コミカルな雰囲気を醸すタイトルに惑わされて、コミカルな小説集だと思ってはいけないのですね。

確かに飄々とした幽霊コレクターはコミカルな面を持ち合わせて登場しますけれど、

主役ではないのですから。


ユーディット・ヘルマン「幽霊コレクター」

ユーディット・ヘルマンというドイツの女性作家の手になる7つの短編が収録された「幽霊コレクター」は、

主役が人というより、ひとの心の揺らぎなのではないかなと思うのでありました。


登場人物は全てドイツ(またはその旅先の国)の名前で、

国籍まで明らかにされるわけでありませんけれど、およそ日本人ではなかろうと。

ところが、読んでいて思うのは、不思議と「日本の小説か?!」ということ。


海外の小説を読んでいて、「これは日本のか?」といった感じを覚えたことが

ついぞないように思われますので、奇妙な感覚ではありました。


それだけ、人としての心の中のざわめきは万国共通なのでありましょうかね。

友人の恋人を見る視線、親と娘の関係、つかず離れずでいる男女の親友どうし、

自分の恋愛に臆病であったり、醒めていたり・・・。


心のひだに触れるものながらどろどろしてないのは7編に共通で、

また7編とも旅に絡む話なだけに、そのように思うのかもしれません。


旅先であればこその思い巡らしといったものがありましょうね。

普段とは違う目線で考えてみたり、客観視してみたりする一方、

日常では考えられない冒険的な思いに駆られたりしますものね。


そういう点では、池澤夏樹さんの「きみのためのバラ」を思い出したりするものの、

こちらの方が断然冷たい空気が漂っていますけれど。


最後に「めでたしめでたし」が描かれずに、含みのあるひと言や一文で締めくくられる。