ロンドンでナショナル・ギャラリー に行ったとして、

ほとんどついでのように立ち寄るのが、ナショナル・ポートレイト・ギャラリーなのではないかと。

同じ国立のギャラリーでありながら、こういう「ついで」扱いを受けてしまうのは、

ひとえに「肖像画」しか置いていないから…ということに尽きましょう。


こうした肖像画ばっかりを1300点も集めた美術館というのは、類がないということらしいですが、

それだけ英国の方々は肖像画がお好きなんでしょうね。


ただ、見る側からすると、なかなかに鑑賞するのはむつかしい。

だいたい「世界史」の授業で教わるような人物ならいざしらず、

いかに英国史に名を刻むにせよ、そうそう「○○卿」やら「△△公爵」やらと言われましてもねえ、

ぴんと来ないわけです。


ですから、ここを存分に楽しむには、ものすごぉく英国史の細かなところまで詳しいか、

肖像画そのものを美術品として見る眼でもないと、

やっぱり「ついでに裏にも寄ってみるか」(実際、ナショナル・ギャラリーの裏っぽい隣にあります)

となってしまうような気がするのですね。


まあ、そういうところではありますけれど、

単純に素敵な絵を探してみようかな…くらいの気持ちで行くと、

それなりに楽しめるということにはなります。


ロイヤル・アカデミーの初代会長であったジョシュア・レノルズ始め、

錚々たる画家たち(といっても、日本ではあまり知られない作家たちと思いますけれど)の作品が

並んでいるわけですが、その中で惹かれた作家が二人いました。

アラン・ラムジーとジョン・シンガー・サージェントです。

どの作品とは、曰く言い難いところですけれど、女性を描いて人物の奥行きを偲ばせる。

肖像画の真髄なんでしょうねえ(もちろん、好みの問題は大きいですが)。


とはいえ、もし一点だけ紹介させていただくならば、

ジョージ・フレデリック・ワッツの「デイム・アリス・エレン・テリー」(1864年)かなと。


Dame (Alice) Ellen Terry

ご覧のとおりラファエル前派 風の女性像ですけれど、

ほのかなかぐわしさが匂い立つようではないでしょうか。

シェイクスピア劇を演じて夙に有名な舞台女優ということです。

ワッツの妻でもあった(こともある)そうですが、結婚したのはアリスが17歳だったそうで、

舞台での大活躍はのちのことでしょうか、ここでは、いまだ少女の面影ですから。


ちなみに、さきほど名前を挙げたジョン・サージェント・シンガーもエレン・テリーを描いています。

こちらは舞台上の姿ということで、「マクベス夫人に扮するエレン・テリー」。


Ellen Terry as Lady Macbeth

いやはやなんとも、鬼気迫る演技!(はっきりいうと怖い…)

こちらは、テイト・ブリテンで見られますので、

同一人物を見比べてみるというのも興味あるところかもしれません。


まあ、ついでに行くも良しではありますが、

せっかくですから楽しみを見つけられるといいですよね。