先日シャルパンティエの音楽 を聴いたものですから、
久しぶりにちと古めの音楽をとCDの棚を見るわけですが、
整理が悪いので、何がどこにあるやらさっぱりの状況なのですね。
その中で、「Music for the courts of Europe」というタイトルが目に留まりましたので、
取り出してみました。
ブラス・アンサンブルの草分けとして、
そのオルガンのような響きで数々の名盤を生んだフィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブル(PJBE)の
ラスト・アルバムです。
いざかけてみようかと曲目を見て、「ほぉ!」と思ったですよ。
1曲目というのが、組曲「刺のないバラ」というもの。
そして、その作曲者というのがヘンリー8世(1491-1547)なのでありました。
当時の有名な俗謡などをあしらいつつ、全部で8つの小曲で構成されていますが、
宮廷というよりは田園というか、田舎というか、そんな方を想像できる佳曲なのですね。
リーダーのフィリップ・ジョ-ンズは、解説でこう言っています。
彼の作品には、当時の一流の作曲家に共通する活気に満ちたリズムと、詩に対する感受性と雰囲気を大切にする繊細さがある。
その頃のイギリスの作曲家というと、ちょっと古いですがジョン・ダンスタブルとか、
あるいはちょっと後になるものの、トマス・タリスとかウィリアム・バードとかその辺でしょうか。
そうした人たちと共通するものがあるとは、ヘンリー8世侮りがたし!でしょうかね。
なんでも大英図書館には、ヘンリー8世の写本による109曲が残されているのだそうです。
「へえ~!」と思ったのもつかの間?、
同じイギリスの音楽学者クリストファー・ホグウッドの言い分では、こうなってしまいます。
ヘンリー8世は、完成しているフランドルのシャンソンに、もう1段書き加え、あまつさえ自分の署名をすることを躊躇しなかった。
ちょいちょいちょい!ではありませんか。
もっとも、ホグウッドが言っているのは、
「ヘンリー8世の作品とされるものは全て盗作だけんね!」ということではないですから、
一事が万事と受け止めるのもいかがなものか…とは思いますけれど。
ただ、フィリップ・ジョーンズの発言からして、
このCDに収録された組曲「刺のないバラ」はヘンリー8世が作ったものだとしますと、
またまたあれこれ考えてしまうわけですね。
なぜか?
タイトルとなっている「刺のないバラ」というのは、
ヘンリー8世が、あの!アン・ブーリンに贈った愛称だというのですね。
組曲を構成するひとつひとつの曲名を見てみましょう。
- 私にとって大いなる喜び
- よい仲間との気ばらし
- ああマダム
- さよならマダム、そして愛しい人
- タンデル・ナーケン
- 別れはつらい
- まことの愛に
- よい仲間との気ばらし
古い曲ですので、作曲年代は不詳ですけれど、
アン・ブーリンとの関わりの中でいったいいつ頃作られたものなのでしょうねえ。
個々のタイトルを見ていると、いろんな想像が出来てしまいそうです。
さらに、この組曲につけられた副題というのが「王の愛と哀しみ」とあっては
想像力の飛翔たるや、ジェット気流にも乗ったか!と思われるほどです。
とまれ、ヘンリー8世の作曲家としての「分」がどれほどなのかは判然としませんけれど、
その作といわれる「コンソート」がフランス・ブリュッヘンらの演奏で聴けるそうですので、
試してみたいと思うところなのでありました。

