公開中の映画「火天の城」を評して「戦国時代版『プロジェクトX』」とはよく言ったものだと思ったのですね。

何しろ(今ひとつ具体像を結ばないにせよ)五層の天守を持つ豪壮な安土城を建てるにあたっては、

そりゃあもう、並大抵では苦労があったはずですから、

「プロジェクトX」によくあった、苦労の開発秘話と同じようなものではないかと。


映画「火天の城」


しかも、金閣を建てた京の匠、東大寺大仏殿を手がけた一門とのコンペに見事に勝ち抜けて、

信長の夢を形にする役割を、尾張は熱田の宮大工の一党だというあたりからして、

史実とはいえ、良いツカミではありませんか。


巨大な城を建てるためには、どうしても敵方・武田氏に与する木曽上松の檜を使わなければと

これた決死の覚悟で敵地に交渉に赴いたりもするという、材料集めの苦労話も。


さらに、相手は曲者の信長だけに、建てるだけでも大変な代物を作り上げるのに与えられた期間は3年。

これをたがえれば、プロジェクトは打ち切り!程度のものではなく、首が飛ぶわけですから。

まあ、苦労の連続なのですね。


そこでは、武士と職人、職人どうし、親方と弟子、父と母と娘、恋人どうしなどなどなど…いろんなパターンの

人間のつながりがひとつのプロジェクトに絡んで展開するというか、存在している。

(中には、これ、いらないんじゃない?っていう書き込みもあったりしますが・・・)


「プロジェクトX」では、何かというと「男たちは・・・どうした、こうした」というナレーションが挿入されますけれど、

それだけじゃない取り巻く人々を忘れてはいけんね!ということは思い出させてくれるのでありました。


ところで、尾張の岡部又右衛門(西田敏行)らがそれこそ血の滲む難工事の末に作り上げた安土城は

ご存知のようにもはや存在していないのですね。


それはそれで今では見ることのできない残念さはあろうと思いますが、

「プロジェクトX」ならば、そのとき開発されたモノ自体は廃れても、

その際に培ったなにがしかの技術は引き継がれ活きているものと思われますから、

気になったのは、岡部又右衛門ら一党のその後ということなのですね。

もちろん、映画のその後ということになりますけれど。


詳しいことは分からないのですけれど、安土城に携わった又右衛門の後継ぎらは、

のちに家康に名古屋城造営を命じられるなどの仕事をこなしたとか。


又右衛門にとっては、精魂傾けて千年も残る城をという意気込みで取り組んだ安土城が

たったの三年の命運しかなく、その後に残らなかったのは忸怩たるものがあったでしょうけれど、

岡部一党の、その後の又右衛門が培ったものが生きたとすれば、

なによりではなかったかと思うのでありました。