おとといだったか、映画「博士の愛した数式」をTV放送していましたけれど、
その中でパガニーニが4ケタの素数を16歳の時に発見したというエピソードを紹介する場面がありました。
ふと思ったのですけれど、音楽と数学は結構近いところにあるのかなと(今さらですが…)。
「ドナルドのさんすうマジック」というのがありますけれど、
これなんかを見ると、ピタゴラスと音楽の関係みたいなものが
「おお、そうか!」と思えたりしてくるわけなのです。
ピタゴラスほどに古い話でなくても、
例えば指揮者のエルネスト・アンセルメはローザンヌ大学の数学教授だったのですし、ピエール・ブーレーズも最初数学を学んでいた後にパリ音楽院に進んだそうなのです。
音、波形、物理、数学と考えていけば、大いに関わりもあるはずですね。
とまあそんなわけで、パガニーニを聴いてみよう!というわけです。
とんでもないほどのヴァイオリンのテクニックを駆使した演奏、
そしてだからこそ書けたと思われる技巧的な曲の数々…。
ヴィオラもギターも弾いたというニコロ・パガニーニの本領は、やっぱりヴァイオリンですよね。
ヴァイオリンは、録音当時、弱冠19歳であったという
フランツ・ペーター・ツィンマーマンです。
若かりし演奏とはいえ、前半の12曲は1706年製、
後半の12曲は1684年製のストラディヴァリウスを
使用して弾き分けるという考えた演奏をしているというのですから、
大したものですよねえ。
そして、演奏に寄せて、ツィンマーマンはこんなことを言っています。
パガニーニは、古典的な作曲家であると同時にたいへんエキセントリックでクセのある作曲家です。しかし、通常思われているように超絶技巧のためにだけ作曲した訳ではありません。彼の作品は、純粋なきわめて音楽的な作品なのです。…およそヴァイオリンを手にする者は、この中の一曲を取り出し、毎日演奏すべきでしょう。朝の歯磨きと同じようにです。そうすることによって技術的にすべてが可能となる日がくるのですから。
およそ19歳の発言とも思われませんが、
言わば「ヴァイオリンのバイブル」(のひとつ)だということでしょうか。
ところで、ツィンマーマンはパガニーニを「古典的な作曲家」と言っていますけれど、
いったいいつ頃の人なのだか、ちいとも知らなかったので調べてみますと、
ちょうどベートーヴェンとシューベルトの中間くらいのあたりの人らしい。
さすれば、確かに「古典的」かなと思う一方、ことほどかほどに「技巧的」というからには
も少し後の人かと思っていたわけでして…。
とまあ、ヴァイオリニストにとっては「朝の歯磨き」のような曲とのことではありますが、
いざこれを全曲聴くというのは、演奏会で奏者が目の前で妙技を見せてくれるならいざしらず、
CDではなかなか聴き通すのに辛いものが伴うのですね。
もっとも、最後の24番「クワジ・プレスト」は、
リストやブラームス 、ラフマニノフ らが変奏曲の主題に使ったお馴染みのメロディなだけに
最後の最後で息つく瞬間が訪れますから、それまでの辛抱(失礼!)ですけれど。
同じパガニーニであっても、
さほど厳めしくなく、穏やかに聴けるこちらのアルバムの方は大好きな一枚です。
「Paganini for two」というタイトルどおりに、
ギル・シャハムのヴァイオリンとイョラン・セルシェルのギターという組み合わせによるデュオなのですね。
このヴァイオリンとギターというのが、実にいい味なんですなあ。
ふつうヴァイオリン・ソナタなどでも、ピアノ伴奏というのが
どうも音色的にぶつかるような気がすることがあるものですから、
この組み合わせを聴いたときに「耳からウロコが落ちた?」ような
気がしたものです。
もちろん、シャハムの艶やかなヴァイオリンがあってこそですけれど、
普通に「パガニーニを聴こう」というときに「安らぐ」という気持ちではないでしょうから、
それだけに貴重なアルバムに思えるわけです。
ちなみに、同じコンビで「Schubert for two」というCDがありまして、
これがまた一層素晴らしいのですよ。

