アルメニア
と聞いたときに真っ先に頭に浮かんだのは、その音楽なのですね。
そして、アルメニアの作曲家と言えばアラム・ハチャトゥリアンであろうと。
ですので、アルメニアの歴史やらとは別にこれも調べてみますと、
ハチャトゥリアンはやっぱりアルメニア人なのです…が、
出身地は隣国グルジア
の首都トビリシ(かつてはチフリス)の出身だということなんですね。
ハチャトゥリアンと来たからには当然曲も聴いてみるわけですけれど、
先に言ってしまうと、取り出した「ハチャトゥリアン管弦楽曲集」とも言うべきCDで指揮をしている
ロリス・チェクナヴォリアンもまたアルメニア人…ですが、イランの出身ということなのですよ。
つまりは先に探究したとおり、現在のアルメニア共和国は
古えの栄華(?)を全くイメージできないほどにちっちゃくなっちゃってるわけですけれど、
それなりの領土を抱えていたからにはやはりそれなりの数の人々がいたと思われるわけでして、
どうやら「アルメニア商人」と言えば夙に有名であるらしく、
商売頼みで全世界に散らばっているともいいますから、
近隣国は当然のように多くのアルメニア人がいるのでありましょう。
というところでハチャトゥリアンでありますが、1903年生まれと完全に20世紀音楽の人ながら、
6月に新日本フィルの演奏会で聴いた異形の交響曲
などは別としても、
比較的聴きやすい音楽が多いような気がするのですね。
これはハチャトゥリアンが商業学校で学んだりしていて、19歳まで正式な音楽教育を受けていないこと、
そしてその間に身の回りの民族音楽に耳を傾けて育っていたことあたりが関係しているかもしれませんね。
今回聴いたCDも、バレエ音楽「ガイーネ(ガヤネー)」、組曲「仮面舞踏会」、
バレエ組曲「スパルタクス」と踊り系の曲で纏められていることも、
聴きやすいと思ったところでありましょうけれど。
たぶん民族音楽に培われた音楽性が、
「ガイーヌ」の「剣の舞」や「レスギンカ」を始めとした各曲に活きているのでありましょう。
もっともこうした派手めの曲よりも、
個人的には「ガイーヌ」の「ばらの乙女たちの踊り」のとぼけたメロディとか
スパルタクスとフリギアのアダージョなんかの方が耳に付いて…というか、
つい口をついて出てしまう感じではありますが。
ところで、アルメニアの音楽といって、ハチャトゥリアン以外の作曲家は知らないのでけれど、
むしろ曲で、ハチャトゥリアンよりも先に思い浮かぶものがあるのでした。
これは多分、吹奏楽関係者しかご存知ないのでは…と思いますが、
アルフレッド・リード(この人はアメリカ人でアルメニア系でもない)が作曲した吹奏楽曲、
「アルメニアン・ダンス」であります。
これは、パート1、パート2と別個のものとして
どちらかだけ単独で演奏されることも多いですが、
最初の構想から言えば、パート1が第1楽章、
パート2に含まれる3つの楽章がそれぞれ第2、第3、第4楽章と全4楽章構成の、
吹奏楽としては大きめな曲だったといいます。
楽譜の出版社が違ったために、シリーズものみたいな扱いになっていますけれど、
それぞれの曲は全て、ゴミダス・ヴァルタベッドという人が蒐集した
アルメニア民謡から取られている点で、一まとまりのものと言えるのでしょうね。
タイトルが「アルメニアン・ダンス」ですから、
舞曲系の曲で構成されていると言ってよいのだと思いますが、
ゆったりしたもの、キビキビしたもの、そして変拍子なんかも含めて、
実に多彩なリズムとメロディに溢れているのですよ。
個人的には「パート1」が好みでありまして、
ファンファーレから続く「あんずの木」という民謡を主としたゆったりとした部分、
少し早くなってシンコペーションの伴奏のリズムに変わるところからの
「やまうずらの歌」によるやさしい素敵なメロディ、
そして変拍子が民族的情緒を醸す「ホイ、私のナザン」と続き、
合唱曲に編曲されたというのも頷ける「アラギアズ」のゆったりたっぷりとした旋律、
最後には快速でエキサイティング、かつ少々ユーモラスでもある
「ゆけ、ゆけ」(曲もまさに行け行け!の感)という、
5つの民謡を実にうまく調理してあると言ったらよいでしょうか。
「パート2」の方も含めて、はたまたハチャトゥリアンの曲も含めて、
曲を聴いているとアルメニアのというより、
コーカサスを行き交った諸民族のダンス大会のようではあります。
やはり何と言っても、アルメニアが位置した場所がら、
多くの民族が残したものは交易による富ばかりでなく、
音楽的な遺産にとっても十字路だったのかもしれませんね。

