話がチェコに及べば 、そこの音楽家がまた気になるところ。

スウェーデンやポーランド(それに以前触れたギリシャ)と違って、

チェコであれば、スメタナ、ヤナーチェク、スーク、マルティヌー…とか出てくるわけです。


が、ここではやっぱりドヴォジャークに行ってしまいます。

ドヴォジャークなのか、ドヴォルザークなのか は前にも書いたりしましたけれど、

さる解説によりますと、こんなことになります。


ドヴォルザークよりはドヴォルジャークのほうが日本語の表記としてはいくらかましかも知れないが、どのみちチェコ人には通じない。

ヴォにアクセントをつけてドヴォジャークと言えば、一応通じるが、より正しくは、ドゥヴォと発音したのち直ちに巻き舌の「r」の舌の構えに移り、そのまま口をとがらせていきを吐き出すようにしながらジャークというのである。

いやはや母語にない音を作るというのは難しいものですよね。


ところで、そのドヴォジャークの作曲した名曲というか、超有名曲に「新世界より」があります。

今さら何の説明もいらないくらいの曲ではありましょうけれど、

ドヴォジャークが招かれてアメリカのナショナル音楽院院長であったときに書かれた…だから「新世界より」。

それだけでなくって、アメリカでの黒人霊歌やアメリカ俗謡(昔でいえば、インディアンのということに)などに

触れて採り入れたりもした…だから「新世界より」。

そういうこともあろうけれど、故郷ボヘミアを遠く離れて、望郷の念も込められて…だから「新世界より」。


この副題はドヴォジャーク自身がつけたものですし、

「もしアメリカを見なかったら、こうした交響曲を書くことはできなかっただろう」

と本人も言っていますから、ドヴォジャークの交響曲第9番ホ短調作品95は「新世界より」なのですね。


ただ、第2楽章のメロディや第4楽章の第1主題が、ひとり歩きするくらい有名になってると、

「新世界より」という言葉から受けるイメージというのも結構ひとり歩きするんじゃなかろうかと。


そこで、CDのジャケット写真を見ると、

「受け手」の側がこういうイメージを持ってるんだろうなという「送り手」の意図、

あるいは「送り手」がこういうイメージの曲なんだよということにまんまと丸めこまれる「送り手」というのが、

見えたりするのではと思ったわけです。

さっそくいくつか拾ってみました。


ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」&序曲「謝肉祭」/フリッツ・ライナー ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」 他 [Import]/イジー・ビエロフラーヴェク(指)チェコ・フィル ドヴォルザーク:交響曲第8番&第9番「新世界より」/ラファエル・クーベリック

いやあ、「アメリカ!」っぽいではありませんか。

左端のフリッツ・ライナー盤は、自由の女神像。

1893年に「新世界より」が作曲された当時、ニューヨーク港の自由の女神は完成して7年ほど。

まさにアメリカのシンボルであったでしょう。映画「海の上のピアニスト」の入港シーンを思い出しますね。


真ん中のビエロフラーヴェク盤は、ニューヨーク(たぶん)の摩天楼。

こちらは現代の写真ですから、何だかむちゃむちゃ安直な気がします。

ジャケットだけみてCDをかけると、ガーシュインでも聴こえてきそうな…。


右端はクーベリック盤。

やはり摩天楼を背景にしてますが、こちらはなにやら成功したビジネスマンといったところ。

カリスマ社長をフィーチャーした会社案内のようです。(よく、クーベリックがこれでOKしたなぁ…)


一方で、こんなのもあります。


Blu-spec CD ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調「新世界より」ほか/ニューヨーク・フィルハーモニック レナード・バーンスタイン ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」/ヘルベルト・フォン・カラヤン ドヴォルザーク:交響曲第9番/オットー・クレンペラー

アメリカって言えばアメリカですね、これも。

左端のバーンスタイン盤は、大西部になってしまいました。

対する真ん中のカラヤン盤は、西部開拓時代。むしろ、牧歌性を出そうとしたんですかね。

そして、右端がクレンペラー盤。ここから聴こえるのは、やっぱりグローフェでしょうねえ。


とまあ、あれこれ論っておりますけれど、個人的にお気に入りでもケルテス盤はこんなです。


ドヴォルザーク:交響曲第9番/イシュトヴァン・ケルテス

一見、どこの絵だか写真だか分からない。

でも、よおく見ると左下の隅に「PHOTO:PAN AMERICAN AIRWAYS」と小さな文字が…。

アメリカなのですね、きっと。

でも、パッと見、ボヘミアの田園風景とも思わせるところが中途半端でありつつも、

余計な思いこみを生まない、なんだかニュートラルな感じがあります(ほめすぎか…)。


ところで、ケルテス盤にはこんなジャケットもあります。


ドヴォルザーク:交響曲第9番(新世界より)/イシュトヴァン・ケルテス

おお、これは、ブリューゲル!

もはや、アメリカでもボヘミアでもありません。とにかく農村、田園といった雰囲気ゆえでありましょう。

このジャケットだけの情報で、ドヴォジャークの交響曲第9番を聴いたとしたら。

「家路」にさぞしみじみしちゃいますかねえ。


世に「ジャケ買い」なる行動様式(?)がありますけれど、

商品を構成する要素としては、やっぱりジャケットも大事なのかな…と改めて思うのでありました。