例えば、今日10月18日が「統計の日」だとか、「冷凍食品の日」だとか、
はたまた「木造住宅の日」だというように、歴史的な謂れのあるものから単なるこじつけまで含めて、
毎日毎日、何とかの日というのがありますよね。
それと同じように(といっても、こじつけまではないでしょうけれど)
毎年毎年、○○の何周年といった周年行事が花盛りです。
2009年も、太宰治 や松本清張の生誕100年ですし、
ヘンデル
没後250年、ハイドン
没後200年でもあります。
そして、ちょっと数足らず感のあるものの、日墺の国交樹立140周年でもあるようです。
なんでも、日墺修好通商航海条約が1869年に結ばれたそうなのですよ。
先に高島屋でやっていた「ウィーン世紀末」展 や
現在国立新美術館で開催中の「THE ハプスブルク」展などもその関係かと思うわけですけれど、
渋谷のたばこと塩の博物館でも、少々地味ながら特別展として、
「やすらぎのオーストリア」展を開催中なのですね。
タイトルにある「やすらぎ」の意味ですが、
副題の「カフェとたばこにみるウィーンの文化史」を見れば明らか。
いかにも、テーマのはっきりしたこの博物館ならでは!というところでしょうか。
展示の方はまず、たばこの歴史的受容から始まりますけれど、
1492年のコロンブスによる航海がきっかけとなって新大陸からヨーロッパにもたらされたたばこは、
もっぱら薬用として考えられたようですよね。
効能のひとつということなのでしょう、「たばこ煙浣腸」なるものが展示されておりました。
たばこの煙を直接、直腸に吹き込むことが、腹痛治療、回虫退治の効能を発揮したのだとか。
しかし、そのふいごのような器具を見る限り、
「良薬は口に苦し」どころか「浣腸はお尻に痛し」だったのではないでしょうかねえ。
ただ、現在でもモルヒネの例があるように、
薬用に使われつつも嗜好品(というと大きな語弊がありますが)として使われてしまうことがあるように、
だんだんとたばこも薬用でない使用法が広まっていったのではないかと思われます。
やはり展示品のひとつに、「タバコロジア」という書籍(1626年、J.ネアンダーという医師の著)がありまして、同書ではたばこの薬効を説くと同時に、薬用以外の使用を否定しているのだといいます。
そうはいっても、喫煙というものが広く一般化していく中にあっては、
喫煙具がどんどん凝ったものになっていくわけでして、
例えばパイプなんぞはたくさん展示してありましたが、
細かな彫刻が施された非常に細密な仕上げの品々なのですよ。
ですが、「こんなんでほんとに吸ったとは思われんのぅ・・・」というものばかり。
また、たばこを吸う空間を提供すると言う点でのカフェの存在というのは重要だったようです。
先に見た飾りだらけのパイプが実は愛でるためのものであったのかもしれませんが、
カフェで利用されたのは、妙にながぁいパイプのようです。
それこそ1mくらいあるのはざらといった印象。
ですから、パイプ喫煙者専用のテーブルというのもあったとか。
一方で、中東方面からは水タバコなるものも、ヨーロッパに入ってくるのですが、
これは「不思議の国のアリス
」で芋虫が吸っていましたね。
長いホースみたいなのがついた器具を使います。
展示されていたフランツ・レフラーの絵画「水パイプとハレムの女性」(1880年頃)では、
中央左よりにホースのついた壺状のものが描かれています。
ところで、こうした流れの中で、たばこが儲かるものだと考えたのでしょう、
オーストリアでは1784年に皇帝ヨーゼフ2世のときに、たばこの専売制度が始まります。
帝国崩壊で民主化した後も、オーストリア・タバコ社として続いていたのですが、
2001年英国のギャラハー社に買収され、
さらにこの英国企業を日本たばこ産業が買収したことによって
オーストリア・タバコ社は現在JT傘下にあるといいます。
国交樹立後140年、よもやハプスブルク帝国 の国策企業が、
このあいだまで鎖国していた新興国の企業傘下に組み入れられてしまうとは、誰が予想したでしょうかね。
帝国の栄華も今は昔の物語ということなのでありましょうか。
と、たばこの話ばかりでしたけれど、思いもよらず歴史の流れを考えてしまう場ではありました。

