果たして「訪問者」は誰なのか。
練られたたくらみが、現実のできごとで少しずつ変質していく。
そのリアリティーに引き込まれる。

さる書評での、恩田陸さんの小説「訪問者」に触れた一節ですけれど、
なかなか気になる紹介文だなと思ったものですから、つい手を出してしまったのですね。


恩田 陸「訪問者」


不可解な事件は山のよう。


山間の邸宅が舞台というのも、なにやら古典じみた印象を醸しているではありませんか。
それが突然の豪雨で土砂崩れが発生し、下界との交通が遮断されてしまうとあっては、
まさに絵に描いたような舞台設定と申しましょうか。


邸宅裏の湖では、3年前に邸宅の女主人が事故とも自殺ともつかない変死を遂げたという。
これは果たして殺人なのか?であれば、その犯人は?


つい先ごろ、邸宅に住む一族に関わりのある映画監督が同地を訪れて、やはり変死。
女主人の変死との関わりはあるのか?これまた殺人なのか?さすれば、その犯人は?


邸宅に顔をあわせた一族がああでもない、こうでもないと議論をする最中、
雷鳴とともに大きな叫び声が!
邸宅の外には、また新たな死体が・・・


こんな普通でない状況の一族のところには、山間の地であるにもかかわらず、
次から次へと訪問者が訪れる。
6章に分かれた各章のほとんどは「来客を告げるベルが鳴った」で始まるのです。


もちろんミステリーと言っていい話だと思うのですけれど、
相当に心理的なものに重きが置かれている内容ではないかと思うのですね。
ただ、ちょぉっと結論ありきの感じがしないでもない。
前の方の描写というのが、周到に用意されてたのね、結局と。


それでもやっぱり、独創的な点を買いたくなるのは、
ミステリーのわりに最後がすっきり終わらないというあたりでしょうかね。
全てに解決がつかないわけでは無いのですけれど、まだ話が尽くされていないような何か。
パズルのようなミステリーで終わらない奥行きが感じられるとも言えないこともない。


とにもかくにも人の心はわからないものではあります。