ロサンゼルスの旅のあれこれを書き連ねているものですから、
出発前にアメリカの音楽ということでグローフェ を聴きましたけれど、
またまたアメリカの音楽ということで、今度はサミュエル・バーバーを聴いてみるかと。


バーバーと言えばどうしても映画「プラトーン」で使われた

「弦楽のためのアダージョ」ばかりが有名で…と言いつつ

個人的にもそれしか知らないわけですが、
まあ機会ですから、他の曲に手を出してみようと思うわけです。


まずはNaxos盤による管弦楽作品集の第1集でして、
バーバーの交響曲第1番、第2番と小品2曲が収録されているものです。


バーバー:管弦楽作品集第1集/オルソップ


バーバーを知るには格好の一枚と思ったのですが、
これらを消化するにはちと聴き込みが必要かなと思ったのですね。


どうやらブラームス に私淑するところがあったらしく確かに古典的な作風でもって、

(「最後のロマンティスト」とも言われているらしい…)
不協が飛び交ったりするわけでもなんでもないので、聴きにくいところはおよそ無いですが、
しみじみと食い入らせるには、時間が要るなといったところですかね。


ということで、お次に取り出したのはバーバーの協奏曲集。
生涯にそれぞれ一曲づつ残したヴァイオリン、チェロ、

そしてピアノのためのコンチェルトがそろい踏みで入っているという。


Violin Concerto / Cello Concerto/Samuel Barber


極めて単純な物言いになってしまいますけれど、
押しなべてソリストの技量で云々されがちな協奏作品よりも
交響曲のようなタイプの曲の方を楽しんで聴く場合が多いだけに、
先の一枚のもやっと感を払拭するところまでの期待めいたものは無かったわけですね。


ところが、ところがですよ!
とにもかくにも、ヴァイオリン協奏曲!こいつは素敵ですなぁ!
第一楽章どあたまから、序奏なしで滑り出るソロ・ヴァイオリンの瑞々しい旋律からして、
いきなりイーグルサムに鷲づかみされてしまったのですよ(ああ、おやじギャグっぽい)。


無理やりアメリカなるものと結びつけるわけではありませんが、
例えばヨセミテの山塊から湧き出る岩清水のような清冽さと言ったらよいですかね。
(アメリカの大自然に触れたのは、後にも先にもヨセミテしかないものですから…)


丁度あれほど過酷だった今年の夏がようやく秋にバトンタッチするような時季に聴いたことも
また感興を起こさせるひとつの源だったかもしれませんけれど。


この山懐に抱かれた感を呈する冒頭旋律への想いは、
その後第2楽章に至ってもそのままに引き継がれて、
実に心豊かな気分にさせてくれるのですが、
最終第3楽章になってやおら、プレストの無窮動が始まるといささか面食らう感も。


作曲時のエピソードとしても、委嘱者側がこの第3楽章に難色を示し、
アドバンス(前払い金)を返せてな話にもなったとか。


でも、この最終楽章は全曲の中で圧倒的に短く引き締まったものですので、
ここに至るまでに弛緩しきった気分を、ぐわっと引き締めて終わるという効果があるようです。

「休息は休息でおしまい!さぁ、バリバリかっちり行きましょう!」みたいな

何だかこの緩みっぱなしでない雰囲気は、何とはなしバーバーの生きた時代、
日本から見れば「憧れのアメリカ」にも見える颯爽と世界をリードする姿にも重なるかと。
(今でもリードしてるんだと思いますが、ミス・リード感、無きにしも非ずですが…)


とまあ、思いもよらずヴァイオリン協奏曲に肩入れしすぎですけれど、
(そのせいでチェロ協奏曲もピアノ協奏曲も触れずじまいです…)
折りしも1910年生まれのバーバーは生誕100年ということでありますから、
ショパンほどとは言わないまでも、もう少々クローズされてもいいのではと思ったのでありました。