「うるさい」という言葉は、今では「やかましい」と同じように

専ら音の迷惑といったことに対して使われますけれど、
漢字では「煩い」と書きますから、必ずしも音に限らず「わずらわしい」さまを言いますね。


別の書き方では「五月蠅い」とも。
五月頃はとりわけハエがぶんぶんとまとわりつくようで、本当にわずらわしいという所から、
何でも夏目漱石 が編み出して(?)「草枕 」で使った書き方なんだそうですよ。
漱石の文章にはかなり当て字がありますけれど、

これなど「うまい!座布団一枚!」クラスですよね。


ところで、このように煩わしいものの代名詞的にも使われるハエでありますけれど、
どうも汚らしいイメージがあって、尚のこと近寄って欲しくないから煩わしく感じるわけでして、
でっかいのも困り者ですが、ちっこい小バエもまたうっとおしいわけです。


ということで、これまでは大きさに関わりなくハエというだけで十把ひとからげにして考えておりましたが、
どうやらでっかいのと小さいのではずいぶんと違うもののようでして…。


多ささ3mmほどのちっちゃいやつ。
群れてたりなんかすると、誠にありがたくないわけですが、
このショウジョウバエ(猩々蝿)というヤツは、悪い病気を媒介したりすることはないんだそうですね。
つまりは、ばっちくない!


ばっちくない上にというか、ばっちくないからこそというか、
研究用の実験動物として使われ、実に重宝するものなのだそうなのですよ。

毎日新聞の「理系白書」を担当されている元村有希子記者によりますと、

その役立ち具合はこんなことだそうです。

(ショウジョウバエの)遺伝子の数は(人の)およそ半分が、人の病気遺伝子の6割を持っている。だから、人の代わりにショウジョウバエの遺伝子組み換えで病気にして、遺伝子の関与を調べたり、薬の開発に役に立てようという研究が進んでいる。研究者でない私たちも、ショウジョウバエにはもう少し感謝すべきだろう。

こうなってくると「うっさいな!」と払いのけるかわりに、
私たちの代わりに病気になってもらって「いつもすまんねえ」と

優しい声の一つもかけたくなくから、不思議なものです。


先入観っていうのか、思い込みというのか、
「これはこれ、あれはあれ、ハエはハエ!」と思ってしまうところですけれど、
ただでさえ頭が固くなりかかる今日この頃(これは個人的な思いですが…)、
何事にも、も少しやわらか頭で臨みたいものだと気付かされるのでありました。