ついつい見に行ってしまう人がおいでのことと思いますけれど、
あいにくとその内の一人ということになりましょうか…。
ジェームズ・ボンド役がダニエル・クレイグになって、
すっかりボンドのイメージが様変わりしたとはよく言われるところで、昔のボンド(ショーン・コネリーか、せいぜいロジャー・ムーアか)が思い出の中に刻み込まれている口には、当然違和感を感じるところであるわけです。
ですから、全くの別ものだと思って見れば、
それはそれ、これはこれ…のスパイ・アクションと思えるのですね。
実際、2時間弱という比較的短めの仕上がりのわりには、
お決まりのカー・チェイスのみならず、
ボートでの追いつ追われつ、さらに飛行機で空中追いかけっこまで
あるのですから、凝縮された濃さがあります。
ただ、こうした濃密なアクションというのが現代っぽいとしても、
逆に今のようなご時勢だからこそ、ニヤッとさせるような
お笑いというのか、お茶ら気をふんだんに盛り込んで欲しいようにも思われてくるのですね。
お話としては、マイクル・クライトンが「恐怖の存在」で描きだしたような環境テロリスト的な悪玉を登場させるといった同時代性を持っていて、工夫の後が感じられるなど、悪くない出来栄えです。
(007として見るかどうかが、運命の分かれ道…)
ではありますが、ここでは全く本筋と関係のない点に着目してしまおうかなと思うのでした。
悪の組織の連中の会合と言えば、絶海の孤島であったり、
北極の氷に閉ざされた秘密基地であったりすることがありますが、
今回は何と!オペラを見る観衆に紛れて、
客席のあちこちに散った関係者が各々無線でやりとりするという趣向。
言ってみれば、ポーの「盗まれた手紙」のようなものですが、
注目点はオペラ、というよりその劇場なのですね。
毎年7月から8月にかけて開催されるブレゲンツ音楽祭。
オーストリア、ボーデン湖畔の街ブレゲンツで行われるものですけれど、
フェスティヴァル・ハウスとボーデン湖畔に特設される湖上ステージでのオペラ公演が取り分け有名なわけです。
でもって、今回「007」で悪い連中が集ってオペラを見ているのが、
このブレゲンツのフェスティヴァル・ハウス。いやあ、大きいですねえ。
その分、セットなども実に大掛かりで、何としてでも「行ってみたい!」と思ってしまうところです。
ちなみに演目は、プッチーニの「トスカ」でして、
ちょうどこのブレゲンツのオフィシャル・サイト で見られる「Kultur Auge」(文化の目ということでしょうか)のような大きな目玉をフィーチャーした舞台装置が、極めて印象的なのですね。
ということで、ジェームズ・ボンド自身は例によって、地球上を所せましと駆け巡るわけですが、
そこまで行かずとも、今回のもう一つのロケ地であるシエナの古い街並みを堪能した後に、
ヴェローナに寄ってアレーナ・ディ・ヴェローナでオペラ、途中ルツェルン音楽祭でコンサート、
さらにブレゲンツでもオペラなんつう旅が出来たらよいですなあ。
おっと、ついでにベルンのクレー ・センターにも寄らねば…などと、
夢だけは世界を駆け巡るのでありました、007のように。
