ノアの箱舟が大洪水の果てにたどり着いたのが、
今はトルコ領で大昔にはアルメニア
の縄張りだったらしいアララト山だったと書きましたときに、
その元ネタがメソポタミアに遥か昔から伝わる「ギルガメシュ叙事詩」にあると知ったのでありました。
となればやっぱり「ギルガメシュ叙事詩」が気になったものの、
つい先日の「イリアス
」の例ではありませんが、
神話の自由な発想にはなかなか付いていきにくいところもありまして、
どうしようかなぁ…と思っていたところで見つけたのが絵本なのですね。
これなら、ある意味で神話を受け止めるのにいい形かもしれません。
といっても、正味20頁程度の絵本でギルガメシュ叙事詩が語れるはずもなく、
作者も苦労されたことと思いますが、3巻ものになっているのですね。
タイトルこそ「ギルガメシュ王ものがたり」「ギルガメシュ王のたたかい」「ギルガメシュ王さいごの旅」
となってはいますけれど、1巻目、2巻目の終わりは完全に「つづく…」状態。
まあ大人にとっては何を恐れることがあろうやてなもので、3巻一気読みというわけです。
古代メソポタミア、シュメールが築いた都市ウルクが舞台になっておりまして、
そのウルクを治めるために太陽王から遣わされた人間のような、神さまのような存在、
それがギルガメシュ王のようです。
もっとも、物語をたどっていきますと、どうも人間のようにしか思えませんが…。
遣わされたはいいけれど、ギルガメシュにはどうも人の心が分からず、
近しく相談したりする者もいないことから、どんどん懐疑的になり、結果専横を極めてしまったと。
このあたりは絵に描いたような悪い王様でして、
都市の城壁建設に民を借り出し、休む間も与えなかったのだそうな。
…てなぐあいに話をたどっていきますと、
いくら絵本化されていたにせよ、いささか長くなってしまいますので端折らせてもらいますが、
民の嘆きを聞き入れた太陽神はギルガメシュの対抗勢力としてエンキドゥを送り込みます。
曲折を経て、ギルガメシュ対エンキドゥの一騎打ちになりますが、力は拮抗せるもわずかな力加減で、
あわやギルガメシュは城壁の上から真っ逆さまに転落…。
そのときすかさず手を差し伸べたエンキドゥにより一命を取り留めるという。
(一命を取り留めるのですから、やはりギルガメシュは人間ではないかと)
この一事によって二人はすっかり仲が良くなり、
何くれと相談する相手もできたギルガメシュ王はすっかり善政を布くようになるんですね。
ところがそうした安定は長続きしないわけでして(あっと、第二巻に入ってます)、
フンババなる怪物がウルクを脅かすものとして登場し、これをギルガメシュとエンキドゥで倒しに行く、
これが「ギルガメシュ王のたたかい」ですね。
恐ろしい怪物も二人の連携プレーによって倒されることになりますが、
ここに女神イシュタール(女神とありますが、いろんなものに化ける悪い神様なんでしょう)が現れて、
「フンババを倒せたのは私が手助けしたからなので、ギルガメシュは私と結婚しなさい!」
と籔から棒な申し出。
これを一笑に付したギルガメシュに対して「可愛さあまって憎さ百倍」のイシュタールは、
(ありがちなことですが)直接本人に仕返しするんでなくって、
エンキドゥを死においやることでギルガメシュを苦しめる方法をとるんですね。
エンキドゥの死に接してギルガメシュは、ウルクの繁栄、ひいては民のためには、
いずれは我が身にも降りかかる死を追い払わねばと決意(やっぱり人間ですよね)し、
永久の命を求めて旅に出るのですよ。
さて最終巻ですが、苦難の果てに太陽神に会うも永遠の命は別の者が握っているという。
この辺り、てっきり太陽神がいちばん偉くて何でもできるのかと思うとそうでないんですねえ。
さらに苦難の旅の果てにウトナピシュティムに目通りが適うことになります。
このウトナピシュティムが、旧約聖書のノアに当たる人物になりますね。
そして、ウトナピシュティムが永遠の命を司るようになった大洪水と箱舟の話をしてきかせます。
(ここが基本的にノアの箱舟の話とおんなじというわけです)
ただ、ギルガメシュにはこの六日と七晩続く話を眠らずに聞き通せたら、
願いを聞いてやろうとの約束でしたが、
なんせ苦難の旅の果てですから、あえなく寝入ってしまうギルガメシュ。
願いが聞き届けられないと知ったギルガメシュが執拗に食い下がった結果、
永遠の命ではないが、不老となる薬草を教えてやるんですな、ウトナピシュティムが。
これを手に入れホッとしたのもつかの間、
しつこいイシュタールが蛇に化けて近づき薬草を食べてしまいます。
悲嘆にくれるギルガメシュ。
ここへ鳥に化身したエンキドゥが現れてギルガメシュをウルクに連れ帰り、
大空からウルクの街並みを見下ろしながら、たとえギルガメシュが亡くなるときがこようとも、
この都市の威容は永遠に語り継がれるだろうと慰めるわけですね。
「おお、そうか!」とエンキドゥの諭しを理解したギルガメシュ。
これにて全巻の幕切れであります。
いちいち教訓めいたことをここから引き出してきて紹介するまでのことはしませんけれど、
何千年の昔から人のやること、人の考えることっていうのは、根本的なところでは
あんまり変わっていないのだなと思ったりもするのでありました。


