予告編で見る限りの情報で「軽いコメディだろうな」と思ってみたのが、
映画「マイレージ、マイライフ」でありました。
実際にはビターなお話ではありましたけれど。


映画「マイレージ、マイライフ」



何しろ一年のうち322日が出張で、全米各地を飛行機で飛び回る毎日。
その主人公ライアン(ジョージ・クルーニー)の夢というのが、
フライト・マイルでの1000万マイル達成だというのですから、
目まぐるしくも「夢の無い夢」ではありませんか。


旅慣れたライアンの持ち物と言えば、常にキャリーバッグひとつ。
そこに衣類から小物、仕事の資料類にPCが、きちんきちんと定位置に収まって、
全く無駄が無いだけでなく、ホテルから空港へ、チェックインから機内へ、また空港から仕事場へと、
その動きまでが無駄がないのですね。
なんだか、スタイリッシュなカッコよさを感じてしまうところです。


まあ、映画だからいいようなものの、現実の空港やらホテルやらで「上顧客ぶり」を見せられたら、
「なんだ、こいつ?何様だぁ?!」とか思いそうな気もしますけど。


ところで、その仕事場というのが、自分の会社の自分のオフィスといったものでなくって、
取引先の会議室だったりするのですね。
なにしろ、ライアンの職業は、リストラ通告請負人なのですから。


もちろん個人商店ではないので、リストラを行う会社を顧客として、
その対象者に解雇通告を円満に(!)に代行する仕事を請け負う会社があって、
ライアンのみならず、同じような請負人が何にもあちこちへ飛んで、解雇通告を行っている…


ということなのですが、本当にそんな商売があるんですかね。
あったとして、仕事と割り切るのかもしれませんが、本当にやりたい仕事なんですかねえ。


ただ、ライアンはこの仕事のプロとしての自負がありますから、
会社が出張旅費削減のため、インターネットを通じた解雇通告システムを導入しようとすると

大反対するわけですね。


ライアン一人でも1000万マイル獲得を目標にするくらい飛行機で飛び回っているのですから、
出張旅費は莫大にかかるにしても、そして解雇を告げる側も本人を目の前にしないで済むならその方が

いいとも思ってしまうところでありましょうけれど、解雇される相手に絶望を与えるだけでなく、

人生の転機としてほんのわずかであっても前向きに臨む気にさせるような配慮をするには、

嫌でも面会するしかないと。


円満な解雇通告とは、怒りの余り「訴えてやる!」という気持ちを鎮めたり、

思い余って死を選ぶようなそぶりがあれば宥めるといったことも意味しているからですね。


では、ライアンという人物が相手を思いやる人間かというと、そうではない。
思い切りドライですね。
解雇通告の場で、さも相手を思いやるかのように見えるのは、

それはプロとしての仕事だからということでしょうか。
人間関係の煩わしさというのを人一倍感じている人物のようです。


だからこそ、ホテル住まいに何の苦も感じることなく、飛行機移動の時間も自分だけのものと受け止め、
さらには兄弟姉妹とは音信不通に近い状態でも、何とも思っていないわけです。


そうした毎日に何の過不足もなく、むしろ暢気に過ごせていたライアンですけれど、
ライアンの世界に二人の女性が関わってくることで、独自の人生哲学が揺らいでいくという。


原題は「UP IN THE AIR」。まさに、宙ぶらりん。
そこからは飛行機で飛び回る姿を想像することは容易ではありますが、
よくよく考えてみれば「何と宙ぶらりんの人生であることか…」となりますね。


これ以上のストーリー展開は実際にご覧いただくとして、
解雇通告にあたってライアンがこんなことを言う場面があります。

レジュメを見ると、料理学校に通ってましたね。料理人になりたかったのではありませんか。
それを家庭の安定のため、今の会社に入って、不本意ながらも長年勤めてこられた。
この機会は、チャンスではありませんか。

チャンスと言われて、そうそう簡単に活かせるものでもないのが現実でしょうけれど、
こうした「元々の夢は何でしたか。今でも叶えたいと思ってはいませんか」と語りかけられることが
いちばん必要だったのは、ライアン自身だったのかもしれませんね。


紆余曲折の後に、姉からライアンに向けたひとこと、「Welcome home…」が印象的でありました。