またまた予備知識もなく、DVDを一本。
タイトルが「潜水服は蝶の夢を見る」とは、いったいどういうことよ?と思ったわけです。
主人公ジャン・ドーは雑誌「エル」の編集長として、
業界では有名で生活は派出で、まさに我が世の春を謳歌しているふうの毎日。
ところが、好事魔多しということでしょうか、
「おっしゃれー!」なオープンカーで走っているときに突然脳梗塞に襲われます。
一命はとりとめるものの、後遺症というにはあまりな顛末。
ロックト・イン・シンドロームという、意識ははっきりあるのに体中が動かせない状況に陥るのですね。
唯一動かせる左目のまぶたを使っての意思疎通。
気の長い話ながら、看護士が使用頻度順に読み上げるアルファベットの一文字ごとに、
意図する言葉のスペルをまばたきで知らせていくわけです。
その延長で、本を出すことを思い立ち(さすがに雑誌の編集長!)、
一文字一文字を積み重ねて、ついに本を出版する。
それが、この映画の原作なのですよ。
身動きもままならず、意思疎通もできない状況を、
映画「ザ・ダイバー」で出てくるようなごつい潜水服を着て海に潜っている様子になぞらえ、
さなぎからかえる蝶が自由にはばたくさまを思い描いては、
いつかこの潜水服を脱ぎ棄てて、かつてのような自由を満喫することを夢みる。
そんな叶うとも知れぬことに一縷の望みを託しているわけですね。
まあ、こういってしまうとよくある難病モノということになりますけれど、
一筋縄で行かないのは、当の本人が大袈裟に嘆くでなく、また楽観するでなく、
不自由な状況の中で淡々と日常を過ごし、その感想を語っていく点が新鮮なのです。
もっとも、語っていくといっても、言葉を発することができませんから、
心の声を(原作があるからこそ)聞くということになりますが。
そうした病に冒された当の本人が、わりとあっけらかんな分、
周りがよかれと思ってすることの的外れ(言語療法士のアンリエットとのやりとり)や、
ここまでやってるのにその反応かよ(元妻セリーヌの献身的な看護の最中、恋人の電話に会いたいというとか)といった、健常者が想像で描いたとしたら、こうは書かないだろう…ということが、
こういう思いが本当なのかなと思わせられるのですね。
まさか自分がこんなことに…とは誰しも思うところでしょうけれど、
こういう映画に接していると、万万万が一の場合には…という心の準備ができるかもしれませんね。
