この際ですから、シェイクスピアを初期作から読もうかと思ったのですけれど、
 たまたま「ヘンリー六世」が無かったものですから、
 手近にあった「リチャード三世」を読んでました。

リチャード三世 シェイクスピア全集 〔4〕 白水Uブックス/白水社

 生まれながらにして身体が不自由で、そのコンプレックスから王位簒奪をたくらむといった話は
 今なら社会通念上、とても書けないのではないでしょうか。

 しかし、自分が王冠を手に入れることに立ちふさがると思しき人たちを
 次から次へと殺してしまうという人物ながら、
 シェイクスピアらしい台詞回しで巧みに女性を取り込んでしまったりするあたり、
 単なる殺人鬼ではないキャラがうかがえます。

 そうは言っても、だぁれも信じることのできない人だったのでしょうね。
 グロスター公リチャードという人は…
 
 歴史的には、この戯曲がどこまで事実かということはありますが、
 イギリス王家における、バラ戦争という内乱が不安定な均衡の上に終結を見たあと、
 冷戦のような一触即発の状況をくぐって、王位に到達したリチャード三世。
 ところが、リチャードの役どころはむしろ一触即発だった状況に火をつけて
 きれいに焼け野原にしてしまったということでしょうか。
 
 その後は、リチャードを倒したリッチモンド公(ヘンリー・チューダー、後のヘンリー七世)から、
 磐石?の絶対王政に向かうチューダー朝が始まるわけですが、
 期せずして、これのお膳立ての役回りになってしまったのが、
 グロスター公リチャードということになりましょうか。

 とまあ、このような話を読みながら聴くには適当でなかったかもしれないのですが、
 シェイクスピアの時代、16~17世紀の音楽を集めた、
 フィリップ・ピケットのCD「シェイクスピアの音楽」はなかなかに楽しい曲集ですね。
 思ったより、古びたというか、古式蒼然とした感じもないですし。

 おそらくは、コメディ関係の戯曲を読みながら聴くと
 もっとずっと雰囲気が出るような・・・