レインボーカラーの靉嘔
を見たりして、
鮮やかな色彩を見るのも「また愉しからずや」と思ったものですから、
新宿の損保ジャパン東郷青児美術館で開催中の
「元永定正」展が気になっていました。
そして、これも事前知識無しに出向いたのでありました。
元永定正さんは、1922年生まれで当初は漫画家志望だったそうですけれど、洋画に転向し、1955年に前衛美術グループである「具体美術協会」に所属して、アヴァンギャルドの旗手とまでいわれる独自の抽象美術を展開したのだそうです。
そんなことも知らずに、鮮やかな色彩たよりに見に行ったくちとしては、
最初の作品を見てびっくり!
1959年の作品でしたが、傾けたキャンバスに絵の具をたらすという
「流し」の技法を使った作品は、岡本太郎ではありませんけれど、
「芸術は爆発だ!」の世界だったのですよ。
とはいえ、元々が漫画家志望というところもあるのでしょうか、
1956年の「作品」(これがタイトル)などは実にユーモラスでもありました。
画面いっぱいにぬうっと突き出した半円形は、
何でも六甲山系の摩耶山から着想を得たイメージだとか。
これを見て、「絵本にありそうだなぁ」と思ったとおりに、
かの有名な絵本「もこ もこもこ」の挿絵は元永作品なのだそうで。
ご存じの方はご存じ(当たり前ですが…)のように、
この「もこ もこもこ」は谷川俊太郎の文と元永さんの絵のコラボが絶妙で、小さなお子さんに、ちょっと雰囲気を作って読んでやろうものなら、
おおはしゃぎ必至!という一冊なのですね。
ということで、「三つ子の魂、百まで」ではありませんが、
元永さんの絵本は、「こどものとも」シリーズなどを含め、多々出ているようです。
バックグラウンドに、こうした絵本作りのようなものがあるだけに、作風の変化は誰にでもあるとしても、最初の驚くべき「爆発」が沈静化する方向に動いたような気がします。
これは、1971年作の「Nero Nero」という作品。
それまでの絵の具をぶちまけた前衛的世界から一皮むけて、
かたちを追求し、グラデーションの効果を使い始めた頃の作品です。
画像では、「なるほど抽象画だぁね」ということしか見てとれないかもしれませんけれど、
この微生物のような形をした物体の縁取りは、大変見事なグラデーションが施されていて、
それ自体がまるで発光しているかのようなのですよ。
そして、抽象画というと、「そこから何かの形が見える」というのは錯覚であって、
「無心に見るがよいのだよ」的なことを言いたくなるところではありますが、
むしろ元永作品では「何が見えるか、想像してみよう!」といった絵本の世界のような気がしました。
実際、この「Nero Nero」もよぉく見れば、
顔をこすっている子供だかねこだかに見える気がしたものです。
グラデーションの妙による「発光」は、その後の作品にも見事に現れているのですけれど、
どうも図録で振り返っても、その味わいは実物にまったくもって及びません。
どうあっても、本物を見ていただくに敵うものではないようです。
そうはいっても、ちょっとだけここで振り返っておきますと…
この「白い光が出ているみたい」(1977年)は、本展に出品されているものではありませんけれど、
画面下からにょきっと立ちあがって、てっぺんで急カーブし、折り返した頭が前面の下半分を覆っている、
この妙な形は、元永作品に共通して多用されるモティーフです。
おそらくは、先に紹介した「摩耶山をイメージした半円形」が育ってしまった?ものではないかと…。
「白い光が出ているみたい」とのタイトルどおり、折り返した頭の部分の裏側からは
まさしく白い光が出ているみたいではありませんか!
この辺りの光から陰影に至るグラデーション、画面下部のあたりも同様ですけれど、
こうした陰影のつけ方は、画面の醸すユーモラスさとか「いったい何?」という形とかいうものと別に、
大きな注目点だと思えるわけです。
ということで、やっぱり本物を見る楽しみ、そして抽象画を絵本のように見る楽しみ。
イマジネーションの飛翔を楽しむ瞬間を、ぜひ味わっていただきたいものです。


