さいたまスーパーアリーナ だの戸田市文化会館 だのと、どうも埼玉づいてますけれど、
埼玉県立近代美術館へ行ってみたのでありました。
ここでは12月12日まで「アンドリュー・ワイエス 展 オルソン・ハウスの物語」を開催中なのですね。
実は同じ埼玉県の朝霞市に丸沼芸術の森というところがありまして、
ここには結構なワイエス・コレクションがあるということは以前から知っていたのですけれど、
美術館というよりはアーティストのためのアトリエ村みたいなところもあってか、
年に一度一定期間しか公開されないようでして、ついぞ出向いたことがなかったのですね。
ただ、所蔵作品はあちらこちらの美術館に貸し出したりされるようで、
たまたま?今回は同じ県内の埼玉県立近代美術館で見られるようになっているというわけです。
副題に「オルソン・ハウスの物語」とありますように、
ニューヨークのメトロポリタン美術館が所蔵するワイエスの超有名作「クリスティーナの世界」の
背景に見える木造の家屋オルソン・ハウスにまつわる水彩・素描を中心とした展覧会になっているという。
普通に美術館を訪れたときには、
個人的な好みとして油彩の筆跡を見て楽しむようなところがあることから、
どうしても油彩ばかりに釘付けになって、
ともすると水彩や素描はさらりと前を通り過ぎるだけということがままあるのですが、
ワイエスに限っては水彩を見る楽しみに溢れていると思っているのですね。
ありていに言えば「あの図画工作で使う水彩絵具で、どうしてこうした質感が出せるんだろうねえ」と、
見るたびごとに感心してしまうからなのですよ。
オルソン・ハウス自体の、厳しい自然に晒されてかなりガタが来ているであろう外壁であるとか、
納屋の中にポツンと置かれたブリキのバケツや頭陀袋などの道具類であるとか、
古びて汚れた、しかもそれがきたないとかいうことでなく、
使ってきた人間をこそ思わせるヒューマニズムが描かれているからなんでしょうかね。
今回はとりわけ油彩というかテンペラで最終的に仕上げる前の
習作らしき水彩や素描が多く展示されていますので、ワイエスが1枚の絵を仕上げるのに
実に細かいところまで繰り返し繰り返し描いてみていたかがよおく偲ばれるのであります。
も少し最終形の完成作が展示されてるなおうれしいところではありますけれど、
それでもワイエスの魅力は十分に伝わってくるなと思うわけです。
が、今回はそういう点ばかりでなく、はたと気づいたことがありました。
ワイエスはオルソン・ハウスのあれこれを長年にわたって絵にしてきたのですが、
それは第二次大戦前から終戦後にも及んでいるわけでして、
上の3つのうち左側の家の絵、右側の袋の絵などはいずれも1960年代のものなのですね。
前に、アメリカの家にはプールがあって 大きくて、戦後の日本にとってアメリカは
夢のような世界のように思えていた時期があるてなふうなことを書いたように思いますけれど、
ここに見るオルソン・ハウスのようなものも、また一方で紛れもなくアメリカなのですよね。
1960年代ともなれば、日本でも
「もはや戦後ではない」と言われるような時代になってくるのですけれど、
その一方ではアメリカはアメリカでも、確かに大きな家ではあるにせよ、
荒涼とした土地にポツネンと立ちすくみ、外壁も内装も荒れるに任せるといいましょうか、
かまってられない生活があったということなのですね。
展示作でも見られますが、破れたままになっている2階の窓ガラスには風雨対策でしょうか、
粗いぼろ布を突っ込んであるようなところも描かれています。
ワイエスの絵は見るからにリアリズムの絵画と思われますけれど、
透徹なまなざしが見て取ったものは、単に見た目のリアリズムに留まらないのだなということを
改めて感じたのでありました。


