかのように思われていることに、ハテナを禁じえないものですから。


そうそう、ニックが奇しくも議論の中で相手方の出身地域の特産物を指して、
高コレステロールがタバコ以上に健康に良くないのではないかという指摘をするんですね。
「今はタバコの話だから…」と相手を煙に巻く作戦のように受け取られがちですけれど、
こうした指摘は結構大事な点かなぁと。


自分としては意識してないんですが、

やっぱりタバコ擁護になっちゃってますかねえ、もしかして…。